「あなた、世翔じゃないでしょ」
待ち合わせ場所で世翔に会った瞬間、そう切り出す。
「え、俺世翔やけど」
「違う。あなたの本当の名前は諒真だよね」
世翔は、いや諒真は私と目を合わせようとしない。
「関西弁、私の好みを知っていた。そしてその顔。思い出すのに時間がかかったけど小さい時から全く変わってない」
「ハハ、やっぱわかっちゃうもんやな」
「何で?どうして嘘をついたの?」
「俺さ、転校してきたんよ。この学校に。そしたら七音の事見かけてな。自分の名前気にしとるみたいやったから俺んせいかなって。ほら、お前の事いじめてたやろ?変な名前やー!って。小学校ん時。そんで罪悪感つーの?申し訳なくて嘘ついてでもいい名前やぞって伝えたかった。ごめんな、嘘ついて」
「そっか」
自分で諒真でしょって言ったくせに諒真だったことにショックを受けてる。
確かに小学校でいじめられた記憶はある。
でもそれが諒真だったのか。わからない。
「ほんまごめん」
「ううん。いいよ。ショックだったけど怒ってないし。逆に励ましてくれてありがと」
嘘だったかなんて興味ない。どうでもいい。
私を想って励ましてくれたことに感謝してる。
「その、急なんだけどいい?」
「おん、ええよ」
「付き合ってくれない?」
「はっ?」
目が点になってる。
「ふふ、私諒真の事好き。諒真が世翔の時から」
「ええの?俺で」
「うん!諒真がいい」
「ありがとな。ほんまありがと」
諒真は涙を流し始めた。
「ちょっ!何で泣いてんの!もらい泣きしちゃうじゃん!」
「だって嬉しくて」
そうして私たちは抱きしめ合った。離さないように。
「七音、愛しとるぞ」
「私も。諒真」
愛しい人に呼んでもらえる名前。
それはどんなに変でもおかしくても好きになれる。

この名前でよかった。

そう初めて思った。

そう初めて思えた。