「いやぁぁぁー! ユウリィィー!」
『収納!』
『あははははは♪ お見事だよ東雲友里君! 炎と鍛冶の神、ヘーパイストスの神器を全て収納しちゃう事で守護者を倒しちゃうなんて、面白いものを見せてもらったよ♪』
リビングアーマーが消えて、足場がなくなった。
ポテっと床に着地したところにイルが涙と鼻水でくちゃくちゃな顔をして走りよって来る。
――と思ったら、俺を掬いあげ、胸に抱いた後、さらに持ち上げどろどろの可愛い顔の前に。
「ばべ? じんでないでずの? いぎでまずの?」
『うん、生きてるよイル。バレないように移すのちょっと難しくて、間違えば本気で死ぬかと思ったけどね』
精神耐性様々だよまったく。
イルは俺がどうなったのか、どうやって生きていたのか分かってないって言うから説明してやることにした。
『最初に触手を切られた時、リビングアーマーの足に切られた触手が張り付いたんだ』
真剣な顔の前に俺を持ち上げて聞いている。
『その時はヤバいとしか思えなかったんだけど、その切り飛ばされた俺の一部はナゼか動かせたんだよ。それなら少しずつ体を移していけば、リビングアーマーにくっついてる方が本体になるんじゃないかと思ってね』
「な、なるほどですの!」
『少しずつ気付かれないように本当に少しずつ体を移して、鎧の中に潜り込ませて、中でまとまることにしたんだ。それで少しずつ大きくなりながら胸のあたりにまとまってね』
「無くなっちゃったと思いましたのに、守護者の中にいたのです!」
『それから収納するには触れてないと駄目なのと、俺の……意識で良いのかな、本体が触れてないと駄目なんだと分かったんだ。既に胴体には小さい体がくっついていたのに収納できなかったからね』
イルは俺の話を真剣……興味津々で聞いている。
目は涙に濡れて、鼻からは鼻水が出たままだけど、悲しんだり、疑問を浮かべる表情ではなくなって、もっと知りたいって顔をしているから話を続けた。
『まあそれで、引っ付いた小さい俺を動かして兜と鎧の下半身、腕にも触手を伸ばして、最後はガントレットって分かるかな? 金属で造られたグローブなんだけど、少しあった隙間から剣にも触れて準備が終わったんだよ』
でもその頃には外で頑張ってる俺は二センチほどしか無くなっていたんだけどね。
イルはふんふんと鼻息荒く、アクション映画のラストシーンでも観ているのかと思えるほど興奮している……。
『そして外の体が最後の一撃を受けた時、意識をリビングアーマーに入り込んだ中の体に移したんだ』
『ほんと、あり得ない事を考えたものよね~、精神耐性と、そう言えば苦痛耐性もか、まあスライムには痛覚が元々ないんだけどね。でもそれがなきゃ体をわざと切らせるなんて普通考え付かないわよ、そうだ、ヘーパイストスには今度教えてあげよっと』
ロリっ子よ、その方って神様でしょ? お願いだから変な言い方しないで、一応謝っておいてね。
ロリっ子が変なことを言うから意識がそっちに行ったが、イルは俺を両手で掲げ上げている。
「凄いのですよ! 四天王の不死王ヴァンより死なないのです!」
『おお! 四天王! 不死王ヴァン! 響き的に吸血鬼かな? ってか、ロリっ子まだいる? この鎧セット持ってれば外に出れるかな』
『出れるよ~、その鎧を装備したらほとんどの結界や封印でも無効に出きるだろうからね~。よ~しヘーパイストスのところに遊びに行っちゃおっと、またね~東雲友里君』
は? 装備って無理に決まってるじゃん! 俺スライムだよ! 兜とかだけでいいの? って聞いてる!?
肝心な事を聞きたい時に! ……ったくまた消えちゃったよ。
「ずずっ、ね、ねえユウリ、本当にもう大丈夫なのです? それにロリっ子?」
『ああ、大丈夫だよ、ロリっ子は神様かな? 俺をこの世界にってか、そうだ残りの体も回収するから下ろしてくれるかな?』
涙は止まっているけれど、まだ心配そうな顔で覗き込んでくるイルだけど、鼻水が出たままなので触手を伸ばし、涙と鼻水を拭き取るつもりで吸収しておい。
剣を吸収できるんだし、可愛い子が俺のために流した涙と鼻水だしね。
「くふふ♪ ユウリありがとです、あの上に下ろせばいいですの?」
『ああ、それで良いかな』
イルがとった行動は、一センチあるかどうかの俺の体へ、しゃがみこんで俺を持ったままその上に置いてくれた。
体に触れた瞬間に、回収は完了だ。後もう一個は、飛ばされてそっちのリビングアーマーが出てきた部屋に入っちゃってるね……あれ?
確かあそこにも膜みたいなものがあったよね?
イルに待ってと言う前に何か透明で、本当に薄い膜をイルに抱えられたまま、くぐり抜けた感覚があった。
『――ヤバい! イル、外に出れるか試してみて! もしかしたらまた閉じ込められたかも!』
「ですの? それは困りますの、私はお外に出たいのです、えい! あっ……」
イルは俺が言ってすぐに振り向き、向こうの部屋に通じ、何もないように見えるところを、手を伸ばしたんだけど、見えない壁に触れたように手が宙で止まった。
「何かここにありますの……」
『イルごめん、もっと早く言うべきだった、リビングアーマー倒して浮かれていた俺のせいだ。』
透明な壁に手をついたまま、うつ向いてしまったイルだけど、壁から手を離し、両手で俺を抱えてくる。
「……でも、今度は一人じゃないから寂しくないですの、ユウリがいるのです」
うん、そうだな、俺も一人になっていたからその寂しさは分かる。
イルはどれくらい前かは分からないけど、あの柩に一人で封印されてたんだもんな。
俺の場合は一年足らずだし、分かると言ってもイルの寂しさとは比べられない。
腕の中の俺を見つめてくるイルに、そっと職種を伸ばしてほっぺを撫でてあげた。
『これからはイルと一緒にいるから、よろしくね』
「よろしくですの! あっ、ユウリのあそこにいましたの」
ちょこちょこと小走りで、何もない壁も床も天井さえも石造りの小さな部屋の中央でぷるぷるしている小さい体を見付けてくれたようだ。
さっきと同じように、そっとその上に下ろしてくれて体が元の大きさに戻った。
「これでユウリが元に戻りましたの♪」
『ありがとうイル――そうだ! あの鎧だよ!』
ふと、ここにあのリビングアーマーがいたのかと考えた時、神様が造った鎧ならイルでも装備できないか? ロリっ子がくれた装備でも、サイズ調整ができたんだ、いただいた聖なるセットをイルが装備できたなら……、やってみる価値はあるよね。
『ねえイル、そうだねこのガントレットを装備してくれない?』
俺を床に下ろしたまましゃがみこんでいるイルの前にガントレットの右を出す。
「これ着ますの?」
『そうだよ、本当は俺が着れれば良いんだけど、これだからね~』
ガントレットの手が入るところに触手を伸ばして入れてみて、ブカブカなのを見せようとしただけなのに――。
へ? ガントレットは縮み、俺の触手のサイズにピッタリになってる……おい、これってもしかして!
「小さくなりましたの!」
ちょ、ちょっと待ってね!
「待ちますの!」
俺はそのまま透明な壁に近付き、もちろんイルも真後ろについてくる。
そしてガントレットの形のまま小さくなった手で壁に触れ――ない。
抜けられるぞ! ――いや待て! これじゃ俺しか出られないってパターンじゃないのか!?
……俺はガントレットを引いて、触手だけで透明の壁を触ってみる――薄い膜を通り抜ける感触はあるけど装備していない触手も透明の壁を抜けることができた。
『よっし! 抜けられるぞ! イルおいで、そして俺を持ってくれれば壁を抜けられるはずだ!』
装備は別に全部しなくても良かったんだ、これならイルに引っ付いて通り抜ければ良いだけだ。
「はいなのです、よいしょ、行きますですよ!」
イルお願いね、ほら、手を伸ばしてごらん。
そ~っと慎重な顔で手を伸ばし、さっきはあった壁を、なんの抵抗もないように通り抜け、そのまま祭壇だけあった部屋に戻れた。
「出ましたです! やりましたの!」
『よっしゃー! よし、このままとりあえず上まで行こう!』
「は~いです♪」
ちょこちょこと足を動かし、階段をうんしょうんしょと登って、階段の突き当たりで、天井というか蓋になっていた祭壇に触手を伸ばして収納。
「上の部屋に到着できましたの!」
色々とあったけど、とりあえず俺が召喚された部屋に、イルと共に戻ってこれた。
『収納!』
『あははははは♪ お見事だよ東雲友里君! 炎と鍛冶の神、ヘーパイストスの神器を全て収納しちゃう事で守護者を倒しちゃうなんて、面白いものを見せてもらったよ♪』
リビングアーマーが消えて、足場がなくなった。
ポテっと床に着地したところにイルが涙と鼻水でくちゃくちゃな顔をして走りよって来る。
――と思ったら、俺を掬いあげ、胸に抱いた後、さらに持ち上げどろどろの可愛い顔の前に。
「ばべ? じんでないでずの? いぎでまずの?」
『うん、生きてるよイル。バレないように移すのちょっと難しくて、間違えば本気で死ぬかと思ったけどね』
精神耐性様々だよまったく。
イルは俺がどうなったのか、どうやって生きていたのか分かってないって言うから説明してやることにした。
『最初に触手を切られた時、リビングアーマーの足に切られた触手が張り付いたんだ』
真剣な顔の前に俺を持ち上げて聞いている。
『その時はヤバいとしか思えなかったんだけど、その切り飛ばされた俺の一部はナゼか動かせたんだよ。それなら少しずつ体を移していけば、リビングアーマーにくっついてる方が本体になるんじゃないかと思ってね』
「な、なるほどですの!」
『少しずつ気付かれないように本当に少しずつ体を移して、鎧の中に潜り込ませて、中でまとまることにしたんだ。それで少しずつ大きくなりながら胸のあたりにまとまってね』
「無くなっちゃったと思いましたのに、守護者の中にいたのです!」
『それから収納するには触れてないと駄目なのと、俺の……意識で良いのかな、本体が触れてないと駄目なんだと分かったんだ。既に胴体には小さい体がくっついていたのに収納できなかったからね』
イルは俺の話を真剣……興味津々で聞いている。
目は涙に濡れて、鼻からは鼻水が出たままだけど、悲しんだり、疑問を浮かべる表情ではなくなって、もっと知りたいって顔をしているから話を続けた。
『まあそれで、引っ付いた小さい俺を動かして兜と鎧の下半身、腕にも触手を伸ばして、最後はガントレットって分かるかな? 金属で造られたグローブなんだけど、少しあった隙間から剣にも触れて準備が終わったんだよ』
でもその頃には外で頑張ってる俺は二センチほどしか無くなっていたんだけどね。
イルはふんふんと鼻息荒く、アクション映画のラストシーンでも観ているのかと思えるほど興奮している……。
『そして外の体が最後の一撃を受けた時、意識をリビングアーマーに入り込んだ中の体に移したんだ』
『ほんと、あり得ない事を考えたものよね~、精神耐性と、そう言えば苦痛耐性もか、まあスライムには痛覚が元々ないんだけどね。でもそれがなきゃ体をわざと切らせるなんて普通考え付かないわよ、そうだ、ヘーパイストスには今度教えてあげよっと』
ロリっ子よ、その方って神様でしょ? お願いだから変な言い方しないで、一応謝っておいてね。
ロリっ子が変なことを言うから意識がそっちに行ったが、イルは俺を両手で掲げ上げている。
「凄いのですよ! 四天王の不死王ヴァンより死なないのです!」
『おお! 四天王! 不死王ヴァン! 響き的に吸血鬼かな? ってか、ロリっ子まだいる? この鎧セット持ってれば外に出れるかな』
『出れるよ~、その鎧を装備したらほとんどの結界や封印でも無効に出きるだろうからね~。よ~しヘーパイストスのところに遊びに行っちゃおっと、またね~東雲友里君』
は? 装備って無理に決まってるじゃん! 俺スライムだよ! 兜とかだけでいいの? って聞いてる!?
肝心な事を聞きたい時に! ……ったくまた消えちゃったよ。
「ずずっ、ね、ねえユウリ、本当にもう大丈夫なのです? それにロリっ子?」
『ああ、大丈夫だよ、ロリっ子は神様かな? 俺をこの世界にってか、そうだ残りの体も回収するから下ろしてくれるかな?』
涙は止まっているけれど、まだ心配そうな顔で覗き込んでくるイルだけど、鼻水が出たままなので触手を伸ばし、涙と鼻水を拭き取るつもりで吸収しておい。
剣を吸収できるんだし、可愛い子が俺のために流した涙と鼻水だしね。
「くふふ♪ ユウリありがとです、あの上に下ろせばいいですの?」
『ああ、それで良いかな』
イルがとった行動は、一センチあるかどうかの俺の体へ、しゃがみこんで俺を持ったままその上に置いてくれた。
体に触れた瞬間に、回収は完了だ。後もう一個は、飛ばされてそっちのリビングアーマーが出てきた部屋に入っちゃってるね……あれ?
確かあそこにも膜みたいなものがあったよね?
イルに待ってと言う前に何か透明で、本当に薄い膜をイルに抱えられたまま、くぐり抜けた感覚があった。
『――ヤバい! イル、外に出れるか試してみて! もしかしたらまた閉じ込められたかも!』
「ですの? それは困りますの、私はお外に出たいのです、えい! あっ……」
イルは俺が言ってすぐに振り向き、向こうの部屋に通じ、何もないように見えるところを、手を伸ばしたんだけど、見えない壁に触れたように手が宙で止まった。
「何かここにありますの……」
『イルごめん、もっと早く言うべきだった、リビングアーマー倒して浮かれていた俺のせいだ。』
透明な壁に手をついたまま、うつ向いてしまったイルだけど、壁から手を離し、両手で俺を抱えてくる。
「……でも、今度は一人じゃないから寂しくないですの、ユウリがいるのです」
うん、そうだな、俺も一人になっていたからその寂しさは分かる。
イルはどれくらい前かは分からないけど、あの柩に一人で封印されてたんだもんな。
俺の場合は一年足らずだし、分かると言ってもイルの寂しさとは比べられない。
腕の中の俺を見つめてくるイルに、そっと職種を伸ばしてほっぺを撫でてあげた。
『これからはイルと一緒にいるから、よろしくね』
「よろしくですの! あっ、ユウリのあそこにいましたの」
ちょこちょこと小走りで、何もない壁も床も天井さえも石造りの小さな部屋の中央でぷるぷるしている小さい体を見付けてくれたようだ。
さっきと同じように、そっとその上に下ろしてくれて体が元の大きさに戻った。
「これでユウリが元に戻りましたの♪」
『ありがとうイル――そうだ! あの鎧だよ!』
ふと、ここにあのリビングアーマーがいたのかと考えた時、神様が造った鎧ならイルでも装備できないか? ロリっ子がくれた装備でも、サイズ調整ができたんだ、いただいた聖なるセットをイルが装備できたなら……、やってみる価値はあるよね。
『ねえイル、そうだねこのガントレットを装備してくれない?』
俺を床に下ろしたまましゃがみこんでいるイルの前にガントレットの右を出す。
「これ着ますの?」
『そうだよ、本当は俺が着れれば良いんだけど、これだからね~』
ガントレットの手が入るところに触手を伸ばして入れてみて、ブカブカなのを見せようとしただけなのに――。
へ? ガントレットは縮み、俺の触手のサイズにピッタリになってる……おい、これってもしかして!
「小さくなりましたの!」
ちょ、ちょっと待ってね!
「待ちますの!」
俺はそのまま透明な壁に近付き、もちろんイルも真後ろについてくる。
そしてガントレットの形のまま小さくなった手で壁に触れ――ない。
抜けられるぞ! ――いや待て! これじゃ俺しか出られないってパターンじゃないのか!?
……俺はガントレットを引いて、触手だけで透明の壁を触ってみる――薄い膜を通り抜ける感触はあるけど装備していない触手も透明の壁を抜けることができた。
『よっし! 抜けられるぞ! イルおいで、そして俺を持ってくれれば壁を抜けられるはずだ!』
装備は別に全部しなくても良かったんだ、これならイルに引っ付いて通り抜ければ良いだけだ。
「はいなのです、よいしょ、行きますですよ!」
イルお願いね、ほら、手を伸ばしてごらん。
そ~っと慎重な顔で手を伸ばし、さっきはあった壁を、なんの抵抗もないように通り抜け、そのまま祭壇だけあった部屋に戻れた。
「出ましたです! やりましたの!」
『よっしゃー! よし、このままとりあえず上まで行こう!』
「は~いです♪」
ちょこちょこと足を動かし、階段をうんしょうんしょと登って、階段の突き当たりで、天井というか蓋になっていた祭壇に触手を伸ばして収納。
「上の部屋に到着できましたの!」
色々とあったけど、とりあえず俺が召喚された部屋に、イルと共に戻ってこれた。