俺と凛華が出会ったのは入社式だった。説明会の席が隣だった俺たちは、レクリエーションで意気投合し、すぐに打ち解けた。俺は一目見た時から恋に落ちていた。彼女の笑顔はまるで……ひまわりのようだった。
ありきたりな表現だってわかっていたけど、俺にとって本物のひまわりよりも心を晴らしてくれる、そんな笑顔だった。
そして彼女は『そんなことないよ』ってまた、ひまわりみたいに笑うんだ。
華奢な体に長い指。本人はコンプレックスだと言うが、笑った時に細くなる目も。仕事中は束ねているがデートの日はおしゃれに巻かれたロングヘアも。抱きしめた時に俺の胸に頭が収まるくらいの低い身長も。目に映る彼女の姿だけでも全て、全て、全て……愛おしいんだ。
『トキ君はアゲラタムみたいだね』
『アゲラタム?お花?聞いたことないな』
『紫色で可愛いお花なんだよ。花言葉は……なんだと思う?』
『うーん、俺でしょ?元気とか!』
『ううん……安楽だよ。トキ君といると……なんでだろう、心が落ち着くんだよね』
花が好きだった凛華はよく、好きな花や花言葉を教えてくれた。マニアックすぎて知らない花ばかりだったが、楽しそうに話す彼女の姿を見ているだけで俺の心にはいくつもの花が咲いた。
『俺も落ち着くよ』
『でもね、そういうおっちょこちょいなところも好きだよ』
『おっちょこちょい?』
『うん、襟、捩れてる!』
『えっ!まじで⁉︎……こっち?』
『ううん、こっち。直してあげる』
『ありがと、挨拶前に気づいてよかった〜』
『もー初めて両親に彼氏紹介するんだから、シャキッとしてよね!』
彼女の優しい声も、大好きだった。
その夜。彼女が眠る部屋で、彼女のそばで、彼女の言葉を思い出し、一人涙した。