金谷の声が聞こえたから、慌ててテーブルの下から出て、王様達がいるホールに戻ると、金谷達の足元に真っ二つに割れた金色の腕輪だったものが落ちていた。
「あははははは! やっと邪魔なもんがとれたぜ! さっさと言うことを聞いてりゃ良かったのによ! ウラッ! てめえらまたこんな下らねえ事をしやがったらこの城ごとぶっ飛ばしてやるからな!」
「やった! 流石です金谷君、早くみんなのところに行こうよ」
「おう、いや、ちょっと待て。おい、誰か金を持ってこいや! 街で肉でも買ってバーベキューでもしようぜ」
金谷は足元に倒れていた騎士の剣を拾い、腰についていた鞘も外して剣を収めると、取り巻きの一人に投げ渡す。
それから壁際でガタガタ震えている魔法使いっぽいお爺さんから持っていた杖を引ったくると、もう一人の取り巻きに投げ渡した。
いやいや、好き勝手だな……。
その後、倒れている貴族っぽい人達からも、色々と奪っては取り巻きに渡し、腕輪についていた収納がなくなったからか、騎士のマントを外してそこに指輪や腕輪、ネックレスなどの貴金属を包み込んで、お金を持ってきた騎士を殴り飛ばして、ホールを出ていった。
……滅茶苦茶だな……絶対に関わらないようにしなきゃ。
金谷達が出ていった後、俺も長居はしなくてもいいかと、このまま出ていこうと思ったんだけど、床をチョロチョロと進んで見つかるのはまずいと気付き、近くの壁を登って天井を行くことにする。
「おい! クソ勇者達を城から出してはならん! あらゆる手を使ってもよい、もう一度奴隷として捕らえるのだ!」
裸になってる本物の王様は、シバかれなかったのか元気いっぱいで、ボロボロになっている騎士達に命令をしている。
……無理だろ。
と、思うけど魔法がある世界だし、なにか手があるのかもしれない。
「無理なら多少殺してもかまわん! そうだ、生産職の者を捕まえ人質にしてでも連れ戻すのだ!」
なにか無茶な事を言ってるけど、生産職なら捕まえることも可能だよな。
はぁ、どうするかな。
天井まで上った俺は、ちょうどホムンクルスの王様の上にいる。その横に本物の王様。
とりあえず、時間稼ぎができそうなスキルは……。
『――ん! ――里くん!』
え? 茜ちゃんの念話?
『茜ちゃん! どうかしたの! またゴブリンでも――』
『ゴブリ――だ――いっぱ――いるの!』
クソ、途切れとぎれでよく分からないけど、ゴブリンが出たみたいだ。
ここの事もやっておきたいけど優先順位はこっちじゃない!
俺は王座の真上で意識を本体に飛ばす。
意識が薄れ、眼下であわただしく動き出した騎士達を見ていたが、視界が暗転した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「イルちゃん、早く友里くんの冒険者登録に行きましょう」
「はいですの。アカネじゃなくて、ユウリ、行くのです!」
イルちゃんは私の手を取り路地から大通りに引っ張っていきます。
ちょこちょこと歩くイルちゃんに合わせてゆっくり歩いて冒険者ギルドに入ったんだけど、朝だからすごく混んでる。
先に薬草採取の依頼書を取りに行き、受け付けに向かったんだけど、しばらく時間がかかりそうね。
ちょっとテンプレを期待しちゃってるけど、よく考えたら今はユウリ君がいないのよね……怖い方が絡むテンプレは遠慮しましょう。
左手に依頼書を持って、右手は私の人差し指と中指の二本を掴んでいるイルちゃんは、もう十日ほど依頼の受け付けを経験しているから、大人しく、色んな所に目を向けている。
「アカ……ユウリ、あのおじさんまたお酒飲んでますの。朝から飲んじゃ冒険できないのです」
イルちゃんが依頼書を持った手で食事処を指差すと、初日に並ぶ場所を教えてくれたおじさんが、仲間の方と言った通りお酒を飲んでました。
その事に気付いたのか、私の横で手を振るイルちゃんと私に向かって軽く手を上げてくれました。
私も会釈をしたのですが、おじさんは『ん?』って顔をして、席から立ち上がり、こちらに向かってきました。
「おじさんこっち来ますの? アカ、ユウリ、大丈夫なのです?」
「え、あっ、そ、そうでした……んんっ、だ、大丈夫だイル。上手くできるはず」
だ、大丈夫。友里くんの事はいっぱい見てきたし、喋ってきたもん。
声を少し低く造り、立ち姿も確か正々堂々と立つ!
少し手に汗を握ってるけど頑張るもん!
「ようガキ、今日は……兄ちゃんと一緒のようだな、いつもの姉ちゃんは具合でも悪いんか? それならこのポーションでも飲ませてやれ、二日酔いも一発で治るぞ」
そう言ってイルちゃんにポーションを渡そうとしたんだけど、手が塞がってるよね~。
よ、よし、この危機的状況を格好良く乗りきるのよアカネ!
「妹のイルやアカネの知り合いのようだね、でも、アカネは少し用事で俺が代わりなんだ」
「おう、それなら良かったぜ、ガキの兄ちゃんなら心配ねえな。……そうだな今日も薬草採取だろ? ちと森が騒がしい気配があったからな、気を付けて行きやがれ、じゃあな」
「おじさんありがとですの! 気を付けますの!」
「おう」
それだけ言うと、私の空いている手を素早く取ると、その手にポーションを握らせ、さっさと仲間の待つ食事処へ戻っていった。
戻っていったおじさんを『また子供達の世話か、好きだなお前』『その喋り方直せば町中の子供から人気者になれるぜ』と囃し立てられている声を聞きながら、もう一度会釈をして友里くんの冒険者登録に戻りました。
「あははははは! やっと邪魔なもんがとれたぜ! さっさと言うことを聞いてりゃ良かったのによ! ウラッ! てめえらまたこんな下らねえ事をしやがったらこの城ごとぶっ飛ばしてやるからな!」
「やった! 流石です金谷君、早くみんなのところに行こうよ」
「おう、いや、ちょっと待て。おい、誰か金を持ってこいや! 街で肉でも買ってバーベキューでもしようぜ」
金谷は足元に倒れていた騎士の剣を拾い、腰についていた鞘も外して剣を収めると、取り巻きの一人に投げ渡す。
それから壁際でガタガタ震えている魔法使いっぽいお爺さんから持っていた杖を引ったくると、もう一人の取り巻きに投げ渡した。
いやいや、好き勝手だな……。
その後、倒れている貴族っぽい人達からも、色々と奪っては取り巻きに渡し、腕輪についていた収納がなくなったからか、騎士のマントを外してそこに指輪や腕輪、ネックレスなどの貴金属を包み込んで、お金を持ってきた騎士を殴り飛ばして、ホールを出ていった。
……滅茶苦茶だな……絶対に関わらないようにしなきゃ。
金谷達が出ていった後、俺も長居はしなくてもいいかと、このまま出ていこうと思ったんだけど、床をチョロチョロと進んで見つかるのはまずいと気付き、近くの壁を登って天井を行くことにする。
「おい! クソ勇者達を城から出してはならん! あらゆる手を使ってもよい、もう一度奴隷として捕らえるのだ!」
裸になってる本物の王様は、シバかれなかったのか元気いっぱいで、ボロボロになっている騎士達に命令をしている。
……無理だろ。
と、思うけど魔法がある世界だし、なにか手があるのかもしれない。
「無理なら多少殺してもかまわん! そうだ、生産職の者を捕まえ人質にしてでも連れ戻すのだ!」
なにか無茶な事を言ってるけど、生産職なら捕まえることも可能だよな。
はぁ、どうするかな。
天井まで上った俺は、ちょうどホムンクルスの王様の上にいる。その横に本物の王様。
とりあえず、時間稼ぎができそうなスキルは……。
『――ん! ――里くん!』
え? 茜ちゃんの念話?
『茜ちゃん! どうかしたの! またゴブリンでも――』
『ゴブリ――だ――いっぱ――いるの!』
クソ、途切れとぎれでよく分からないけど、ゴブリンが出たみたいだ。
ここの事もやっておきたいけど優先順位はこっちじゃない!
俺は王座の真上で意識を本体に飛ばす。
意識が薄れ、眼下であわただしく動き出した騎士達を見ていたが、視界が暗転した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「イルちゃん、早く友里くんの冒険者登録に行きましょう」
「はいですの。アカネじゃなくて、ユウリ、行くのです!」
イルちゃんは私の手を取り路地から大通りに引っ張っていきます。
ちょこちょこと歩くイルちゃんに合わせてゆっくり歩いて冒険者ギルドに入ったんだけど、朝だからすごく混んでる。
先に薬草採取の依頼書を取りに行き、受け付けに向かったんだけど、しばらく時間がかかりそうね。
ちょっとテンプレを期待しちゃってるけど、よく考えたら今はユウリ君がいないのよね……怖い方が絡むテンプレは遠慮しましょう。
左手に依頼書を持って、右手は私の人差し指と中指の二本を掴んでいるイルちゃんは、もう十日ほど依頼の受け付けを経験しているから、大人しく、色んな所に目を向けている。
「アカ……ユウリ、あのおじさんまたお酒飲んでますの。朝から飲んじゃ冒険できないのです」
イルちゃんが依頼書を持った手で食事処を指差すと、初日に並ぶ場所を教えてくれたおじさんが、仲間の方と言った通りお酒を飲んでました。
その事に気付いたのか、私の横で手を振るイルちゃんと私に向かって軽く手を上げてくれました。
私も会釈をしたのですが、おじさんは『ん?』って顔をして、席から立ち上がり、こちらに向かってきました。
「おじさんこっち来ますの? アカ、ユウリ、大丈夫なのです?」
「え、あっ、そ、そうでした……んんっ、だ、大丈夫だイル。上手くできるはず」
だ、大丈夫。友里くんの事はいっぱい見てきたし、喋ってきたもん。
声を少し低く造り、立ち姿も確か正々堂々と立つ!
少し手に汗を握ってるけど頑張るもん!
「ようガキ、今日は……兄ちゃんと一緒のようだな、いつもの姉ちゃんは具合でも悪いんか? それならこのポーションでも飲ませてやれ、二日酔いも一発で治るぞ」
そう言ってイルちゃんにポーションを渡そうとしたんだけど、手が塞がってるよね~。
よ、よし、この危機的状況を格好良く乗りきるのよアカネ!
「妹のイルやアカネの知り合いのようだね、でも、アカネは少し用事で俺が代わりなんだ」
「おう、それなら良かったぜ、ガキの兄ちゃんなら心配ねえな。……そうだな今日も薬草採取だろ? ちと森が騒がしい気配があったからな、気を付けて行きやがれ、じゃあな」
「おじさんありがとですの! 気を付けますの!」
「おう」
それだけ言うと、私の空いている手を素早く取ると、その手にポーションを握らせ、さっさと仲間の待つ食事処へ戻っていった。
戻っていったおじさんを『また子供達の世話か、好きだなお前』『その喋り方直せば町中の子供から人気者になれるぜ』と囃し立てられている声を聞きながら、もう一度会釈をして友里くんの冒険者登録に戻りました。