目の前にある、ロリ魔王の燃えるような紅い目に、俺のぷよんぷよんボディーが映り込んでいた。
視線をずらすと、少し開いた薄桃色の薄い唇の奥に、二本の牙がちょこんと顔を見せている。
視線を引いて見ると、上から覗いた時より頬も赤身をおびて、生きているのか死んでいるのか分からなかった顔色が、精気を取り戻したように見えた。
「えっと、スライムさん?」
ゴロンと寝返りをうち、俺の方に体を向け、手を伸ばしてきた。
ふよんと優しくつつかれて、あまりにも可愛い顔に見惚れて意識が飛んでいた事に気が付いた。
「あっ、スライムさんは喋れなかったのです? でも、どこからか入ってきたのです? ここは複雑な封印がされていたはずですの」
つつかれた後、優しく体の下に手が添えられ手のひらに乗せられていた。
『あ、あのね、色々とやってたら君が入ってたこの柩が開いたんだよ』
「そうなのです? あっ喋れましたの♪ 嬉しいですの♪」
『うん、念話スキルかな? 声は出ていないけど、君には俺の声が聞こえるようだね』
楽しそうに、もちゅもにゅと体をマッサージされていたけど、手を止めてじぃ~っと見つめてきた。
『どしたの?』
「ん~、それなら私はこの中からお外に出ても良いですの?」
『そうだね、でも、この部屋と上の部屋だけしか無いんだけどね、扉はあるけど出られないんだ』
なぜかさっきから子供に言い聞かせるような感じで喋っちゃってますけど。
「扉があるなら出られるですの、私はお外に出たいですの」
じっと見てこられても、鍵が開けられて、神器がないと無理なんだよな。
でも、いつからここに閉じ込められているのか分からないけど、出たいのは俺も同じだし、ここは協力して外に出れるように頑張ってみるか。
『よし、えっと、俺は東雲 友里だよ、友里って呼んでくれるかな?』
「ユウリですの? 分かりましたの」
幼女は俺を手のひらに乗せたまま、起き上がって立ち上がると、柩をよっこいしょとまたいで外に出てしまった。
「私はイル・ミンスール、イルって呼んで欲しいのです。駄目です?」
『うん、イル、よろしくね』
「わーいですの♪」
ぴょんぴょんと、ほんの少ししか跳び上がれてないようだけど、顔は満面の笑みで、体全体で嬉しさを表しているようだ。
そうだ、持っていける物は全部持っていかなきゃな。
イルが入っていた祭壇改め柩を収納してしまう。
「あっ、私の寝床が消えちゃいましたの」
『大丈夫だよ、僕が収納して持っていくから安心してね。それじゃああの階段から上に行こうか』
「は~いですの、ユウリはスゴいのです、頑張って階段上っちゃいますの」
ペタペタと裸足で歩く音が聞こえて、ロリっ子からもらった装備に確か靴なんかも色々とあったよな。
それもサイズ調整ができる装備が。
『イル、ちょっと待って、裸足だと怪我しちゃうかも知れないから靴とか、そうだ、服も出しちゃうよ』
何か良いのあったかな、サイズ変更ができて――は? なんだあれ……。
「あっですの! 封印が解けても駄目だぞって言われてましたの! やっつけられちゃいますの!」
へ? 誰に何を言われたか知らないけど、どゆこと!?
階段があった対面の壁に縦線が入り、音もなく横にスライドするように開いて、その奥には青く光る目が二つ浮いていた。
『なんだよ! 何が出てくるんだ!』
コツコツとゆっくりとだが青い目がこちらに向かって近付いてくる。
「しゅ、しゅ、守護者ですの! とぉ~っても強いのです! あわわわ――まだ力が出ないので逃げられないのです!」
手のひらに俺を乗せて右往左往のイル。
イルが魔王で出てくるのが守護者か……、魔王を封印して外に出させないようにしているのが守護者、と言うことなら、イルを守るためには倒さなきゃってこと?
目以外見えなかった守護者とやらが、壁が開いたところから部屋に入ってくる時、何か透明な膜を通りすぎたように見えた。
ん? もしかして上の扉をくぐるための神器をこの青いラインが入った真っ白な鎧を装備して、青白く輝くこれぞ聖剣って剣を持った奴が持っているって事か?
それなら……いただいちゃうしかないよね、イルを外に出すって決めたのだから。
『イル、階段のところまで下がって! 俺がなんとか神器を手に入れてみるから!』
「ほへ? 危ないですの! 守護者には勝てませんの!」
大丈夫! やってみるから俺を下ろして階段まで下がってて!
あわあわしているだけで、俺を離そうとしないから、無理矢理飛び降りることにした。
そして飛び降りながら鑑定だ!
――――――――――――――――――
封印の守護者 聖なる鎧
封印の守護者 聖なる盾
封印の守護者 聖なる兜
封印の守護者 聖なる剣
――――――――――――――――――
なんだよそれ! 聖なる装備品が集まって勝手に動いているのか! ってことはリビングアーマーかよ!
『きゃは♪ きゃははは♪ きゃははははは♪ リ、リビングアーマー! 遥か昔にヘーパイストスが打ち、勇者が装備した聖なる神器がリビングアーマーって、も、もうだめぇぇー! お腹痛いぃぃぃ!』
ロリっ子! 笑っていても良いが邪魔するなよ! こいつが持つ神器がここから出るのに必要なんだから!
ロリっ子が笑い声と共に動きが止まったリビングアーマーに素早く近付く。
中身がなくて、倒せなくても神器だけは触れば収納できるはずだ。
まだ止まっている、手を、いや触手を伸ばして振りかぶり、鞭を前に振るうようにリビングアーマーに当てる。
咄嗟に動き、盾で塞がれたが狙いどおりだ! 収納!
伸ばした触手はペチンと盾でガードされたが、弾き飛ばされそうにったがそのまま引っ付き、収納してやった。
『うそん! 神が造りし聖なる盾を収納しちゃったよ!』
「はわわわ! 盾が無くなりましたの!」
よし次は剣だ! できれば鎧からいただきたいけど、絶対剣で邪魔されるはず。
それに――どわっ!
ブオンと足が目の前に迫ってきた――が床にペタンと潰れるように避け、元に戻る勢いも利用してリビングアーマーの背後にダッシュで回り込み、また鞭のように触手を振るう。
サク。
――ぐあっ! 収の――体が切られた! 間に合わなかった、背後に回ったはずが一瞬の内に向きを変え、伸ばした触手を切り飛ばされたぞ!
「ユウリ!」
『へえ、やるね。守護者の盾を奪っただけじゃなく……これは僕の予想より当たりかも』
チッ! ロリっ子それ以上言うなよ!
連続で繰り出される剣を掻い潜り、前に後ろにあらゆる方向に避けながら、もう十本以上触手を切られている。
最初に切られた時は、一気に死んだかと思った。
でもHPが3しか無いのに触手を切り飛ばされても減っていなかったんだ。
それに――。
「が、頑張るですよユウリ! 負けるなです!」
『任せて、外に出るって言ったからには一緒に出るから!』
(東雲友里君、召喚前の場でも一人だけ動けていたし、下位の精神耐性では押さえきれない精神の強さを持ってるなってと思ったけど……僕を救ったこの子ならもしかすると)
階段の一段目に立ち、俺とリビングアーマーが戦うところを見守るイル。
「あーまた切られたのです! も、もう逃げてです! 切られて小さくなってるですよ! 無くなっちゃうです!」
そう、十センチはあった俺の体は既に半分以下の大きさになっている。
だが諦めない、小さいから狙いが雑なリビングアーマーでは決定打さえ……来た……どんどん……意識が……薄く…………。
「いやぁぁぁー!」
この体で最後に見たものは階段で叫ぶイブと、迫り来る剣だった。
視線をずらすと、少し開いた薄桃色の薄い唇の奥に、二本の牙がちょこんと顔を見せている。
視線を引いて見ると、上から覗いた時より頬も赤身をおびて、生きているのか死んでいるのか分からなかった顔色が、精気を取り戻したように見えた。
「えっと、スライムさん?」
ゴロンと寝返りをうち、俺の方に体を向け、手を伸ばしてきた。
ふよんと優しくつつかれて、あまりにも可愛い顔に見惚れて意識が飛んでいた事に気が付いた。
「あっ、スライムさんは喋れなかったのです? でも、どこからか入ってきたのです? ここは複雑な封印がされていたはずですの」
つつかれた後、優しく体の下に手が添えられ手のひらに乗せられていた。
『あ、あのね、色々とやってたら君が入ってたこの柩が開いたんだよ』
「そうなのです? あっ喋れましたの♪ 嬉しいですの♪」
『うん、念話スキルかな? 声は出ていないけど、君には俺の声が聞こえるようだね』
楽しそうに、もちゅもにゅと体をマッサージされていたけど、手を止めてじぃ~っと見つめてきた。
『どしたの?』
「ん~、それなら私はこの中からお外に出ても良いですの?」
『そうだね、でも、この部屋と上の部屋だけしか無いんだけどね、扉はあるけど出られないんだ』
なぜかさっきから子供に言い聞かせるような感じで喋っちゃってますけど。
「扉があるなら出られるですの、私はお外に出たいですの」
じっと見てこられても、鍵が開けられて、神器がないと無理なんだよな。
でも、いつからここに閉じ込められているのか分からないけど、出たいのは俺も同じだし、ここは協力して外に出れるように頑張ってみるか。
『よし、えっと、俺は東雲 友里だよ、友里って呼んでくれるかな?』
「ユウリですの? 分かりましたの」
幼女は俺を手のひらに乗せたまま、起き上がって立ち上がると、柩をよっこいしょとまたいで外に出てしまった。
「私はイル・ミンスール、イルって呼んで欲しいのです。駄目です?」
『うん、イル、よろしくね』
「わーいですの♪」
ぴょんぴょんと、ほんの少ししか跳び上がれてないようだけど、顔は満面の笑みで、体全体で嬉しさを表しているようだ。
そうだ、持っていける物は全部持っていかなきゃな。
イルが入っていた祭壇改め柩を収納してしまう。
「あっ、私の寝床が消えちゃいましたの」
『大丈夫だよ、僕が収納して持っていくから安心してね。それじゃああの階段から上に行こうか』
「は~いですの、ユウリはスゴいのです、頑張って階段上っちゃいますの」
ペタペタと裸足で歩く音が聞こえて、ロリっ子からもらった装備に確か靴なんかも色々とあったよな。
それもサイズ調整ができる装備が。
『イル、ちょっと待って、裸足だと怪我しちゃうかも知れないから靴とか、そうだ、服も出しちゃうよ』
何か良いのあったかな、サイズ変更ができて――は? なんだあれ……。
「あっですの! 封印が解けても駄目だぞって言われてましたの! やっつけられちゃいますの!」
へ? 誰に何を言われたか知らないけど、どゆこと!?
階段があった対面の壁に縦線が入り、音もなく横にスライドするように開いて、その奥には青く光る目が二つ浮いていた。
『なんだよ! 何が出てくるんだ!』
コツコツとゆっくりとだが青い目がこちらに向かって近付いてくる。
「しゅ、しゅ、守護者ですの! とぉ~っても強いのです! あわわわ――まだ力が出ないので逃げられないのです!」
手のひらに俺を乗せて右往左往のイル。
イルが魔王で出てくるのが守護者か……、魔王を封印して外に出させないようにしているのが守護者、と言うことなら、イルを守るためには倒さなきゃってこと?
目以外見えなかった守護者とやらが、壁が開いたところから部屋に入ってくる時、何か透明な膜を通りすぎたように見えた。
ん? もしかして上の扉をくぐるための神器をこの青いラインが入った真っ白な鎧を装備して、青白く輝くこれぞ聖剣って剣を持った奴が持っているって事か?
それなら……いただいちゃうしかないよね、イルを外に出すって決めたのだから。
『イル、階段のところまで下がって! 俺がなんとか神器を手に入れてみるから!』
「ほへ? 危ないですの! 守護者には勝てませんの!」
大丈夫! やってみるから俺を下ろして階段まで下がってて!
あわあわしているだけで、俺を離そうとしないから、無理矢理飛び降りることにした。
そして飛び降りながら鑑定だ!
――――――――――――――――――
封印の守護者 聖なる鎧
封印の守護者 聖なる盾
封印の守護者 聖なる兜
封印の守護者 聖なる剣
――――――――――――――――――
なんだよそれ! 聖なる装備品が集まって勝手に動いているのか! ってことはリビングアーマーかよ!
『きゃは♪ きゃははは♪ きゃははははは♪ リ、リビングアーマー! 遥か昔にヘーパイストスが打ち、勇者が装備した聖なる神器がリビングアーマーって、も、もうだめぇぇー! お腹痛いぃぃぃ!』
ロリっ子! 笑っていても良いが邪魔するなよ! こいつが持つ神器がここから出るのに必要なんだから!
ロリっ子が笑い声と共に動きが止まったリビングアーマーに素早く近付く。
中身がなくて、倒せなくても神器だけは触れば収納できるはずだ。
まだ止まっている、手を、いや触手を伸ばして振りかぶり、鞭を前に振るうようにリビングアーマーに当てる。
咄嗟に動き、盾で塞がれたが狙いどおりだ! 収納!
伸ばした触手はペチンと盾でガードされたが、弾き飛ばされそうにったがそのまま引っ付き、収納してやった。
『うそん! 神が造りし聖なる盾を収納しちゃったよ!』
「はわわわ! 盾が無くなりましたの!」
よし次は剣だ! できれば鎧からいただきたいけど、絶対剣で邪魔されるはず。
それに――どわっ!
ブオンと足が目の前に迫ってきた――が床にペタンと潰れるように避け、元に戻る勢いも利用してリビングアーマーの背後にダッシュで回り込み、また鞭のように触手を振るう。
サク。
――ぐあっ! 収の――体が切られた! 間に合わなかった、背後に回ったはずが一瞬の内に向きを変え、伸ばした触手を切り飛ばされたぞ!
「ユウリ!」
『へえ、やるね。守護者の盾を奪っただけじゃなく……これは僕の予想より当たりかも』
チッ! ロリっ子それ以上言うなよ!
連続で繰り出される剣を掻い潜り、前に後ろにあらゆる方向に避けながら、もう十本以上触手を切られている。
最初に切られた時は、一気に死んだかと思った。
でもHPが3しか無いのに触手を切り飛ばされても減っていなかったんだ。
それに――。
「が、頑張るですよユウリ! 負けるなです!」
『任せて、外に出るって言ったからには一緒に出るから!』
(東雲友里君、召喚前の場でも一人だけ動けていたし、下位の精神耐性では押さえきれない精神の強さを持ってるなってと思ったけど……僕を救ったこの子ならもしかすると)
階段の一段目に立ち、俺とリビングアーマーが戦うところを見守るイル。
「あーまた切られたのです! も、もう逃げてです! 切られて小さくなってるですよ! 無くなっちゃうです!」
そう、十センチはあった俺の体は既に半分以下の大きさになっている。
だが諦めない、小さいから狙いが雑なリビングアーマーでは決定打さえ……来た……どんどん……意識が……薄く…………。
「いやぁぁぁー!」
この体で最後に見たものは階段で叫ぶイブと、迫り来る剣だった。