1月の終わり頃。厳しい寒さの中、雪が降るこの町で彼女の家まで後3分。付き合って3年が経った今でもこの道を歩く時間はどこか浮つきがちで
「あ、モンブラン買って行こうかな」

 注意力も鈍りがちで……
 雪道でスリップした大きな物体に気がつくのが、遅かったんだ。

 俺はこの日、トラックに跳ねられて死んだ。
 
 
 気がついた時には、自分の葬儀が執り行われていた。
そして
(この写真、旅行に行った時のか)
なんて呑気に遺影を見ていた。

 遺影の前に腰掛け、葬儀場を見渡し、静かに涙を流す両親や親戚を見ていてもまだ実感なんて湧くはずもなく。
 (俺の葬式……なのか。あ、凛華(りんか)……)
 右側の2列目に座る彼女の姿が見えた。凛華は力の抜け切った表情でボーッと俺のことを、いや、俺の遺影を見つめていた。その目には僅かな潤みすら見えない。泣き虫な彼女が涙を流していなかった。

 彼女は今、何を考えているのだろう——