「俺さ、いじめられてたんよ。名前のせいで」
「うん、わかる」
私もある。小学生の時に同じクラスの男子に。
名前だけで馬鹿にされて自分も自分を馬鹿にする。
「それで嫌になって母親にキレたんよ。何でこんな名前にしたんやって。こんな名前なら生まれてこなきゃよかったって言ってもうた。今思えばなんて酷い事を言ったんやって反省してるけどあの時はそんなこともわからんくらいほんまに辛かった」
私も思った事があるから彼の話に共感した。
「そしたらな、母親に叩かれて。あんたの名前はちゃんと考えてあんたを愛してつけたんやって泣きながら話してくれたんや」
世翔。世界を翔ぶ。
愛してる子供に希望を持ってほしくてこの名前をつけたって説明してくれた。
確かに"せしか"って言う読み方は珍しいけど意味がいいと思った。
「俺、やっぱりこの名前嫌いや。恥ずかしい。でも母親が話してくれた名前の由来を知ってちょっとずつ気に入ってるんよ。七音もお母さんに名前の由来聞いてみたらどうや?」
「うん」
親に名前の由来を聞いても世翔みたいに自分の名前を少しでも気にいることはできないと思った。
それでも、聞いてみようと思った。