廃墟の教会。 「戻った」とユウトは地下から顔を出した。
メイヴとメリスの姉妹は、安堵したように駆けよってきた。
レインは無関心のようだ。 それにインファも同じようだった。
「さすが『暴食』さまですね。お見事です」とゼロスが迎えた。
彼女の姿は堕天使を思い出させ、不要に警戒心を強めてしまう。
「本当に『強欲』が討伐されたのか、確認しなくてもいいのか?」
「えぇ、地下の魔力が霧散した時点で、『強欲』の死亡は確認されたものとしています」
「そうか……それじゃ俺は帰らせて――――」
「そうはいかないな」
それはインファ……憤怒のインファだった。
「まさか、『強欲』がこうも簡単に負けると思っていなかったぜ。おかげで暇になった」
「――――」とユウトは絶句する。
彼は、インファは暇つぶしで戦うつもりできた。 それが様子見の段階でユウトが『強欲』を倒してしまったから――――
「いいじゃないか。ここには俺の『憤怒』を除いて、『暴食』『色欲』『怠惰』の3人……離れて覗き見している『傲慢』……今、決着をつけることも可能だろうよ」
緊張が走る。
レインですら、既にミカエルを召喚。弓矢を構えている臨戦状態。
だが……
「おやめください」とゼロスが間に入った。
「この場所は中立地帯……神の命による『強欲』討伐のために設けさせていただいた場所です」
「はん? つまり、ここで暴れると神様に弓を引けるってことかい? 手っ取り早くてありがたいね」
「いけません。それ以上は取り返しのつかないことになります」
ゼロスの魔力が膨れ合っていくのがわかる。 今、ここで天使のゼロスと『憤怒』のインファはぶつかり合うつもりだ。
しかし、それだけではない。 ユウトの探知魔法が異常を知らせる。
「――――武装した集団に囲まれている。その数……3000人だ」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「恐れながら我が王、この朽ちた教会に反乱軍がいるにしても、この数は必要なのでしょうか?」
モンド王に進言する男は、この国の軍師だった。
彼にとっても反乱軍の存在は寝耳に水。 しかし、モンド王直属の密偵が調べたとなると否定はできない。
「無論、必要よ。なんでも敵はドラゴンを捕え、秘密裏に運び込んでいる形跡があると」
「なんと!」と軍師は驚く。
ここは城下町である。この国で、もっとも硬固な場所。
周囲には協力な結界によって覆われている。空を飛ぶ魔物が迷い込むよう――――あるいは他国が空飛ぶ魔物を調伏して空軍なんぞ作る可能性も0ではない。
それに兵力。今、ここに集められた兵士は正規軍である。
戦争で徴兵される町民や農民ではない。 職業軍人による3000の兵。
兵力は即ち国力と同意である。
(だがしかし――――確かにドラゴンを城下町にて暴れさせることが可能なら、我が王に届きかねない)
軍師は様々な違和感を飲み込み、納得した。
(妙な事があれば後から調べればいい。ならば今は、我が精鋭を動かすのみ)
そう覚悟を決めた。しかし、モンド王の口から発せられたのは予想外の言葉であった。
「まずは……ルオン王子の兵を動かせてみせよ」
「なんと!」と軍師は驚く。 あの場所にはドラゴンがいるのではないか?
まずは先陣として、ご子息を直下の兵で攻めさせる?
それはあまりにも――――
「うむ、そなたの憂いもわかる。しかし、獅子は我が子を谷に投げ捨てて育てると言う。案外、ルオンのやつも龍殺しを成し得るかもしれぬぞ」
モンド王は豪快に笑った。 確かに少数でドラゴンを退治した冒険者の伝説は幾つもある。
しかし、それは困難を極まる偉業だからこそ伝説として語り継がれているのだ。
(まさか、言えぬわ。ご子息は伝説になれませまい……などと!)
軍師は覚悟を決めた。 伝令を走らせる。
ルオン王子のみ動かす命令を――――
そして、王子は動き出す。 自身が鍛え上げた兵————30人に満たない人数。
しかし、その30人は精鋭中の精鋭。
その素性は味方にもわからぬ者たちであり、不気味がられるほどに決死隊であった。
その30人と共にルオン王は馬を走らせた。 目指すは朽ちた教会————今、ユウトたちがいる場所だ。
陣頭指揮を取るルオン王子は――――
(教会に近づくまでは市街地戦闘。馬の速度は限界まで落として――――)
「今だ! 吶喊せよ!」と号令は出した。
しかし、兵が教会にたどり着くよりも早く、目的である教会が、建物が崩れ始めた。
「おぉ」と精鋭たちが馬を止める。
「飲まれるなよ、我が精鋭。見よ、あれが敵だ。あれこそが人類の敵である――――ドラゴンよ!」
崩れた教会から姿を現したのは、確かにドラゴンだった。
だが、ドラゴンであると同時に彼の名前は『憤怒』のインファ。
魔導書の能力であるドラゴン化を使用したインファであった。
メイヴとメリスの姉妹は、安堵したように駆けよってきた。
レインは無関心のようだ。 それにインファも同じようだった。
「さすが『暴食』さまですね。お見事です」とゼロスが迎えた。
彼女の姿は堕天使を思い出させ、不要に警戒心を強めてしまう。
「本当に『強欲』が討伐されたのか、確認しなくてもいいのか?」
「えぇ、地下の魔力が霧散した時点で、『強欲』の死亡は確認されたものとしています」
「そうか……それじゃ俺は帰らせて――――」
「そうはいかないな」
それはインファ……憤怒のインファだった。
「まさか、『強欲』がこうも簡単に負けると思っていなかったぜ。おかげで暇になった」
「――――」とユウトは絶句する。
彼は、インファは暇つぶしで戦うつもりできた。 それが様子見の段階でユウトが『強欲』を倒してしまったから――――
「いいじゃないか。ここには俺の『憤怒』を除いて、『暴食』『色欲』『怠惰』の3人……離れて覗き見している『傲慢』……今、決着をつけることも可能だろうよ」
緊張が走る。
レインですら、既にミカエルを召喚。弓矢を構えている臨戦状態。
だが……
「おやめください」とゼロスが間に入った。
「この場所は中立地帯……神の命による『強欲』討伐のために設けさせていただいた場所です」
「はん? つまり、ここで暴れると神様に弓を引けるってことかい? 手っ取り早くてありがたいね」
「いけません。それ以上は取り返しのつかないことになります」
ゼロスの魔力が膨れ合っていくのがわかる。 今、ここで天使のゼロスと『憤怒』のインファはぶつかり合うつもりだ。
しかし、それだけではない。 ユウトの探知魔法が異常を知らせる。
「――――武装した集団に囲まれている。その数……3000人だ」
・・・
・・・・・・
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「恐れながら我が王、この朽ちた教会に反乱軍がいるにしても、この数は必要なのでしょうか?」
モンド王に進言する男は、この国の軍師だった。
彼にとっても反乱軍の存在は寝耳に水。 しかし、モンド王直属の密偵が調べたとなると否定はできない。
「無論、必要よ。なんでも敵はドラゴンを捕え、秘密裏に運び込んでいる形跡があると」
「なんと!」と軍師は驚く。
ここは城下町である。この国で、もっとも硬固な場所。
周囲には協力な結界によって覆われている。空を飛ぶ魔物が迷い込むよう――――あるいは他国が空飛ぶ魔物を調伏して空軍なんぞ作る可能性も0ではない。
それに兵力。今、ここに集められた兵士は正規軍である。
戦争で徴兵される町民や農民ではない。 職業軍人による3000の兵。
兵力は即ち国力と同意である。
(だがしかし――――確かにドラゴンを城下町にて暴れさせることが可能なら、我が王に届きかねない)
軍師は様々な違和感を飲み込み、納得した。
(妙な事があれば後から調べればいい。ならば今は、我が精鋭を動かすのみ)
そう覚悟を決めた。しかし、モンド王の口から発せられたのは予想外の言葉であった。
「まずは……ルオン王子の兵を動かせてみせよ」
「なんと!」と軍師は驚く。 あの場所にはドラゴンがいるのではないか?
まずは先陣として、ご子息を直下の兵で攻めさせる?
それはあまりにも――――
「うむ、そなたの憂いもわかる。しかし、獅子は我が子を谷に投げ捨てて育てると言う。案外、ルオンのやつも龍殺しを成し得るかもしれぬぞ」
モンド王は豪快に笑った。 確かに少数でドラゴンを退治した冒険者の伝説は幾つもある。
しかし、それは困難を極まる偉業だからこそ伝説として語り継がれているのだ。
(まさか、言えぬわ。ご子息は伝説になれませまい……などと!)
軍師は覚悟を決めた。 伝令を走らせる。
ルオン王子のみ動かす命令を――――
そして、王子は動き出す。 自身が鍛え上げた兵————30人に満たない人数。
しかし、その30人は精鋭中の精鋭。
その素性は味方にもわからぬ者たちであり、不気味がられるほどに決死隊であった。
その30人と共にルオン王は馬を走らせた。 目指すは朽ちた教会————今、ユウトたちがいる場所だ。
陣頭指揮を取るルオン王子は――――
(教会に近づくまでは市街地戦闘。馬の速度は限界まで落として――――)
「今だ! 吶喊せよ!」と号令は出した。
しかし、兵が教会にたどり着くよりも早く、目的である教会が、建物が崩れ始めた。
「おぉ」と精鋭たちが馬を止める。
「飲まれるなよ、我が精鋭。見よ、あれが敵だ。あれこそが人類の敵である――――ドラゴンよ!」
崩れた教会から姿を現したのは、確かにドラゴンだった。
だが、ドラゴンであると同時に彼の名前は『憤怒』のインファ。
魔導書の能力であるドラゴン化を使用したインファであった。