傷だらけのゴブリンを床に出した時、金谷達がまた前のめりになってソファーから立ち上がり声を荒げてきた。
「あっ、そのゴブリンだ! 師匠! 俺達が後少しで倒せるところまで追い詰めたのにコイツが横から魔法で俺達に攻撃して獲物を奪いやがったんです」
「そうです師匠! 戦いの練習をしながらここまで痛め付けたのに! ほらこの腕の切り傷は俺が付けたものです」
「これで師匠もコイツらが俺達の獲物を奪ったと分かって――ひい! な、なんだそれは!」
「これはオークです。続けますよ」
ゴブリンが身長一メートル、その三倍はありそうなオークを一匹だけ出しただけで、金谷達は黙ってしまい、ソファーにボスッと座ってしまった。
顔を青くして静かになった金谷達を見た後、テーブルへ魔石を出していく。
コトコトンと次々にテーブルにへ積みあがっていくゴブリンの魔石は、重さで崩れてテーブルから少しこぼれ落ちたところで七十八個を出し終わった。
「これで全部、ゴブリンの魔石が七十八個ですね。……ギルドマスターはもう気づいているかと思いますが、この二匹をその三人が取り囲み、痛め付けていました。そして呼ばれて集まったゴブリンの魔石とオークです」
テーブルから落ちた数個の魔石をイルがソファーからおりて、拾い上げてはテーブルの上に戻している。
「これほどの数のゴブリンが……」
黙ってしまった金谷達より早く、正気に戻ったギルドマスターがつぶやいた。
「ふう、落ちた魔石は全部拾いましたの」
「ありがとうイル。偉いぞ、ほら、座ろうね」
『おりこうさんですよ~、イルちゃん』
「ふむ、カネタニ、お前達はこの二匹で戦う練習をしていたと言うことで間違いないな」
ギルドマスターは、傷だらけのゴブリンを指差し、金谷達に問う。
その目はこの部屋に入ってきた時のような鋭く睨み付けるような目だが、金谷達はオークとゴブリンの魔石に目線が行って、全く気が付いていない。
「はい師匠。この二匹は俺達が練習で相手していたのもので、ソイツに横取りされたんですが……あの大群をコイツらがマジで倒したのかよ、それに収納のスキルまで持ってるのか」
ギルドマスターの問いに金谷はその答えが自分達の罪の証明になっていることに気づきもせず答えた。
「あっ、か、金谷君! それまずいかも――」
おっ、取り巻きの二人は気が付いたようで、ガバッと顔を上げて金谷のことを見た。
「お前達のやったことは戦う練習じゃない、ゴブリンを倒さず、いたずらに仲間を呼び寄せる行為と同じだぞ」
ギルマスは顔に手をやり『はぁ』と息を吐いた。
その後に続き、逃げたことも言っておくか。
「ですよね、それに横取りでもないですよ。そちらの三人は、林から出てきたゴブリンとオークを見て、その傷だらけのゴブリンを倒すことも、協力して戦うこともしないで逃げ出したのですから」
「そうですの、ピューって逃げてましたの」
イルが横で足をバタバタさせ、手を体の横で振りながら、金谷達の逃げる真似をしているようだ。
茜ちゃんが俺の代わりに頭を撫でてくれている。
よし、後で俺も撫でることに決めた。可愛すぎるし良いよね。
あっ、一応これも言っておくか。
「まあ、置いていかれたゴブリンを倒すために撃ったウォーターランスが、その三人の近くを通ったことには違いないですが」
「……分かった。カネタニ、お前達は事の重大さが分かっているか? 一つ間違えば取り返しの付かないことになっていたところだ」
「ソ、ソイツがやっつけたんだ、俺達は悪くねえだろ」
ちょっとはマズイ事と気付いたようだけど、まだ自分は悪くないと言い張る金谷。
取り巻きの二人はもう諦めたのか、うつむき黙っている。
「たまたま八十匹ものゴブリンやオークを倒してしまえる者がそこにいたから良かっただけで、その者がいなければ、少なくない犠牲者が出ていてはずだ」
「そ、そんな事は、そ、そうだ、拳聖の俺より強い、同じ拳聖の師匠ならこの程度のゴブリンなんか――」
「無理だ!」
金谷の言葉を途中で遮るギルドマスターは、大きめの声で無理だと言った後、話を続ける。
「いくら私が拳聖で、Aランクの冒険者をしていた現役の時でも、無傷でこの数は無理だ。死を覚悟して挑んだとしても、半数がやっとだろうな」
「「は?」」
「八十匹のゴブリンにオークまで加わったとなれば、冒険者ギルドから緊急依頼として、この王都にいるCランク以上の冒険者を集める必要があっただろう。本当にすまない。そしてありがとう」
そう言って俺達に深く頭を下げた。
「く、くそ! そんなの信じられねえ! 俺達は召喚された勇者だぞ! こんなのやってられっか! お前ら行くぞ!」
「「う、うん」」
金谷はソファーから立ち上がり、部屋を出ようとしているのか扉に向かって歩き出す。
それを追って取り巻きの二人も慌てて立ち上がり後を追う。
「待てカネタニ! ここで出ていけば無期限の冒険者資格の剥奪、罰金刑だ!」
「やってられっか!」
バンと扉を叩き壊して、金谷は部屋を出ていってしまった。
「あっ、そのゴブリンだ! 師匠! 俺達が後少しで倒せるところまで追い詰めたのにコイツが横から魔法で俺達に攻撃して獲物を奪いやがったんです」
「そうです師匠! 戦いの練習をしながらここまで痛め付けたのに! ほらこの腕の切り傷は俺が付けたものです」
「これで師匠もコイツらが俺達の獲物を奪ったと分かって――ひい! な、なんだそれは!」
「これはオークです。続けますよ」
ゴブリンが身長一メートル、その三倍はありそうなオークを一匹だけ出しただけで、金谷達は黙ってしまい、ソファーにボスッと座ってしまった。
顔を青くして静かになった金谷達を見た後、テーブルへ魔石を出していく。
コトコトンと次々にテーブルにへ積みあがっていくゴブリンの魔石は、重さで崩れてテーブルから少しこぼれ落ちたところで七十八個を出し終わった。
「これで全部、ゴブリンの魔石が七十八個ですね。……ギルドマスターはもう気づいているかと思いますが、この二匹をその三人が取り囲み、痛め付けていました。そして呼ばれて集まったゴブリンの魔石とオークです」
テーブルから落ちた数個の魔石をイルがソファーからおりて、拾い上げてはテーブルの上に戻している。
「これほどの数のゴブリンが……」
黙ってしまった金谷達より早く、正気に戻ったギルドマスターがつぶやいた。
「ふう、落ちた魔石は全部拾いましたの」
「ありがとうイル。偉いぞ、ほら、座ろうね」
『おりこうさんですよ~、イルちゃん』
「ふむ、カネタニ、お前達はこの二匹で戦う練習をしていたと言うことで間違いないな」
ギルドマスターは、傷だらけのゴブリンを指差し、金谷達に問う。
その目はこの部屋に入ってきた時のような鋭く睨み付けるような目だが、金谷達はオークとゴブリンの魔石に目線が行って、全く気が付いていない。
「はい師匠。この二匹は俺達が練習で相手していたのもので、ソイツに横取りされたんですが……あの大群をコイツらがマジで倒したのかよ、それに収納のスキルまで持ってるのか」
ギルドマスターの問いに金谷はその答えが自分達の罪の証明になっていることに気づきもせず答えた。
「あっ、か、金谷君! それまずいかも――」
おっ、取り巻きの二人は気が付いたようで、ガバッと顔を上げて金谷のことを見た。
「お前達のやったことは戦う練習じゃない、ゴブリンを倒さず、いたずらに仲間を呼び寄せる行為と同じだぞ」
ギルマスは顔に手をやり『はぁ』と息を吐いた。
その後に続き、逃げたことも言っておくか。
「ですよね、それに横取りでもないですよ。そちらの三人は、林から出てきたゴブリンとオークを見て、その傷だらけのゴブリンを倒すことも、協力して戦うこともしないで逃げ出したのですから」
「そうですの、ピューって逃げてましたの」
イルが横で足をバタバタさせ、手を体の横で振りながら、金谷達の逃げる真似をしているようだ。
茜ちゃんが俺の代わりに頭を撫でてくれている。
よし、後で俺も撫でることに決めた。可愛すぎるし良いよね。
あっ、一応これも言っておくか。
「まあ、置いていかれたゴブリンを倒すために撃ったウォーターランスが、その三人の近くを通ったことには違いないですが」
「……分かった。カネタニ、お前達は事の重大さが分かっているか? 一つ間違えば取り返しの付かないことになっていたところだ」
「ソ、ソイツがやっつけたんだ、俺達は悪くねえだろ」
ちょっとはマズイ事と気付いたようだけど、まだ自分は悪くないと言い張る金谷。
取り巻きの二人はもう諦めたのか、うつむき黙っている。
「たまたま八十匹ものゴブリンやオークを倒してしまえる者がそこにいたから良かっただけで、その者がいなければ、少なくない犠牲者が出ていてはずだ」
「そ、そんな事は、そ、そうだ、拳聖の俺より強い、同じ拳聖の師匠ならこの程度のゴブリンなんか――」
「無理だ!」
金谷の言葉を途中で遮るギルドマスターは、大きめの声で無理だと言った後、話を続ける。
「いくら私が拳聖で、Aランクの冒険者をしていた現役の時でも、無傷でこの数は無理だ。死を覚悟して挑んだとしても、半数がやっとだろうな」
「「は?」」
「八十匹のゴブリンにオークまで加わったとなれば、冒険者ギルドから緊急依頼として、この王都にいるCランク以上の冒険者を集める必要があっただろう。本当にすまない。そしてありがとう」
そう言って俺達に深く頭を下げた。
「く、くそ! そんなの信じられねえ! 俺達は召喚された勇者だぞ! こんなのやってられっか! お前ら行くぞ!」
「「う、うん」」
金谷はソファーから立ち上がり、部屋を出ようとしているのか扉に向かって歩き出す。
それを追って取り巻きの二人も慌てて立ち上がり後を追う。
「待てカネタニ! ここで出ていけば無期限の冒険者資格の剥奪、罰金刑だ!」
「やってられっか!」
バンと扉を叩き壊して、金谷は部屋を出ていってしまった。