「はぁぁ」
モニターから目を離し、手にしていたコントローラーをローテーブルの上に置く。
グググとバンザイをするように伸びをして、ビーズクッションの上で俺は寝転んだ。
ずぶぶと体がクッションに沈み込むのを感じながら、閉じた目を両手でもむ。
目を開けて、埋もれたままふと首だけ動かし壁の時計を見ると……。
日付け変わってるじゃん、思ったよりこのゲームはハマる。
続けたい気もあるけど、お風呂も入れてないし、でも眠すぎだからセーブして今日は寝ちゃおっと。
まあ夜更かしようが朝に起きなくても良いんだけどね。
どうせ学校には行かないし……。
……いつからだろう、学校に行くのが辛くなって、校門をくぐれなくなったのは……。
ぼーっと天井を眺めながら思い返す。
確か中学校に入学して、もうすぐ初めての夏休みって頃だったかな。
それまでは新しく友達もできて、遊ぶ予定も沢山あったはずなのに、どこで歯車がズレてしまったのか。
突然だった、いきなり誰も俺と話どころか挨拶もしてくれなくなったっけ、みんなと仲良く楽しみたかっただけのに。
「はぁ」
上半身を起こし、コントローラーでセーブを選択。
カーソルを『はい』に合わせ、ポチっと押した瞬間――!
「ぬおぉぉおー! 目がぁぁー! 目がぁぁー!」
某有名アニメ映画の台詞を口にしてしまうほど、液晶テレビの画面から光が――!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――テレビが光ってチカチカしていた目がやっとまともになってきた。
まわりが見えるようになってきたけど……まっ白い床に後は空かな、白い雲が浮かんでいて、白い床を滑るように横へ流されている。
それにビーズクッションに座っていたのに、なぜか床に座っていた。
『は~い♪ 皆さ~ん、いらっしゃいませ~、異世界への旅立ちの時間だよ~』
そこに突然可愛らしい声が響いた。
混乱していたのか思考が上手く働かなかったけれど、ビクッとなりながらも声のした方に目だけを向ける。
『……あれ? 元気ないなぁ~、せっかくみんなには良いスキルを選んでもらおうと思ってたのに~』
……え!? ちょっと待って、異世界!? スキル!? それにここどこ!?
それもだけどなんでロリっ子が宙に浮いてるの!? 可愛いけど、じゃなくてみんなって俺しかいなくない!?
『ん~? 君達には後の混乱を避けるため、お互い見えないし~、精神耐性をつけたから冷静になってるはずなんだけど~』
コテっと首を傾げるロリっ子は、ふわふわっと俺の方に飛んでくる。
『それなのに……混乱してる子がいるみたいだね』
つ~とその動きを目線で追い、俺の正面にまで来て、またコテっと首を傾げるロリっ子を見つめる。
か、可愛い……っ! じゃねえだろ!
俺は急いで浮いてるロリっ子から少しでも離れるように、全力で後退ろうとしたのに体が、いや、首すら動かない。
な、なんなのこれ! 夢!? 夢なの!? それとも金縛りなの!? ねえそうでしょ!
『おかしいなぁ、騒がれると面倒だから声も出せず、体も動かないようにしてたのに』
空中で真っ白なワンピースを着て、ふよふよ浮きながら、腕を組んで悩んでるような顔をしたロリっ子は『へぇ』と、何か納得したような顔で、透き通るような金色の髪の毛を人差し指にくるくると絡める仕草で今度はニコニコと笑い始めた。
そして俺の方を向いて言葉を続ける。
『えっと、ロリっ子って僕の事が見えた君の名前は~』
じぃ~っと俺を見つめるロリっ子。
……あっ! ロリっ子で僕っ子! 属性が二つも!
『推しの東雲 友里君だね~、やっぱり面倒だし特別製の耐性スキルを付けちゃおっか』
内心、ちょっとズレたところに興奮している気もしないでもないけど、ロリっ子はあろうことか、ゲームをしていて今晩は洗えてないボサボサ頭に手を置いた。
ちょいちょいちょいちょい! なに触ってるの!
『よしよし、じゃあ君のスキルはロリキラーで良いかな?』
いやいやロリキラーってそんなの嫌に決まってるし! そりゃ君の事は可愛いと思うけど、ってだからここどこ!? スキルって異世界召喚とかのお約束!?
それなら俺は引きこもりで運動もしてないし、武器持って戦ってモンスターとか倒せ……るのかな?
あっ、でもスキル次第だけど、もらうものによって変わってくるよな? 戦闘職で戦って無双とかも格好いいけど、魔法は使いたいよね。
できたら全属性、火水土風に光と闇、後は補助系や、回復系、転移とかも便利そうだし、無限収納と鑑定は必須だよね!
後は……その力を使って気の許せる仲間と楽しく過ごしたいな。
っ! 思わず凄い勢いで考えちゃったけど、この状況でなに考えてんの俺っ!
スーっとさらに俺の方に近付いてくるロリっ子。
おでこがくっつき、鼻と鼻がくっつくくらいまで――。
――ふにゅんって! 鼻! 鼻がくっついてるよ! ストップストップ! 俺のファーストキスを奪う気なの! 可愛いからカモーンだけど、そんなのはやっぱり付き合ってからだよね!
『ふ~ん。手まで動かせるんだ、凄いね』
おでこと鼻からロリっ子の感触が離れた。
離れて見えた顔は少し驚いた顔をしている。
そして今度はいたずらっ子の顔になってニヤリと笑った。
『くふふ、その考え面白そうだね、じゃあ友里君はそんな感じで~』
頭の手は離してくれたみたいだけど、まだ目の前、三十センチも離れてないところで覗き込むような格好で浮くロリっ子。
何かを思い付いたようにポンと手を叩き、また頭に手を乗せてきた。
『あっ! でもそのままじゃ面白くないし~、身体が持たないだろうから~、僕の独断と偏見で~、こーしてあーして、ほいっと! よし僕の友里君はこれで良いね♪ 次は~、そこの君だ~』
ロリっ子はふよふよスーっと俺の前から移動して、あっち行きこっち行き。
えと、俺なにかされたの? ファーストキスはなんとか手で防御したから守れたけど、流れ的にスキルが付いたって考えるのが普通だよね?
さっきまで考えがまとまらなかったのに、この状況でなぜか落ち着いて冷静に考えられるようになったし。
こういうのは異世界物の小説なら精神耐性が付いたって事なのかな?
……あ、そう言えば付けたみたいな事言ってたよ。
ロリっ子に目を戻すと、うろうろ浮かびながらなにもないところで止まって、なにもないように見えるところに手を伸ばし、少し話しているように口が動くのが見えたが話し声は聞こえない。
手を引っ込めるとまた移動して、手を伸ばしているロリっ子。
あれ? 手は俺のファーストキスを守るために動いたけど、今度は普通に首が動いてるじゃん!
そう言えばこんな時はあれだよね。
私は全身が動く事を確かめた後、よっこいしょと立ち上がり――っ!
ステータス!
足を肩幅に開き、左手を腰に当て、右手は前に伸ばして手のひらは力いっぱい開いたポーズをしてみた。
ぬおっ! 手のひらの先に出る予定だったのに、目の前に出たじゃん!
……予定の位置じゃなかったけど……出たし内容を見てみるか。
何々、種族とか職業があるタイプか~、職業が□○△の使徒ってなんだろ? それにHPもMPも3……よわよわだよ。
そりゃ運動もせず、一日中家でゲームしてるか漫画か小説読んでばっかだけどさ……。
なんでいじめられたかわからないけど、原因を突き止められる能力で……無いだろうな。
そんな都合がいいのあるわけ無いし、あれば直すことができて、また仲良く……無いか。
よし! こうなったら自由気ままにスローライフするしかないよねこれ。
ま、まあ次だ次、スキルは……スクロールすれば良いのかなぁ~。
目の前に出たメニュー画面には次とかのアイコン的な物はない。
でも無いだけで、メニュー画面の一番下に、文字っぽい物が見きれている。
まだ下に続いてるみたいだ。
そ~っと人差し指で画面の下の方にタップして、上にずらしていくといっぱい出てきた。
ぬおおおーどこまで続くの! いやいやここまでのチートは望んで……たよ!
と、とりあえず一番上からもうヤヴァイよね。
――――――――――――――――――――
魔法の才能 測定不能
武術の才能 測定不能
生産の才能 測定不能
言語理解 全言語
鑑定の才能 神眼
収納 無限収納
・
・
・
・
――――――――――――――――――――
……うん、ぶっ壊れだわ、一部測定不能って訳分からない部分もあるけど、これだけチートなら、役立つし友達作れて仲良くとかできそうじゃね?。
色々とステータスを見ていたのに、ロリっ子がまた喋り始めた。
『は~い。全員にスキルとか付けましたよ~、ステータスって念じると確認できるから後で見ておいてね~』
両手を広げて『頑張ったから褒めてー』的な満面の笑みを振り撒いている。
ま、まあ俺でも可愛いと思うけど……ちょっと胡散臭いんだよね。チートはありがたいけど。
でもまあそうやって身振り手振りも加えて説明を続けてるし、良い奴なのかな。
ところで、本当に何者なんだろう? 神様って事なのかな?
ロリっ子はまたうろうろしながら止まり、かがんだ格好で、なにもないところを指差したり……。
あっ、分からない人にこのステータスについて説明してるのか、やっぱり良い奴なのかな?
すると全員が確認し終ったのか、最初にいただろう場所に戻ってきた。
『じゃあ、この後なんだけど、僕の造った世界に転生してもらいま~す。何かして欲しい事も無いんだけど、一応みんな一緒の国に送るから、好きなように頑張って生きて下さいね~』
ロリっ子は、さらりととんでもない事を言い出した。
え? どういう事!? 転生? どこかの国に召喚とかじゃないの!? ばぶーって言わないといけないの! それも目的無し!?
『ん? 召喚の方が良いの? じゃあそれで!』
軽いね!
何か手を指揮者のように動かすと、ロリっ子が光り、たぶんみんなが光に包まれた。
光がおさまった後、まわりを見渡して、うんうんと満足そうに頷いた。
『じゃあ職業は僕が付けたけど、種族は好きなの選んでね~、今から五分あげるから頑張って~』
か、軽いよロリっ子、それに職業ははじめから付いていたぞ? ってか転生から召喚に変えられるのか、それに種族を選べるんだ……転生と変わらないじゃん!
時間も五分と言ってたから早く選ばないと、またスキルのように大量だと選ぶだけで時間がかかるし、ここは早めに良い種族を選ばないと。
ステータス画面を見ると、種族の所に▽マークがあるしこれかな? ポチっと。
――――――――――――――――――――
種族 ▽
スライム
――――――――――――――――――――
は? いやいや、それはない。スクロールするんでしょ?
スル…………。
ん? 反応しないぞ?
スル…………スル……スルスルスルスルスルスル……。
う、動かん……。
……おいロリっ子よ! 種族一つしかないじゃん!
スライムってなに!
モンスター最弱じゃん!
ぽよんぽよんじゃん!
召喚されたらスライムだった件じゃん!
タイトルにしたら怒られちゃうじゃん!
それとも魔王になれって事なの!
せめてヒト型にしてよ!
例えばエルフで絶世の美男子とかさ、ドワーフは……髭もじゃはパス!
後は獣人でスピード&パワー持ちとかさ、色々とあるじゃん! なんでスライムなんだよ!
ズカズカとロリっ子に詰め寄り、目の前でステータスが見えるように横に立って見せてあげる。
『どしたの~東雲友里君』
俺は種族の所を指差しトントンとそこをつつく。
ロリっ子! 俺の種族スライムしかないじゃん! それになんで呼ぶ時フルネームなんだよ!
『ん~、駄目?』
まあフルネームは間違いじゃないけど、種族はせめてヒト型にならないの!?
ロリっ子は私のメニュー画面を覗き込んで『ああ……』とか言って、くるりと体を回転させ、私が掴んでいた肩の拘束を解いてしまった。
さらに少し高いところ、ジャンプしても手が届かないところまでのぼったと思ったら――。
『は~い時間でーす、選べてない人は一番上の種族になるから頑張ってね~』
少しずつ上へ上がっていくロリっ子は、いたずらっ子顔でニヤリと笑う。
『最後に言いにくいんだけど……なんと! 元の世界には帰れませ~ん。行ってらっしゃ~い』
待て待て待て待て! 帰れないってなんなの! 待てよ!
届くはずのないロリっ子に、伸ばした手の先から透け始め、下を見ると足も消えてきてる。
ロリっ子ぉぉぉぉぉぉー!
足元の感覚が無くなったかと思った瞬間、落ちる感じで浮遊感……俺はスライムとして召喚されるみたいです。
モニターから目を離し、手にしていたコントローラーをローテーブルの上に置く。
グググとバンザイをするように伸びをして、ビーズクッションの上で俺は寝転んだ。
ずぶぶと体がクッションに沈み込むのを感じながら、閉じた目を両手でもむ。
目を開けて、埋もれたままふと首だけ動かし壁の時計を見ると……。
日付け変わってるじゃん、思ったよりこのゲームはハマる。
続けたい気もあるけど、お風呂も入れてないし、でも眠すぎだからセーブして今日は寝ちゃおっと。
まあ夜更かしようが朝に起きなくても良いんだけどね。
どうせ学校には行かないし……。
……いつからだろう、学校に行くのが辛くなって、校門をくぐれなくなったのは……。
ぼーっと天井を眺めながら思い返す。
確か中学校に入学して、もうすぐ初めての夏休みって頃だったかな。
それまでは新しく友達もできて、遊ぶ予定も沢山あったはずなのに、どこで歯車がズレてしまったのか。
突然だった、いきなり誰も俺と話どころか挨拶もしてくれなくなったっけ、みんなと仲良く楽しみたかっただけのに。
「はぁ」
上半身を起こし、コントローラーでセーブを選択。
カーソルを『はい』に合わせ、ポチっと押した瞬間――!
「ぬおぉぉおー! 目がぁぁー! 目がぁぁー!」
某有名アニメ映画の台詞を口にしてしまうほど、液晶テレビの画面から光が――!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――テレビが光ってチカチカしていた目がやっとまともになってきた。
まわりが見えるようになってきたけど……まっ白い床に後は空かな、白い雲が浮かんでいて、白い床を滑るように横へ流されている。
それにビーズクッションに座っていたのに、なぜか床に座っていた。
『は~い♪ 皆さ~ん、いらっしゃいませ~、異世界への旅立ちの時間だよ~』
そこに突然可愛らしい声が響いた。
混乱していたのか思考が上手く働かなかったけれど、ビクッとなりながらも声のした方に目だけを向ける。
『……あれ? 元気ないなぁ~、せっかくみんなには良いスキルを選んでもらおうと思ってたのに~』
……え!? ちょっと待って、異世界!? スキル!? それにここどこ!?
それもだけどなんでロリっ子が宙に浮いてるの!? 可愛いけど、じゃなくてみんなって俺しかいなくない!?
『ん~? 君達には後の混乱を避けるため、お互い見えないし~、精神耐性をつけたから冷静になってるはずなんだけど~』
コテっと首を傾げるロリっ子は、ふわふわっと俺の方に飛んでくる。
『それなのに……混乱してる子がいるみたいだね』
つ~とその動きを目線で追い、俺の正面にまで来て、またコテっと首を傾げるロリっ子を見つめる。
か、可愛い……っ! じゃねえだろ!
俺は急いで浮いてるロリっ子から少しでも離れるように、全力で後退ろうとしたのに体が、いや、首すら動かない。
な、なんなのこれ! 夢!? 夢なの!? それとも金縛りなの!? ねえそうでしょ!
『おかしいなぁ、騒がれると面倒だから声も出せず、体も動かないようにしてたのに』
空中で真っ白なワンピースを着て、ふよふよ浮きながら、腕を組んで悩んでるような顔をしたロリっ子は『へぇ』と、何か納得したような顔で、透き通るような金色の髪の毛を人差し指にくるくると絡める仕草で今度はニコニコと笑い始めた。
そして俺の方を向いて言葉を続ける。
『えっと、ロリっ子って僕の事が見えた君の名前は~』
じぃ~っと俺を見つめるロリっ子。
……あっ! ロリっ子で僕っ子! 属性が二つも!
『推しの東雲 友里君だね~、やっぱり面倒だし特別製の耐性スキルを付けちゃおっか』
内心、ちょっとズレたところに興奮している気もしないでもないけど、ロリっ子はあろうことか、ゲームをしていて今晩は洗えてないボサボサ頭に手を置いた。
ちょいちょいちょいちょい! なに触ってるの!
『よしよし、じゃあ君のスキルはロリキラーで良いかな?』
いやいやロリキラーってそんなの嫌に決まってるし! そりゃ君の事は可愛いと思うけど、ってだからここどこ!? スキルって異世界召喚とかのお約束!?
それなら俺は引きこもりで運動もしてないし、武器持って戦ってモンスターとか倒せ……るのかな?
あっ、でもスキル次第だけど、もらうものによって変わってくるよな? 戦闘職で戦って無双とかも格好いいけど、魔法は使いたいよね。
できたら全属性、火水土風に光と闇、後は補助系や、回復系、転移とかも便利そうだし、無限収納と鑑定は必須だよね!
後は……その力を使って気の許せる仲間と楽しく過ごしたいな。
っ! 思わず凄い勢いで考えちゃったけど、この状況でなに考えてんの俺っ!
スーっとさらに俺の方に近付いてくるロリっ子。
おでこがくっつき、鼻と鼻がくっつくくらいまで――。
――ふにゅんって! 鼻! 鼻がくっついてるよ! ストップストップ! 俺のファーストキスを奪う気なの! 可愛いからカモーンだけど、そんなのはやっぱり付き合ってからだよね!
『ふ~ん。手まで動かせるんだ、凄いね』
おでこと鼻からロリっ子の感触が離れた。
離れて見えた顔は少し驚いた顔をしている。
そして今度はいたずらっ子の顔になってニヤリと笑った。
『くふふ、その考え面白そうだね、じゃあ友里君はそんな感じで~』
頭の手は離してくれたみたいだけど、まだ目の前、三十センチも離れてないところで覗き込むような格好で浮くロリっ子。
何かを思い付いたようにポンと手を叩き、また頭に手を乗せてきた。
『あっ! でもそのままじゃ面白くないし~、身体が持たないだろうから~、僕の独断と偏見で~、こーしてあーして、ほいっと! よし僕の友里君はこれで良いね♪ 次は~、そこの君だ~』
ロリっ子はふよふよスーっと俺の前から移動して、あっち行きこっち行き。
えと、俺なにかされたの? ファーストキスはなんとか手で防御したから守れたけど、流れ的にスキルが付いたって考えるのが普通だよね?
さっきまで考えがまとまらなかったのに、この状況でなぜか落ち着いて冷静に考えられるようになったし。
こういうのは異世界物の小説なら精神耐性が付いたって事なのかな?
……あ、そう言えば付けたみたいな事言ってたよ。
ロリっ子に目を戻すと、うろうろ浮かびながらなにもないところで止まって、なにもないように見えるところに手を伸ばし、少し話しているように口が動くのが見えたが話し声は聞こえない。
手を引っ込めるとまた移動して、手を伸ばしているロリっ子。
あれ? 手は俺のファーストキスを守るために動いたけど、今度は普通に首が動いてるじゃん!
そう言えばこんな時はあれだよね。
私は全身が動く事を確かめた後、よっこいしょと立ち上がり――っ!
ステータス!
足を肩幅に開き、左手を腰に当て、右手は前に伸ばして手のひらは力いっぱい開いたポーズをしてみた。
ぬおっ! 手のひらの先に出る予定だったのに、目の前に出たじゃん!
……予定の位置じゃなかったけど……出たし内容を見てみるか。
何々、種族とか職業があるタイプか~、職業が□○△の使徒ってなんだろ? それにHPもMPも3……よわよわだよ。
そりゃ運動もせず、一日中家でゲームしてるか漫画か小説読んでばっかだけどさ……。
なんでいじめられたかわからないけど、原因を突き止められる能力で……無いだろうな。
そんな都合がいいのあるわけ無いし、あれば直すことができて、また仲良く……無いか。
よし! こうなったら自由気ままにスローライフするしかないよねこれ。
ま、まあ次だ次、スキルは……スクロールすれば良いのかなぁ~。
目の前に出たメニュー画面には次とかのアイコン的な物はない。
でも無いだけで、メニュー画面の一番下に、文字っぽい物が見きれている。
まだ下に続いてるみたいだ。
そ~っと人差し指で画面の下の方にタップして、上にずらしていくといっぱい出てきた。
ぬおおおーどこまで続くの! いやいやここまでのチートは望んで……たよ!
と、とりあえず一番上からもうヤヴァイよね。
――――――――――――――――――――
魔法の才能 測定不能
武術の才能 測定不能
生産の才能 測定不能
言語理解 全言語
鑑定の才能 神眼
収納 無限収納
・
・
・
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――――――――――――――――――――
……うん、ぶっ壊れだわ、一部測定不能って訳分からない部分もあるけど、これだけチートなら、役立つし友達作れて仲良くとかできそうじゃね?。
色々とステータスを見ていたのに、ロリっ子がまた喋り始めた。
『は~い。全員にスキルとか付けましたよ~、ステータスって念じると確認できるから後で見ておいてね~』
両手を広げて『頑張ったから褒めてー』的な満面の笑みを振り撒いている。
ま、まあ俺でも可愛いと思うけど……ちょっと胡散臭いんだよね。チートはありがたいけど。
でもまあそうやって身振り手振りも加えて説明を続けてるし、良い奴なのかな。
ところで、本当に何者なんだろう? 神様って事なのかな?
ロリっ子はまたうろうろしながら止まり、かがんだ格好で、なにもないところを指差したり……。
あっ、分からない人にこのステータスについて説明してるのか、やっぱり良い奴なのかな?
すると全員が確認し終ったのか、最初にいただろう場所に戻ってきた。
『じゃあ、この後なんだけど、僕の造った世界に転生してもらいま~す。何かして欲しい事も無いんだけど、一応みんな一緒の国に送るから、好きなように頑張って生きて下さいね~』
ロリっ子は、さらりととんでもない事を言い出した。
え? どういう事!? 転生? どこかの国に召喚とかじゃないの!? ばぶーって言わないといけないの! それも目的無し!?
『ん? 召喚の方が良いの? じゃあそれで!』
軽いね!
何か手を指揮者のように動かすと、ロリっ子が光り、たぶんみんなが光に包まれた。
光がおさまった後、まわりを見渡して、うんうんと満足そうに頷いた。
『じゃあ職業は僕が付けたけど、種族は好きなの選んでね~、今から五分あげるから頑張って~』
か、軽いよロリっ子、それに職業ははじめから付いていたぞ? ってか転生から召喚に変えられるのか、それに種族を選べるんだ……転生と変わらないじゃん!
時間も五分と言ってたから早く選ばないと、またスキルのように大量だと選ぶだけで時間がかかるし、ここは早めに良い種族を選ばないと。
ステータス画面を見ると、種族の所に▽マークがあるしこれかな? ポチっと。
――――――――――――――――――――
種族 ▽
スライム
――――――――――――――――――――
は? いやいや、それはない。スクロールするんでしょ?
スル…………。
ん? 反応しないぞ?
スル…………スル……スルスルスルスルスルスル……。
う、動かん……。
……おいロリっ子よ! 種族一つしかないじゃん!
スライムってなに!
モンスター最弱じゃん!
ぽよんぽよんじゃん!
召喚されたらスライムだった件じゃん!
タイトルにしたら怒られちゃうじゃん!
それとも魔王になれって事なの!
せめてヒト型にしてよ!
例えばエルフで絶世の美男子とかさ、ドワーフは……髭もじゃはパス!
後は獣人でスピード&パワー持ちとかさ、色々とあるじゃん! なんでスライムなんだよ!
ズカズカとロリっ子に詰め寄り、目の前でステータスが見えるように横に立って見せてあげる。
『どしたの~東雲友里君』
俺は種族の所を指差しトントンとそこをつつく。
ロリっ子! 俺の種族スライムしかないじゃん! それになんで呼ぶ時フルネームなんだよ!
『ん~、駄目?』
まあフルネームは間違いじゃないけど、種族はせめてヒト型にならないの!?
ロリっ子は私のメニュー画面を覗き込んで『ああ……』とか言って、くるりと体を回転させ、私が掴んでいた肩の拘束を解いてしまった。
さらに少し高いところ、ジャンプしても手が届かないところまでのぼったと思ったら――。
『は~い時間でーす、選べてない人は一番上の種族になるから頑張ってね~』
少しずつ上へ上がっていくロリっ子は、いたずらっ子顔でニヤリと笑う。
『最後に言いにくいんだけど……なんと! 元の世界には帰れませ~ん。行ってらっしゃ~い』
待て待て待て待て! 帰れないってなんなの! 待てよ!
届くはずのないロリっ子に、伸ばした手の先から透け始め、下を見ると足も消えてきてる。
ロリっ子ぉぉぉぉぉぉー!
足元の感覚が無くなったかと思った瞬間、落ちる感じで浮遊感……俺はスライムとして召喚されるみたいです。