「ギルドマスター、俺達はDランクまでで今回は良いです。それは受け付けで言えば良いのですか?」
金谷の言い方に呆れてしまったけど、怒りを通り越して冷静になっていたから、普段通りの喋り方ができた。
「ああ、受け付けでギルドカードを出せば、すぐにランクアップの処理をしてもらえる」
「分かりました」
簡潔に答えた俺から視線を金谷達に移すギルドマスター。
「カネタニ、私の弟子と言うなら、このユウリの凄さは分かるようにならないと……死ぬぞ」
「なっ――っ」
ギルドマスターの言葉に息を飲み顔を歪ませ、俺をいや、俺の顔をした茜ちゃんを睨む。
『ゆ、友里くん! 目が、金谷君の目が邪悪ですよ! でもあれって……』
『うわぁ~ですの、鼻から毛が出てますの! ふんすふんすとしてますから揺れてますの!』
……あはは。本当だ。
取り巻きの二人も、少し自信を取り戻していたのか、強気な表情でゴブリン討伐前のオドオドしていた表情ではなくなっていた。
『二人とも、これ以上聞いていても無駄だろうし、ランクアップだけして宿に戻ろうよ』
茜ちゃんの言う通りだな。このまま話を聞いていても――っ!
「おい! なにをする!」
ギルドマスターが叫んだ時、金谷はテーブルに飛び乗り、そのまま拳を茜ちゃん顔面に突き出してきた――。
――が、茜ちゃんは口に手をあて、顔を隠すように笑った。その動きはイルの方を見たため、ちょうど金谷の拳をギリギリで躱す格好になったから無事だけど!。
「っ!」
茜ちゃんの頭の上にいた俺は、通りすぎていく拳に向かってライトニードルを一発と、金谷の足元を狙い、ダークバインドを唱え発動させる。
ライトニードルは小指側に突き刺さり、親指側に突き抜け壁に当たる前に消え、テーブルから伸びた真っ黒な触手は足から体、腕をからめ捕り、宙に浮くように捕まえた。
「グアッ! 痛っ! こ、これは! は、離しやがれ!」
『え? な、なに? なにがって友里くんが鼻毛じゃなくて金谷君から守ってくれたの!?』
『うにょうにょですの、鼻毛がいきなり攻撃してきましたの』
「ねえギルドマスター、あなたの弟子は何を考えているのですか?」
思ったより低い声が出たのには驚いたけど、茜ちゃんとイルの金谷を鼻毛呼ばわりしたことで、怒りが少し落ち着いた。
「すまない、とっさの事で動けなかった。それに初めて見る魔法だが……今はそれどころではないな。少しそのままで頼む」
ギルドマスターは立ち上がり、机の引き出しから腕輪を出してきた。
「これは犯罪者を捕まえる際使うものだ。カネタニ、お前を拳聖だということで少しひいき目で見ていたが、もうかばいきれない」
「待て待て待て待て! そ、それは奴隷の腕輪だろ! そんなもん嵌めるんじゃねえ!」
ダークバインドで縛られ浮いた金谷の横に立ち、突き出した拳を見て怪我をしていることに気づいたが、そのまま腕輪を嵌めてしまった。
「捕縛と同時に攻撃もしていたか。もう解放しても大丈夫だ。この腕輪を嵌めている限り、命令をしなければ人を傷付けない様にできているからな」
「師匠! なんて事をするんですか! 俺はコイツに怪我を負わされたんですよ! あだっ!」
奴隷の腕輪にはそんな制約もあったのか、じゃあ拘束を解いても良いかと解除してあげる。
金谷はギルドマスターになにか言ってるけど、まあ、宙に浮いているところで拘束を解いたのでテーブルの上に落下した。
『あっ、金谷君の怪我は治しておく?』
『そうだな、もう殴りかかっては来ないだろうし』
落下した時にぶつけたのか、膝と、撃ち抜いた手をかばうようにして、体を丸めている金谷に茜ちゃんは手を伸ばしヒールを唱えた。
ほんのりと金谷の手と足が輝きすぐにその光は消えた。
「い、痛みが、怪我も無くなった……」
テーブルの上でライトニードルでつけた怪我があった場所と、膝をさすりながらそう呟いている。
「回復魔法です? じゃあ、これで終わりましたの! ほいっと、ユウリ、帰りましょうですの!」
イルは元気よくソファーから飛び降り、茜ちゃんの手を取り引っ張り立たせた。
「そうだなイル。ギルドマスター、帰っても良いですよね?」
「すべて無詠唱か、攻撃魔法にあの捕らえたのは補助魔法。それに回復魔法までとは……詮索はやめよう。口外もしないと約束する。受け付けにはよって行ってくれるか?」
「はい。では受け付けしてから帰ります」
首だけを向け、何間言わず見送るギルドマスターと、唖然として俺達を見る取り巻き達。
治療した手を見て下を向いたまま、俺達を見ようともしない金谷を残して俺達は部屋を後にした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
Dランクになった翌日から、旅に必要な道具を買い集め、軽くなったお財布を少し回復させて数日後、俺達は王都を出発した。
まだ、ゴブリンが現れた原因の分かっていない森の横を通り、次の街に向かって歩いていると、ゴブリンの群れと戦う見たことあるような奴らが見えた。
「またゴブリンがいるのです、倒していきますの?」
「……友里くん、あれ、クラスメイトだよね? 制服に革の胸当てとか着けてるけど」
「そのようだね、放っておいても良さそうだし、絡まれるのも嫌だから――おいおい、オークも出てきたぞ」
見ていると、金谷達はいなさそうだけど、クラスメイトがやっているのは金谷達と同じようにゴブリンを取り囲み、痛め付けてから倒している。
そんなことをしているからやはり仲間を呼ばれたようで、森から追加のゴブリンとオークが出てきた。
金谷の言い方に呆れてしまったけど、怒りを通り越して冷静になっていたから、普段通りの喋り方ができた。
「ああ、受け付けでギルドカードを出せば、すぐにランクアップの処理をしてもらえる」
「分かりました」
簡潔に答えた俺から視線を金谷達に移すギルドマスター。
「カネタニ、私の弟子と言うなら、このユウリの凄さは分かるようにならないと……死ぬぞ」
「なっ――っ」
ギルドマスターの言葉に息を飲み顔を歪ませ、俺をいや、俺の顔をした茜ちゃんを睨む。
『ゆ、友里くん! 目が、金谷君の目が邪悪ですよ! でもあれって……』
『うわぁ~ですの、鼻から毛が出てますの! ふんすふんすとしてますから揺れてますの!』
……あはは。本当だ。
取り巻きの二人も、少し自信を取り戻していたのか、強気な表情でゴブリン討伐前のオドオドしていた表情ではなくなっていた。
『二人とも、これ以上聞いていても無駄だろうし、ランクアップだけして宿に戻ろうよ』
茜ちゃんの言う通りだな。このまま話を聞いていても――っ!
「おい! なにをする!」
ギルドマスターが叫んだ時、金谷はテーブルに飛び乗り、そのまま拳を茜ちゃん顔面に突き出してきた――。
――が、茜ちゃんは口に手をあて、顔を隠すように笑った。その動きはイルの方を見たため、ちょうど金谷の拳をギリギリで躱す格好になったから無事だけど!。
「っ!」
茜ちゃんの頭の上にいた俺は、通りすぎていく拳に向かってライトニードルを一発と、金谷の足元を狙い、ダークバインドを唱え発動させる。
ライトニードルは小指側に突き刺さり、親指側に突き抜け壁に当たる前に消え、テーブルから伸びた真っ黒な触手は足から体、腕をからめ捕り、宙に浮くように捕まえた。
「グアッ! 痛っ! こ、これは! は、離しやがれ!」
『え? な、なに? なにがって友里くんが鼻毛じゃなくて金谷君から守ってくれたの!?』
『うにょうにょですの、鼻毛がいきなり攻撃してきましたの』
「ねえギルドマスター、あなたの弟子は何を考えているのですか?」
思ったより低い声が出たのには驚いたけど、茜ちゃんとイルの金谷を鼻毛呼ばわりしたことで、怒りが少し落ち着いた。
「すまない、とっさの事で動けなかった。それに初めて見る魔法だが……今はそれどころではないな。少しそのままで頼む」
ギルドマスターは立ち上がり、机の引き出しから腕輪を出してきた。
「これは犯罪者を捕まえる際使うものだ。カネタニ、お前を拳聖だということで少しひいき目で見ていたが、もうかばいきれない」
「待て待て待て待て! そ、それは奴隷の腕輪だろ! そんなもん嵌めるんじゃねえ!」
ダークバインドで縛られ浮いた金谷の横に立ち、突き出した拳を見て怪我をしていることに気づいたが、そのまま腕輪を嵌めてしまった。
「捕縛と同時に攻撃もしていたか。もう解放しても大丈夫だ。この腕輪を嵌めている限り、命令をしなければ人を傷付けない様にできているからな」
「師匠! なんて事をするんですか! 俺はコイツに怪我を負わされたんですよ! あだっ!」
奴隷の腕輪にはそんな制約もあったのか、じゃあ拘束を解いても良いかと解除してあげる。
金谷はギルドマスターになにか言ってるけど、まあ、宙に浮いているところで拘束を解いたのでテーブルの上に落下した。
『あっ、金谷君の怪我は治しておく?』
『そうだな、もう殴りかかっては来ないだろうし』
落下した時にぶつけたのか、膝と、撃ち抜いた手をかばうようにして、体を丸めている金谷に茜ちゃんは手を伸ばしヒールを唱えた。
ほんのりと金谷の手と足が輝きすぐにその光は消えた。
「い、痛みが、怪我も無くなった……」
テーブルの上でライトニードルでつけた怪我があった場所と、膝をさすりながらそう呟いている。
「回復魔法です? じゃあ、これで終わりましたの! ほいっと、ユウリ、帰りましょうですの!」
イルは元気よくソファーから飛び降り、茜ちゃんの手を取り引っ張り立たせた。
「そうだなイル。ギルドマスター、帰っても良いですよね?」
「すべて無詠唱か、攻撃魔法にあの捕らえたのは補助魔法。それに回復魔法までとは……詮索はやめよう。口外もしないと約束する。受け付けにはよって行ってくれるか?」
「はい。では受け付けしてから帰ります」
首だけを向け、何間言わず見送るギルドマスターと、唖然として俺達を見る取り巻き達。
治療した手を見て下を向いたまま、俺達を見ようともしない金谷を残して俺達は部屋を後にした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
Dランクになった翌日から、旅に必要な道具を買い集め、軽くなったお財布を少し回復させて数日後、俺達は王都を出発した。
まだ、ゴブリンが現れた原因の分かっていない森の横を通り、次の街に向かって歩いていると、ゴブリンの群れと戦う見たことあるような奴らが見えた。
「またゴブリンがいるのです、倒していきますの?」
「……友里くん、あれ、クラスメイトだよね? 制服に革の胸当てとか着けてるけど」
「そのようだね、放っておいても良さそうだし、絡まれるのも嫌だから――おいおい、オークも出てきたぞ」
見ていると、金谷達はいなさそうだけど、クラスメイトがやっているのは金谷達と同じようにゴブリンを取り囲み、痛め付けてから倒している。
そんなことをしているからやはり仲間を呼ばれたようで、森から追加のゴブリンとオークが出てきた。