堕天使は魔剣を振る。
剣の間合いを越えて斬撃を放つ。
(しかし、魔力を感じられない。理屈を考えるのも馬鹿らしい)
剣の振りから、斬撃を予測する。 ユウトは回避は容易いと気づく。
(堕天使の剣技は武のそれではない。 人間の見よう見まねに過ぎない)
そして回避と同時にカウンターの一撃————
『炎剣』
炎の魔剣が堕天使へ直撃した。
「やったか?」とユウトは声を漏らす。
しかし、堕天使は動き続けて、剣を振る腕を止めない。
「――――ッ! 魔法の効果が薄い。おそらく全身が膨大な魔力そのもの」
続けて、暴れるように剣を振り回す堕天使。 まさに目前————ユウトの目の前を魔剣が通り抜ける。
僅かに遅れた無魔力の斬撃が巻き起こり、襲い掛かってくる。
(タイミングは取り難い……だが、簡単に避ける)
再び、回避したユウトは炎の魔法を浴びせた。
やはり、ダメージは少ない――――けれども、堕天使は無傷とはいかない。
(このまま持久戦に持ち込めれば勝てる)
ユウトは体力に自信があった。 事実、重装備の防具で動き回る彼には無尽蔵のスタミナを有している。
2発、3発……ユウトの魔法が一方的に堕天使に叩き込まれていく。 そのたびに堕天使の動きは鈍くなっていった。
――――そのはずだった。
(……? 妙だな。攻撃の速度は減少している。 それは間違いないはずだが、逆に鋭さが増している?)
その違和感の正体にユウトは気づいた。
出鱈目に――――少なくとも武の心得がある者にとって、技術とは言えない剣の振り。 そのはずだった堕天使の技に――――そう技に昇華されている。
(まるで剣を覚えたばかりの太刀筋。しかし、明らかに洗礼されている?)
それはあり得ない事だった。 剣を初めて持って武器をして使用しているであろう堕天使。
それが、僅かな攻防で剣の基礎のような動きを見せ始めている。
(実戦の中で武を見出している? この短時間で?)
それこそ、あり得ないことであろう。 剣術とは、人間が戦うための技。
『様々な実戦を得て、どう効率的に相手を殺すか?』
人類が数千年という膨大な年月をかけて成熟させていった技術————もはや、剣術は兵器であると言っても良いはずだ。
(人類が数千年の年月が必要だった技術を、たった数合と言える戦いで生み出している)
それは恐怖であった。しかし、同時に納得もあった。
魔導書……7人が行う命を賭けた儀式。
それにより、膨大な魔力を注入され続けた魔導書がどうなるのか?
答えが、目前で剣を振るう堕天使なのだ。
「なるほど、もしもこれが『料理』なら、数日で人類を越えるのだな……お前は?」
それが『料理』ならいい。 しかし、それが『毒』ならば?
きっと、僅か数日で人間を全滅に追い込む事ができるのだろう。
それが『毒』なら、まだいい―――― もしも、それが『魔法』だったら?
それが、魔導書の力であり、堕天使の真の力なのだろう。
「短時間で人類を学習して滅ぼすことが可能な兵器なのだな……ならば、ここでお前を倒し切る!」
ユウトの言葉。その言葉とは裏腹に、堕天使の剣技は達人のソレに迫っていた。
だが、その剣はユウトには届かない。
『炎壁』
彼の防御魔法が斬撃を弾いた。
堕天使が持つ2つの剣は魔剣。魔法に対して、どのような効果があるのは不明だった。
「――――けど、俺の魔法を切り払うような真似をしてこなかった。お前の魔剣は魔法には干渉できなのだろ?」
その魔剣は魔法の防御壁に特殊な効果はない。 それを見破り――――『風斬』
今度は斬撃の魔法をユウトは放った。 直撃を受けた堕天使は、肩口から反対の腰に斬撃を――――剣で言えば袈裟斬りの一撃を受けた。
「このまま接近戦で決着を――――」
この時、ユウトは切り札を切るつもりだった。
直撃爆破 彼の手甲に仕掛けた魔石による爆破魔法。
使用すれば、ユウト自身にも大きなダメージを受ける自爆技。 その分、通常の魔法攻撃と比較しても破格とも言える威力が与えれる。
しかし――――
『炎壁』
その魔法は、ユウトの物ではなかった。 むしろ、彼を阻むように炎の壁が堕天使を守っている。
「――――学習したのか? 俺の魔法を?」
自ら発したはずの言葉にユウトは戦慄するしかなかった。
剣の間合いを越えて斬撃を放つ。
(しかし、魔力を感じられない。理屈を考えるのも馬鹿らしい)
剣の振りから、斬撃を予測する。 ユウトは回避は容易いと気づく。
(堕天使の剣技は武のそれではない。 人間の見よう見まねに過ぎない)
そして回避と同時にカウンターの一撃————
『炎剣』
炎の魔剣が堕天使へ直撃した。
「やったか?」とユウトは声を漏らす。
しかし、堕天使は動き続けて、剣を振る腕を止めない。
「――――ッ! 魔法の効果が薄い。おそらく全身が膨大な魔力そのもの」
続けて、暴れるように剣を振り回す堕天使。 まさに目前————ユウトの目の前を魔剣が通り抜ける。
僅かに遅れた無魔力の斬撃が巻き起こり、襲い掛かってくる。
(タイミングは取り難い……だが、簡単に避ける)
再び、回避したユウトは炎の魔法を浴びせた。
やはり、ダメージは少ない――――けれども、堕天使は無傷とはいかない。
(このまま持久戦に持ち込めれば勝てる)
ユウトは体力に自信があった。 事実、重装備の防具で動き回る彼には無尽蔵のスタミナを有している。
2発、3発……ユウトの魔法が一方的に堕天使に叩き込まれていく。 そのたびに堕天使の動きは鈍くなっていった。
――――そのはずだった。
(……? 妙だな。攻撃の速度は減少している。 それは間違いないはずだが、逆に鋭さが増している?)
その違和感の正体にユウトは気づいた。
出鱈目に――――少なくとも武の心得がある者にとって、技術とは言えない剣の振り。 そのはずだった堕天使の技に――――そう技に昇華されている。
(まるで剣を覚えたばかりの太刀筋。しかし、明らかに洗礼されている?)
それはあり得ない事だった。 剣を初めて持って武器をして使用しているであろう堕天使。
それが、僅かな攻防で剣の基礎のような動きを見せ始めている。
(実戦の中で武を見出している? この短時間で?)
それこそ、あり得ないことであろう。 剣術とは、人間が戦うための技。
『様々な実戦を得て、どう効率的に相手を殺すか?』
人類が数千年という膨大な年月をかけて成熟させていった技術————もはや、剣術は兵器であると言っても良いはずだ。
(人類が数千年の年月が必要だった技術を、たった数合と言える戦いで生み出している)
それは恐怖であった。しかし、同時に納得もあった。
魔導書……7人が行う命を賭けた儀式。
それにより、膨大な魔力を注入され続けた魔導書がどうなるのか?
答えが、目前で剣を振るう堕天使なのだ。
「なるほど、もしもこれが『料理』なら、数日で人類を越えるのだな……お前は?」
それが『料理』ならいい。 しかし、それが『毒』ならば?
きっと、僅か数日で人間を全滅に追い込む事ができるのだろう。
それが『毒』なら、まだいい―――― もしも、それが『魔法』だったら?
それが、魔導書の力であり、堕天使の真の力なのだろう。
「短時間で人類を学習して滅ぼすことが可能な兵器なのだな……ならば、ここでお前を倒し切る!」
ユウトの言葉。その言葉とは裏腹に、堕天使の剣技は達人のソレに迫っていた。
だが、その剣はユウトには届かない。
『炎壁』
彼の防御魔法が斬撃を弾いた。
堕天使が持つ2つの剣は魔剣。魔法に対して、どのような効果があるのは不明だった。
「――――けど、俺の魔法を切り払うような真似をしてこなかった。お前の魔剣は魔法には干渉できなのだろ?」
その魔剣は魔法の防御壁に特殊な効果はない。 それを見破り――――『風斬』
今度は斬撃の魔法をユウトは放った。 直撃を受けた堕天使は、肩口から反対の腰に斬撃を――――剣で言えば袈裟斬りの一撃を受けた。
「このまま接近戦で決着を――――」
この時、ユウトは切り札を切るつもりだった。
直撃爆破 彼の手甲に仕掛けた魔石による爆破魔法。
使用すれば、ユウト自身にも大きなダメージを受ける自爆技。 その分、通常の魔法攻撃と比較しても破格とも言える威力が与えれる。
しかし――――
『炎壁』
その魔法は、ユウトの物ではなかった。 むしろ、彼を阻むように炎の壁が堕天使を守っている。
「――――学習したのか? 俺の魔法を?」
自ら発したはずの言葉にユウトは戦慄するしかなかった。