「カネタニ様! ここから先は困ります! どうか――がっ!」

 ドガッと大きな扉の前で金谷を止めようとした騎士が蹴り飛ばされる。

 騎士は飛ばされた勢いで護っていた扉に当たり、その勢いで扉が片方だけ開いた。

 騎士はその勢いのまま、貴族達が立ち並ぶ間を抜けて部屋の中央にまで飛び、床に落ちたが何度かバウンドした後滑り、王様が座る王座前の階段のところに当たり止まった。

「な、何をしておる! その者を取り押さえよ! 王の御前だぞ! 近衛達は王を護れ!」

「やかましい! テメエらが渡したこの腕輪を取りたいだけだ! 王様に直接聞くからよ! ゴチャゴチャ言ってっと全員シバき倒すぞオラッ! ――ダリャッ! 逃げんじゃねえぞ王様!」

 金谷のやり方は乱暴すぎるけど、拳聖なだけあって、殴る蹴るの威力もそうだが捕まえようとする騎士達の事も余裕をもって躱し、強烈な一撃を入れて吹き飛ばしている。

 その吹き飛んだ騎士達は、貴族達にぶつかり巻き込んでこの広い部屋、三十メートル四方はある壁まで中央付近から飛ばされ動かなくなるほどだ。

 階段上の王様は騎士達に護られているが、表情さえ変えず、王座に座ったまま……。

 絶対におかしいよね……これは、鑑定!

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 王のホムンクルス 王の影武者。
 自我無し。

 傀儡の腕輪 傀儡の腕輪を嵌めたものは、傀儡のネックレスを装備した主により言動から体の動かし方まで全て操られる。

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 おいおい、この王様偽物じゃん。

 ホムンクルスって確か錬金術で造られる人造人間だったはず。

 それに傀儡の腕輪か、じゃあ操ってる人が傀儡のネックレスを持ってるはずだよね。

 ならまずは腕輪を取るのと、高いところからあたりを見て、ネックレスを探すのもありだ。

 動き回り騎士達を殴り飛ばしながら少しずつ前に進む金谷の体から飛び下り、素早く王様のところに移動する。

 途中何度か踏まれそうになったが、今の俺は一センチしかないのと、金谷が騒いでくれているから見付かることもなく階段を上り、ホムンクルスの王様に取り付いた。

 足を登り、王座のひじ掛けに乗せている腕に到達したが――っ!

 ――ネックレス!

 王座の斜め後ろに立っていて、フードを被ったおっちゃんが、首からかけたネックレスをカタカタ震えながら握っているのが見えた。

 あれだ! 鑑定! よし、やっぱりだ! それにどことなくホムンクルスと似てるなと思ったら、ホムンクルスとそっくり……ってか本物の王様がホムンクルスを操ってるじゃん!

「オラ! 王様よ、俺達に配った腕輪を外しやがれ!」

「ふむ。ここで生きていこうとするならば、必要なものだ」

「んなこと聞いてねえんだよ! 俺は外せと言ってるだろうが!」

 表情すら変えず、抑揚の無い言葉で金谷に答えるが、騎士達を倒してしまったから遮るものもなく、凄い勢いでこちらに向かってくる。

 ヤバっ!

 金谷は階段も一歩で上り、二歩目で王座に迫るとホムンクルスの王様に向かって拳を伸ばした。

 ドゴンと王座の背もたれが半分砕け散り、ホムンクルスの胸ぐらを掴んで砕けていない背もたれにドンと、押し付けた。

 どわっ! 破片が! くっ――そおいっ!

 押し付けられて割れた王座の破片が俺の取り付く腕に落ちてきた。

 おもいきって腕から王座に向かって飛び、そこからさらに王座の後ろへ。
 後ろにいた本物の王様に向かって飛びついた。

 あっぶっ! くそ、腕輪を取れなかったが仕方がない、こっちのネックレスからもらう――。

 フード付きのローブに張り付いた俺は、素早く体を伸ばしてネックレスに触れると収納。

「さっさと外しやがれ! オラッ!」

 ネックレスを収納して、さらに王様の鑑定――ってか、収納! 収納! 収納!

「なっ! こ、これはどうなっておる!」

「そっちのジジイもうるせえぞ! ウラッ! くそっ! まだ来やがるか」

 王様の鑑定の結果は魔道具だらけということが分かり、どれがどれとか言ってられない。

 片っ端から触手を伸ばし収納していく。

 王様のローブも収納してしまったから、完全に顔が見えてしまっているが、金谷はホムンクルスを一発殴った後、増援に来た騎士達の相手をしているから気付いていない。

「ま、まずい、魔道具が消えていく、これでは隣国へ攻め込む戦力が――」

 王座前の階段に、騎士達が倒れ、積み重なっていき、あれだけいた貴族達も俺達が入ってきた扉から次々と逃げ出ていく。

 一応パンツは残してやったが、王様は床にパンツだけの姿になり座り込んでいる。

 ってか隣国へ攻め込む? っとそれどころじゃない!

 するとすぐに金谷は騎士を倒しきり、立っているのは金谷と、この部屋の入り口で見守っている取り巻きの二人だけになった。

「よ~し、片付いたぞお前ら。こっち来い、王様をひんむくぞ! 絶対鍵かなにか持ってるはずだからな」

 よし、気になるところ満載だけど今の内に隠れて魔道具を調べなきゃ!

 王様から離れ、王様が出入りするだろう奥にあった扉の無い出口にダッシュで向かい走り出た。

 出た先は十メートル四方のたぶん応接室で、座り心地の良さそうなソファー、大きなテーブル。
 大きな外に出れる窓があり、本棚や、お酒っぽい瓶が並べられた棚、そして奥に扉が一つがあるだけだった。

 よし、早く奴隷の腕輪を外す魔道具を見つけなきゃ。

 入ってきた入口から見えないようにテーブルの下へ移動して、王様からいただいた物を片っ端から出して鑑定、出して鑑定を続け、王様の物っぽくない宝石すらついていない指輪を鑑定したら当たりだった。

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 奴隷主の指輪 対になる奴隷の腕輪を着けた者への絶対命令権を有する指輪。
 永続:使用者が指輪を外すまで。
 短期:命令時に期間をもうけた場合のみ。
 対の奴隷の腕輪を外す方法は、奴隷主の指輪の破壊。

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 よし、じゃあこれを壊せば後は放っておいても、あの様子なら二度と言うことを聞いたりしないだろうな。

 指輪を壊すのは……握り潰そうにも無理だよな。

 ……あっ、食べれば良いじゃん。

 俺は指輪に覆い被さり、指輪を溶かして吸収すると、金谷の声が聞こえてきた。