跳ね橋を渡る。
橋の下の堀を眺めたり、後ろを振り返り出てきた門を見上たりしながら俺達はお城を出た。
「君達二人には大変申し訳ないと、王や、この国全ての民に代わり謝罪する。本当に申し訳ない」
「私達にはこの程度しかできないが、しばらくはなにもしなくても生活できる程度は入っているはずだ」
城の外まで案内してくれた騎士さんは、ちょっと重そうな革袋を差し出してきた。
『イル、受け取ってくれる?』
『はいですの! お任せ……パンで手がふさがってますの……アカネ、お願いしますの』
『あはは。うん、イルちゃん』
茜ちゃんが騎士の一人から革袋を受け取ると、その人は回れ右をして跳ね橋を城に向かって渡り始めた。
「冒険者ギルドで身分証を作れば身分は保証されます。まずは大通りをまっすぐ行けば王都から出る門があり、そこの門前広場にギルドがあります……どうかご無事で、頑張ってください」
もう一人もそう言った後、俺達に背を向け跳ね橋を渡っていった。
「ふう。とりあえず王城からは無事に出れたね。この後――」
「そ・れ・よ・り! 友里くんなぜスライムさんなのですか!」
ここに来るまで念話でお話して、イルの事や俺の事を話してなんとか納得してくれたと思っていたんだけど……まだ納得はしてなかったようでだ。
「ユウリは凄いスライムなのですよ? ダメなのです?」
『あ、茜ちゃん、イル、あまり声を出してこんなところで喋ることじゃないし、冒険者ギルドに向けて歩きながら念話にしようか』
俺が念話でそう言うと、二人は手を繋ぎ、歩き出してくれた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
王城を離れてそろそろ一時間。
遠くに街を取り囲むようにある壁が見え、道の先にその壁がくりぬかれたような門が見えてきた。
茜ちゃんとイルに、俺が召喚される前、ロリっ子のところからのことを一つずつ説明していく。
『クラス全員と言ってましたから、やっぱりあの時いたのですね』
『ロリっ子? 私には光の玉にしか見えませんでした』
『召喚されたら大人しくそこの人達について行くように言われてました』
と、話と途中でつっこまれながら分かった事は、茜ちゃんと俺とはロリっ子の見た目から、話の内容までまったく違うという事が分かった。
そして俺の妄想したスキルなんかを面白がって全部詰め込まれ、体がスライムかドラゴンしか無理だと言われ、種族選択がスライムしかなかった事を話した時、剣が✕の形をした絵が描かれている看板を見付けた。
そこで不味いことに気が付いた。
『イル、はイルで登録した方が良いよね? そうじゃないと身分証がないのと同じだし』
『おお! 冒険者になりますの! 冒険者がどんなのか分からないですがアカネと一緒ですの!』
『ん~、そうだね、友里くんがくっついてないとその姿になれないのですよね? それじゃイルちゃんも不便だし良いと思うよ』
賛同を得られたと言うことで、大通りから少しだけ路地に入り、人がいない事を確かめてから幻影を解除したんだけど――!
ほとんど体を隠す布がない、悪の女幹部が着るような黒い水着らしき姿になったイルが現れた。
『忘れてたぁ! あ、茜ちゃん、とりあえずえとえとこれとこれ着せてあげて!』
『友里くんこれはオマワリさん呼ぶ案件! ギルティですよ! 早く服を寄越してください!』
よく考えたら靴も掃いてないじゃん!
白い頭から被るシャツとポケットの沢山付いたズボンにくるぶしまである革靴。
それとベストがあったので、それも着てもらう事にした。
やはりサイズ調整がついていたからシャツ、からズボン、靴までイルのサイズに変わって、幼い子が冒険者の格好をした見た目になったと思う。
『ほへ~、私の新しい服なのです! ユウリありがとですの。アカネも着せてくれてありがとうですの』
「はぁ、焦った、誰も見てないよね?」
服を着せるために邪魔になってた俺は、イルの肩から茜ちゃんの肩に移る。
少し目線が高くなったところから周囲を見渡し目撃はされてないと安堵した。
「友里くんの生声が耳の横で聴こえるよ~うぅっ」
「あっ、そっか、不登校になってから一度も会ってなかったもんな」
涙ぐんでる茜ちゃんの目尻に触手を伸ばし、涙を吸収しておく。
数分泣いた後、俺はイルの頭の上に乗せられて先程見付けた冒険者ギルドに向かう。
ギルドの入り口は扉は無くて、そのまま止まらず入れた。
ギルドの中は異世界物の小説で想像していた通りの作りだ。
色々と見て回りたい気もしたが、とりあえず正面に合った受け付けカウンターに向かう。
並ぶ事もなく、そのまま受け付けのお姉さんの前に進む。
「こんにちはですの。冒険者に登録したいですの。ここで大丈夫なのです?」
事前にって入る直前に、茜ちゃんに登録の受け付けを頼んだんだけど、イルがやりたいと言い任せた。
背が低くてカウンターの端に掴まり、背伸びをしてなんとか天板にアゴを乗せ、お姉さんに話しかけたものだから、お姉さんと、両隣のお姉さん、隣で受け付けしていた冒険者だと思うお兄さん達もその姿にやられたようだ。
「「「「「可愛い持って帰る♡」」」」」
「「誰がやるか!」」
俺と茜ちゃんの声が重なりギルドの中に響き渡った。
『ヤバっ! ごめん茜ちゃん、イル、なんとか誤魔化して!』
「だ、だれーがやるかですの! 私は私のものですの!」
う、うん、ありがとうね。
イルがカウンターにアゴは乗せたままちょこっとだけ隣の冒険者達に顔を向けそう言ってくれた。
「「も、もうダメ♡」」
その後は茜ちゃんがワタワタとしながらもなんとか場を収め、冒険者に登録できた……俺は従魔として。
「ではアカネ、イルのパーティー登録も終わりました。まだ見習いなので、こちらの見習い用の依頼ね。正門から王都を出て左、街壁沿いにしばらく進んだところから見える森の近くに生えている薬草を十本で依頼達成です」
「お仕事ですの! 薬草いっぱい採ってきますの!」
興奮気味のイルを落ち着かせながら、森までの距離や、薬草の色や形でどの部分が必要か、後、危険は無いのかなど聞いて、その依頼を請ける事にした。
楽に今日中に行って帰れる距離で、片道三十分ほど、それも道が細いがついているそうだし、出てくる魔物も極たまに角ウサギが出るくらいで、今まで見習い試験で出てきて襲ってきた事はないそうだ。
薬草の見本が描かれた木札、依頼を請けた書類代わりの物と、二人分の見習いカードをもらった。
まだ握ってたパンは俺が収納で保管しようとしたんだが、イルはズボンに付いた沢山のポケットに入れてしまった……こっそり収納しておいてあげよう。
カードを受け取り、付属の紐を首にかけた二人。
そして木札を掲げながら満足そうなイルと俺達は冒険者ギルドを後にした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「おお! ありますの! アカネこっちですの!」
「イルちゃん走っちゃ危ないよー」
王都を出た俺達は、言われた通り進み……って出たところから、もう言われた森が見えていたし、言われた通り、三十分を少し切る時間で森手前の原っぱに到着した。
少し心配だった角ウサギはおらず、イルが早速薬草を見付けたようで、俺を頭に乗せたまま走り出し、その後を茜ちゃんが追いかけてくる。
そしてその後をイルとそう変わらない身長の、薄汚れた緑色で、額に角の生えたウサギにはまったく見えない、人形のなにかが……うん、追いかけてきてるね……。
……おい!
「イル! 茜ちゃん! 後ろを見ずにそのまま走って!」
橋の下の堀を眺めたり、後ろを振り返り出てきた門を見上たりしながら俺達はお城を出た。
「君達二人には大変申し訳ないと、王や、この国全ての民に代わり謝罪する。本当に申し訳ない」
「私達にはこの程度しかできないが、しばらくはなにもしなくても生活できる程度は入っているはずだ」
城の外まで案内してくれた騎士さんは、ちょっと重そうな革袋を差し出してきた。
『イル、受け取ってくれる?』
『はいですの! お任せ……パンで手がふさがってますの……アカネ、お願いしますの』
『あはは。うん、イルちゃん』
茜ちゃんが騎士の一人から革袋を受け取ると、その人は回れ右をして跳ね橋を城に向かって渡り始めた。
「冒険者ギルドで身分証を作れば身分は保証されます。まずは大通りをまっすぐ行けば王都から出る門があり、そこの門前広場にギルドがあります……どうかご無事で、頑張ってください」
もう一人もそう言った後、俺達に背を向け跳ね橋を渡っていった。
「ふう。とりあえず王城からは無事に出れたね。この後――」
「そ・れ・よ・り! 友里くんなぜスライムさんなのですか!」
ここに来るまで念話でお話して、イルの事や俺の事を話してなんとか納得してくれたと思っていたんだけど……まだ納得はしてなかったようでだ。
「ユウリは凄いスライムなのですよ? ダメなのです?」
『あ、茜ちゃん、イル、あまり声を出してこんなところで喋ることじゃないし、冒険者ギルドに向けて歩きながら念話にしようか』
俺が念話でそう言うと、二人は手を繋ぎ、歩き出してくれた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
王城を離れてそろそろ一時間。
遠くに街を取り囲むようにある壁が見え、道の先にその壁がくりぬかれたような門が見えてきた。
茜ちゃんとイルに、俺が召喚される前、ロリっ子のところからのことを一つずつ説明していく。
『クラス全員と言ってましたから、やっぱりあの時いたのですね』
『ロリっ子? 私には光の玉にしか見えませんでした』
『召喚されたら大人しくそこの人達について行くように言われてました』
と、話と途中でつっこまれながら分かった事は、茜ちゃんと俺とはロリっ子の見た目から、話の内容までまったく違うという事が分かった。
そして俺の妄想したスキルなんかを面白がって全部詰め込まれ、体がスライムかドラゴンしか無理だと言われ、種族選択がスライムしかなかった事を話した時、剣が✕の形をした絵が描かれている看板を見付けた。
そこで不味いことに気が付いた。
『イル、はイルで登録した方が良いよね? そうじゃないと身分証がないのと同じだし』
『おお! 冒険者になりますの! 冒険者がどんなのか分からないですがアカネと一緒ですの!』
『ん~、そうだね、友里くんがくっついてないとその姿になれないのですよね? それじゃイルちゃんも不便だし良いと思うよ』
賛同を得られたと言うことで、大通りから少しだけ路地に入り、人がいない事を確かめてから幻影を解除したんだけど――!
ほとんど体を隠す布がない、悪の女幹部が着るような黒い水着らしき姿になったイルが現れた。
『忘れてたぁ! あ、茜ちゃん、とりあえずえとえとこれとこれ着せてあげて!』
『友里くんこれはオマワリさん呼ぶ案件! ギルティですよ! 早く服を寄越してください!』
よく考えたら靴も掃いてないじゃん!
白い頭から被るシャツとポケットの沢山付いたズボンにくるぶしまである革靴。
それとベストがあったので、それも着てもらう事にした。
やはりサイズ調整がついていたからシャツ、からズボン、靴までイルのサイズに変わって、幼い子が冒険者の格好をした見た目になったと思う。
『ほへ~、私の新しい服なのです! ユウリありがとですの。アカネも着せてくれてありがとうですの』
「はぁ、焦った、誰も見てないよね?」
服を着せるために邪魔になってた俺は、イルの肩から茜ちゃんの肩に移る。
少し目線が高くなったところから周囲を見渡し目撃はされてないと安堵した。
「友里くんの生声が耳の横で聴こえるよ~うぅっ」
「あっ、そっか、不登校になってから一度も会ってなかったもんな」
涙ぐんでる茜ちゃんの目尻に触手を伸ばし、涙を吸収しておく。
数分泣いた後、俺はイルの頭の上に乗せられて先程見付けた冒険者ギルドに向かう。
ギルドの入り口は扉は無くて、そのまま止まらず入れた。
ギルドの中は異世界物の小説で想像していた通りの作りだ。
色々と見て回りたい気もしたが、とりあえず正面に合った受け付けカウンターに向かう。
並ぶ事もなく、そのまま受け付けのお姉さんの前に進む。
「こんにちはですの。冒険者に登録したいですの。ここで大丈夫なのです?」
事前にって入る直前に、茜ちゃんに登録の受け付けを頼んだんだけど、イルがやりたいと言い任せた。
背が低くてカウンターの端に掴まり、背伸びをしてなんとか天板にアゴを乗せ、お姉さんに話しかけたものだから、お姉さんと、両隣のお姉さん、隣で受け付けしていた冒険者だと思うお兄さん達もその姿にやられたようだ。
「「「「「可愛い持って帰る♡」」」」」
「「誰がやるか!」」
俺と茜ちゃんの声が重なりギルドの中に響き渡った。
『ヤバっ! ごめん茜ちゃん、イル、なんとか誤魔化して!』
「だ、だれーがやるかですの! 私は私のものですの!」
う、うん、ありがとうね。
イルがカウンターにアゴは乗せたままちょこっとだけ隣の冒険者達に顔を向けそう言ってくれた。
「「も、もうダメ♡」」
その後は茜ちゃんがワタワタとしながらもなんとか場を収め、冒険者に登録できた……俺は従魔として。
「ではアカネ、イルのパーティー登録も終わりました。まだ見習いなので、こちらの見習い用の依頼ね。正門から王都を出て左、街壁沿いにしばらく進んだところから見える森の近くに生えている薬草を十本で依頼達成です」
「お仕事ですの! 薬草いっぱい採ってきますの!」
興奮気味のイルを落ち着かせながら、森までの距離や、薬草の色や形でどの部分が必要か、後、危険は無いのかなど聞いて、その依頼を請ける事にした。
楽に今日中に行って帰れる距離で、片道三十分ほど、それも道が細いがついているそうだし、出てくる魔物も極たまに角ウサギが出るくらいで、今まで見習い試験で出てきて襲ってきた事はないそうだ。
薬草の見本が描かれた木札、依頼を請けた書類代わりの物と、二人分の見習いカードをもらった。
まだ握ってたパンは俺が収納で保管しようとしたんだが、イルはズボンに付いた沢山のポケットに入れてしまった……こっそり収納しておいてあげよう。
カードを受け取り、付属の紐を首にかけた二人。
そして木札を掲げながら満足そうなイルと俺達は冒険者ギルドを後にした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「おお! ありますの! アカネこっちですの!」
「イルちゃん走っちゃ危ないよー」
王都を出た俺達は、言われた通り進み……って出たところから、もう言われた森が見えていたし、言われた通り、三十分を少し切る時間で森手前の原っぱに到着した。
少し心配だった角ウサギはおらず、イルが早速薬草を見付けたようで、俺を頭に乗せたまま走り出し、その後を茜ちゃんが追いかけてくる。
そしてその後をイルとそう変わらない身長の、薄汚れた緑色で、額に角の生えたウサギにはまったく見えない、人形のなにかが……うん、追いかけてきてるね……。
……おい!
「イル! 茜ちゃん! 後ろを見ずにそのまま走って!」