まずはイルだ、目の前の顔を見て鑑定!
よし見えた。後はこのステータスを擬装すれば良いはずだ。
それから逃げ出しても気に止めることもないステータスに……擬装!
――――――――――――――――――――
名前 ユウリ・シノノメ(イル・ミンスール)
性別 男(女)
種族 人族(魔族)
職業 ――
HP 3
MP 3(測定不能)
スキル 言語理解
備考 ――(魔王)
――――――――――――――――――――
名前に性別、イルは職業とスキルが無いから言語理解を付けて、職業は……無しで良いか。
備考も無しにしておかないと魔王が見られるのは絶対駄目だよな。
ここも変えて……うん、これで良し、スキルが言語理解だけで無いより怪しまれないだろう。
『茜ちゃん、返事がまだみたいだけどステータスの擬装しちゃうね』
『う、うん。それと、誰にも言ってないし、知られてないよ』
茜ちゃんはゴソゴソと腕輪を左手に通すと、サイズが自動で合わせられてピッタリと嵌めてしまう。
イルも同じように魔力自動回復の腕輪を嵌める。
次だ、茜ちゃんを鑑定! それに擬装!
――――――――――――――――――――
名前 アカネ・ニシ
性別 女
種族 人族(エンシェントエルフ)
職業 ――(聖女)
HP 3(100)
MP 3(9999)
スキル 言語理解(魔法の才能、弓術の才能、看破)
備考 ――(聖魔法)
――――――――――――――――――――
うお! 擬装はイルの物と合わせたけど、色々と茜ちゃん凄くない!?
って驚いている場合じゃない、説明しておかなきゃね。
『茜ちゃん、たぶんステータスを見れば擬装したものが見えるはずだから、()の中の事は言っちゃ駄目だからね。自分では見れるけれど、他人には分からないようになってるから、どんなのか確認だけしてくれる』
『は、はい、ス、ステータス……ほへ? 見た目が弱くなってます……これは良いの?』
『うん。みんなには悪いけど、俺と茜ちゃんが役立たずと思わせたいんだ。それでここから逃げ出したいと思ってる』
逃げ出すと聞いて驚いたのか、口をポカンと開けている。
『もちろん、クラスのみんなの事は、助けたいと思ってるよ。いくら虐められて学校に行けなくなったとしても、この世界じゃ元の世界に帰れない……仲間だからね』
『わ、分かりました。一度この城から抜け出して、みんなを迎え入れる準備をするのですね』
『…………いや、抜け出すところまでにしようと思う。奴隷のままなのは流石に可哀想だけど、ずっと虐められると分かっているのに一緒にはいたくないでしょ?』
まだほんの少し迷ってるんだけどね。
でも、僕の言葉にはっとした表情に変わり、コクリと頷いた茜ちゃん。
その時、全員が腕輪を嵌め終わったようだ。
それを見たからなのか、魔法使いの人が話し始める。
「これより、勇者の皆様が持つステータスやスキルを確認したいと思います。ステータスによって皆様には分かれてもらい、その別れたグループで行動してもらいます」
「ってかよ~、勝手に話を進めんなよなぁ~、そんな事をしたかねえんだけどさぁ~、先に約束してくれよな、俺が言ったことはちゃんと聞いてくれるんだろ?」
金谷は立ち上がり、王様の横で立ってる魔法使いの所まで進んだかと思ったら、肩に手を回して肩を組んでしまった。
だが、魔法使いは動揺もせず、肩にかけられた手を叩き落とす。
「ふむ、あなたは拳聖ですね、Sクラスですので――」
Sクラスと言われた金谷に、魔法使いのところによって来た一人の騎士が金色の新たな腕輪が渡された。
「なんだよこれは、Sクラス? 訳の分かんねえこと言いやがって、お前頭悪いんか?」
「Sクラスですと、伯爵と同じ身分です。平民が一年遊んで暮らせるほどの報酬が国から渡され、もちろんSクラス専用の屋敷と使用人も派遣されます。その働きによって追加も支払われますが、納得いただけましたか?」
「おっ、なんだよ職業でそのクラスってのが分けられんのか、先に言えよなジジイ」
「ご理解ありがとうございます。では、席に戻って話の続きをお聞き下さいま――」
納得したのか金谷はバンバンと魔法使いの肩を乱暴に、そして強く叩いたようで、『グアッ!』と言いながらその場で崩れ落ちてしまった。
「だがお前は生意気だ、二度と偉そうな口を叩くんじゃねえぞ。王様よ、お前もな、ペッ」
そう言って唾を吐き捨て、今度は騎士に近付き、持っていた残りの金の腕輪を乗せたトレーを引ったくると、騎士を蹴飛ばし『よえーな』と言いながら元の席に戻り、取り巻きの二人に同じ金の腕輪を渡して嵌めてしまった。
まわりからは『副騎士団長が簡単にやられるとは』『Sクラスと言えど鍛える前にあの強さとは』と小声だけどそんな声が聴こえてきた。
その後、魔法使いは肩の骨が折れたのか、気絶して動かなくなった副騎士団長と一緒に、両脇から支えられて部屋から外へ運ばれていった。
と言うより今ので文句を言わないなんて、おかしくない?
「元気が良いな。続けてクラス分けを終わらせよ」
と思った瞬間に文句じゃない言葉が出たけどあっさりだよね!
それに王様が考えている事は森辻やメイドのように、頭上に文字が浮かばないから何を考えているのか分からない。
座ったままのクラスメイトに次々と職業とそれに合ったクラスの金>銀>銅>鉄の順で待遇も違うようだ。
もちろん隣の森辻は職業『勇者』で金谷と一緒でSランクで金。
その隣の委員長は『剣聖』で同じくSランクの金だった。
そして最後は俺と茜ちゃんの番になり、もちろん無職で最低ランク……のはずだが。
「なんだこの方は! 無職だと!」
「こ、こちらの方も無職です。これではこちらの勇者様を補助して戦うのはもちろん、生産職の方より劣ります」
うんうん、少し()の中が見えたらどうしようかと思ったけど、擬装したところだけが見えているようだ。
その言葉を聞き、まわりがザワザワとしている中、隣に座ってた森辻が笑い始めた。
「くふふふふふ、東雲~それに西風もかぁ~、やっぱり二人はこのクラスには必要のない人間だったようだな」
ガタンと椅子を鳴らして立ち上がる森辻。
椅子に座る俺達を見下ろしながら、勝ち誇ったようなドヤ顔を向けてくる。
「王様! この二人は僕、勇者の仲間には必要ありません。コイツらにできる事は何一つ無いので、このまま放り出してやりましょう。いるだけで邪魔ですし」
おっ、森辻。俺は初めからそのつもりだったけれど、穏便に追放してもらえるなら助かるな。
「……ふむ。君は?」
「僕は職業が勇者の森辻です。この二人にかける金銭や労力は、優秀な職業を光玉の姿をした神から授かった残りの僕達に使ってもらえれば、王様の懸念、魔王を倒すことなと容易いことです」
「……その二人はいてもいなくても良いと」
王様がそう聞くと、クラスメイトのみんなはそろって森辻の顔を見る。
すると、委員長はもちろん、金谷も含めて全員が頷いた。
『はわわ! ユウリがきらわれてますの! お友だちではなかったのです! あっ、このパン柔らかくて美味しそうな匂いですの』
分かってはいたけど、異世界に来たんだよ? それも帰れないと言われてここにいるのに、誰一人味方は……いや、茜ちゃんは味方か。
心の中でやっぱり一緒にと、ほんの少し思ってたのに……でもこれで奴隷からは解放できるように頑張るけど、その後はみんなと別行動にする決心がついたよ。
イルは、結構注目されているのに、目の前にあったパンを小さくちぎって口に放り込んでいた。
『友里くんたら……』
う、俺じゃないけど見た目は俺なんだよな……ちょっと恥ずかしい。
「……勇者モリツジよ、ソナタの言う通りのようだな。その二人にはこの城を出て貰おう。城外へ連れて行け」
よし、予定通りの進み具合だ。
俺と茜ちゃんの横に騎士がやって来て、パンをまだ一生懸命もぐもぐしている俺とオロオロしている茜ちゃんの椅子を引くために背もたれに手を置いた。
「お立ち下さい。城外へ案内させていただきます」
有無を言わせないようなキツい言葉ではなく、丁寧な口調で俺たちの動きを促した。
『ゆゆゆ友里くん、たたた立ち上がって良いんだよね?』
焦りまくりの茜ちゃんを見て、さらに落ち着いてしまった俺は、イルにも一緒に念話を送った。
『うん。立ち上がって、この騎士について行こう』
『『うん』』
『『はへ?』』
ヤバっ! 声には出してないけど、驚いたからなのか、二人は勢いよく立ち上がり、ガタンと椅子が大きな音を立てた。
うっわ~、ただでさえ注目されてたのに……。
見られて恥ずかしかったのか、真っ赤になった茜ちゃんと、立ち去る前にもう一つパンをテーブルから取ったイルは、部屋中の注目を浴びながら部屋を出た。
よし見えた。後はこのステータスを擬装すれば良いはずだ。
それから逃げ出しても気に止めることもないステータスに……擬装!
――――――――――――――――――――
名前 ユウリ・シノノメ(イル・ミンスール)
性別 男(女)
種族 人族(魔族)
職業 ――
HP 3
MP 3(測定不能)
スキル 言語理解
備考 ――(魔王)
――――――――――――――――――――
名前に性別、イルは職業とスキルが無いから言語理解を付けて、職業は……無しで良いか。
備考も無しにしておかないと魔王が見られるのは絶対駄目だよな。
ここも変えて……うん、これで良し、スキルが言語理解だけで無いより怪しまれないだろう。
『茜ちゃん、返事がまだみたいだけどステータスの擬装しちゃうね』
『う、うん。それと、誰にも言ってないし、知られてないよ』
茜ちゃんはゴソゴソと腕輪を左手に通すと、サイズが自動で合わせられてピッタリと嵌めてしまう。
イルも同じように魔力自動回復の腕輪を嵌める。
次だ、茜ちゃんを鑑定! それに擬装!
――――――――――――――――――――
名前 アカネ・ニシ
性別 女
種族 人族(エンシェントエルフ)
職業 ――(聖女)
HP 3(100)
MP 3(9999)
スキル 言語理解(魔法の才能、弓術の才能、看破)
備考 ――(聖魔法)
――――――――――――――――――――
うお! 擬装はイルの物と合わせたけど、色々と茜ちゃん凄くない!?
って驚いている場合じゃない、説明しておかなきゃね。
『茜ちゃん、たぶんステータスを見れば擬装したものが見えるはずだから、()の中の事は言っちゃ駄目だからね。自分では見れるけれど、他人には分からないようになってるから、どんなのか確認だけしてくれる』
『は、はい、ス、ステータス……ほへ? 見た目が弱くなってます……これは良いの?』
『うん。みんなには悪いけど、俺と茜ちゃんが役立たずと思わせたいんだ。それでここから逃げ出したいと思ってる』
逃げ出すと聞いて驚いたのか、口をポカンと開けている。
『もちろん、クラスのみんなの事は、助けたいと思ってるよ。いくら虐められて学校に行けなくなったとしても、この世界じゃ元の世界に帰れない……仲間だからね』
『わ、分かりました。一度この城から抜け出して、みんなを迎え入れる準備をするのですね』
『…………いや、抜け出すところまでにしようと思う。奴隷のままなのは流石に可哀想だけど、ずっと虐められると分かっているのに一緒にはいたくないでしょ?』
まだほんの少し迷ってるんだけどね。
でも、僕の言葉にはっとした表情に変わり、コクリと頷いた茜ちゃん。
その時、全員が腕輪を嵌め終わったようだ。
それを見たからなのか、魔法使いの人が話し始める。
「これより、勇者の皆様が持つステータスやスキルを確認したいと思います。ステータスによって皆様には分かれてもらい、その別れたグループで行動してもらいます」
「ってかよ~、勝手に話を進めんなよなぁ~、そんな事をしたかねえんだけどさぁ~、先に約束してくれよな、俺が言ったことはちゃんと聞いてくれるんだろ?」
金谷は立ち上がり、王様の横で立ってる魔法使いの所まで進んだかと思ったら、肩に手を回して肩を組んでしまった。
だが、魔法使いは動揺もせず、肩にかけられた手を叩き落とす。
「ふむ、あなたは拳聖ですね、Sクラスですので――」
Sクラスと言われた金谷に、魔法使いのところによって来た一人の騎士が金色の新たな腕輪が渡された。
「なんだよこれは、Sクラス? 訳の分かんねえこと言いやがって、お前頭悪いんか?」
「Sクラスですと、伯爵と同じ身分です。平民が一年遊んで暮らせるほどの報酬が国から渡され、もちろんSクラス専用の屋敷と使用人も派遣されます。その働きによって追加も支払われますが、納得いただけましたか?」
「おっ、なんだよ職業でそのクラスってのが分けられんのか、先に言えよなジジイ」
「ご理解ありがとうございます。では、席に戻って話の続きをお聞き下さいま――」
納得したのか金谷はバンバンと魔法使いの肩を乱暴に、そして強く叩いたようで、『グアッ!』と言いながらその場で崩れ落ちてしまった。
「だがお前は生意気だ、二度と偉そうな口を叩くんじゃねえぞ。王様よ、お前もな、ペッ」
そう言って唾を吐き捨て、今度は騎士に近付き、持っていた残りの金の腕輪を乗せたトレーを引ったくると、騎士を蹴飛ばし『よえーな』と言いながら元の席に戻り、取り巻きの二人に同じ金の腕輪を渡して嵌めてしまった。
まわりからは『副騎士団長が簡単にやられるとは』『Sクラスと言えど鍛える前にあの強さとは』と小声だけどそんな声が聴こえてきた。
その後、魔法使いは肩の骨が折れたのか、気絶して動かなくなった副騎士団長と一緒に、両脇から支えられて部屋から外へ運ばれていった。
と言うより今ので文句を言わないなんて、おかしくない?
「元気が良いな。続けてクラス分けを終わらせよ」
と思った瞬間に文句じゃない言葉が出たけどあっさりだよね!
それに王様が考えている事は森辻やメイドのように、頭上に文字が浮かばないから何を考えているのか分からない。
座ったままのクラスメイトに次々と職業とそれに合ったクラスの金>銀>銅>鉄の順で待遇も違うようだ。
もちろん隣の森辻は職業『勇者』で金谷と一緒でSランクで金。
その隣の委員長は『剣聖』で同じくSランクの金だった。
そして最後は俺と茜ちゃんの番になり、もちろん無職で最低ランク……のはずだが。
「なんだこの方は! 無職だと!」
「こ、こちらの方も無職です。これではこちらの勇者様を補助して戦うのはもちろん、生産職の方より劣ります」
うんうん、少し()の中が見えたらどうしようかと思ったけど、擬装したところだけが見えているようだ。
その言葉を聞き、まわりがザワザワとしている中、隣に座ってた森辻が笑い始めた。
「くふふふふふ、東雲~それに西風もかぁ~、やっぱり二人はこのクラスには必要のない人間だったようだな」
ガタンと椅子を鳴らして立ち上がる森辻。
椅子に座る俺達を見下ろしながら、勝ち誇ったようなドヤ顔を向けてくる。
「王様! この二人は僕、勇者の仲間には必要ありません。コイツらにできる事は何一つ無いので、このまま放り出してやりましょう。いるだけで邪魔ですし」
おっ、森辻。俺は初めからそのつもりだったけれど、穏便に追放してもらえるなら助かるな。
「……ふむ。君は?」
「僕は職業が勇者の森辻です。この二人にかける金銭や労力は、優秀な職業を光玉の姿をした神から授かった残りの僕達に使ってもらえれば、王様の懸念、魔王を倒すことなと容易いことです」
「……その二人はいてもいなくても良いと」
王様がそう聞くと、クラスメイトのみんなはそろって森辻の顔を見る。
すると、委員長はもちろん、金谷も含めて全員が頷いた。
『はわわ! ユウリがきらわれてますの! お友だちではなかったのです! あっ、このパン柔らかくて美味しそうな匂いですの』
分かってはいたけど、異世界に来たんだよ? それも帰れないと言われてここにいるのに、誰一人味方は……いや、茜ちゃんは味方か。
心の中でやっぱり一緒にと、ほんの少し思ってたのに……でもこれで奴隷からは解放できるように頑張るけど、その後はみんなと別行動にする決心がついたよ。
イルは、結構注目されているのに、目の前にあったパンを小さくちぎって口に放り込んでいた。
『友里くんたら……』
う、俺じゃないけど見た目は俺なんだよな……ちょっと恥ずかしい。
「……勇者モリツジよ、ソナタの言う通りのようだな。その二人にはこの城を出て貰おう。城外へ連れて行け」
よし、予定通りの進み具合だ。
俺と茜ちゃんの横に騎士がやって来て、パンをまだ一生懸命もぐもぐしている俺とオロオロしている茜ちゃんの椅子を引くために背もたれに手を置いた。
「お立ち下さい。城外へ案内させていただきます」
有無を言わせないようなキツい言葉ではなく、丁寧な口調で俺たちの動きを促した。
『ゆゆゆ友里くん、たたた立ち上がって良いんだよね?』
焦りまくりの茜ちゃんを見て、さらに落ち着いてしまった俺は、イルにも一緒に念話を送った。
『うん。立ち上がって、この騎士について行こう』
『『うん』』
『『はへ?』』
ヤバっ! 声には出してないけど、驚いたからなのか、二人は勢いよく立ち上がり、ガタンと椅子が大きな音を立てた。
うっわ~、ただでさえ注目されてたのに……。
見られて恥ずかしかったのか、真っ赤になった茜ちゃんと、立ち去る前にもう一つパンをテーブルから取ったイルは、部屋中の注目を浴びながら部屋を出た。