追放された魔法使いは孤高特化型魔法使い(ぼっち)として秘密のダンジョンと大食いに挑む

 100人の精鋭たち。 体を鍛え、技を磨き、集団戦闘を鍛錬を行う。

 そんな強靭な男たちは、まるで老人のような姿で座り込み、息を乱していた。

「馬鹿な……これは時間操作の魔法。そんな高度が技術————大きな魔導結社が奴らの後ろにいるのか?」

「し、司令官どの……」と話しかけて来る腹心は、舌がうまく回っていない。

 見れば、歯が抜け落ちているではないか。

「進言いたします。ここは危険過ぎます。撤退して宮廷魔法使い様に治療を受けねば、我々は――――」

 全滅する。 それはわかっている。

 しかし、これはモンド王の戦い。 そう簡単には――――

「みなさんは地上に戻ってください。治療の準備はしています」

 後ろから聞こえてきた声。 そして、姿を見せた声の主に司令官たちは驚いた。

 その声は、この国で軍師の立場の男。 しかし、普段と印象がどこか違っている。

 そんな事よりも――――

「軍師どの。なぜ、この地下路を平気で……なぜ、老けておらぬのですか!?」

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 少し前————ユウトたちが地下路に逃げ込んだ直後だ。

「我が軍師よ。敵は地下に逃げ込んだようじゃ……この動きどう見る?」

 モンド王の真横。側近として、戦いを俯瞰してみる軍師は考えた。

「おそらく罠ですな。我らにとって警戒すべきは、あのドラゴン……それを下げて逃走? なら、地下で籠城戦? どちらもあり得ますが――――今は、その時ではありませんな。ならば、罠でしょ」

「ほう……もっと、語ってみせよ」

「敵はドラゴンという大きな兵力を持っています。 不本意ながら、ルオン王子の兵を跳ね除けてみせました。ならば逃走には早すぎる」

「うむ、我が軍をもってもドラゴン相手には苦戦すると見るか?」

「はい、軍の目的はドラゴンなんぞの魔物を殺すことが第一でございません。人を殺すために軍は存在しておりますから」

「随分と物騒な言いようじゃ。続けてみせよ」

「はい、もしも敵が地下に堅城を作り籠城戦をするつもりなら――――あのドラゴンは大きすぎます。地下では十分に暴れる事はできぬでしょう」

「つまり、お主の考えではこうか? 我が軍をドラゴンで迎え撃つより、地下で待ち受ける方が敵には都合のいい準備がされている……と?」

「はい、すぐにでも先陣を切る将を戻し、軍の再編成は進言いたします」

 しかし、モンド王は――――

「いらぬ」と短く言い放った。

「はい……では、いかがいたしましょうか?」

「お主が出ろ」

「ご冗談を。私が、戦場の先頭に立ち、自ら兵に指揮を送れと?」

「いや、軍師としてのお前の力はここまでじゃ」

 モンド王は魔導書を取り出した。 ぱらぱらとページを捲る。

「それは――――」と軍師は言葉と止めた。 いや、言葉だけではなく、その顔には表情というものが抜け落ちていた。

「我が魔導書大戦の歴史……手に入れた物の中で一際大きいのは、お前自身よ!」

 突然、魔導書の1ページを破り捨てると、軍師に投げつけた。

「今まで大戦で、打ち破ってきた強者たちの魂。お前の中に封印してる者を目覚めさせよ」

「――――」と無言だった軍師の目に力が灯る。 

 顔つきが変わる。 それで、中身が変わったのがわかる。

「今は軍師ではなく魔術師か。ならば――――」

「はい、私はアルカナ。今期の魔導書大戦でも、勝機を掴んて参りましょう」

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 再び、時間と場所は地下路に戻る。

 魔術師の男。 アルカナは平然と通路を歩いて進んでいる。

 この道は、かつて『強欲』が作った地下路。 時間操作の魔法が仕掛けられている。

 それを、今はユウトたちが籠城するのに、時間操作の魔法を再動させているのだ。

「現行の『強欲』が作った時間回路……と言ったところですかね」

 分析しながらも、その効果————時間操作を受けている影響はなさそうだった。

「やれやれ、困りましたね。このまま、一番奥にたどり着けそうです。この地下路の仕掛けを壊すのが目的のつもりでしたが……」

 アルカナは独り言を止めた。 彼(?)の視線の先、巨大な影が動いていた。

「あれは――――ゴーレム? この空間に適応した個体ですか……いや、人が乗っている?」

 かつて『強欲』が乗っていたゴーレム。 今は別人が乗り込み、アルカナを狙っている。

 誰が乗っているのか? その人物は――――