ニコのおかげでパンダモンドはすっかり軟化した。最初の威圧的な態度はどこにもなく、ちょっと口が悪いだけの好々爺だ。
魔道具の修理には何日もかかるらしく、その間は巨大土管に泊めてもらっている。おまけに俺は異世界の上着まで頂戴した。いつまで裸でいるわけにはいかなかったので、非常に助かった。パンダモンド様々である。
一日の終わり。
俺達は夕食を終え、順番に風呂に入っていた。パンダモンドは風呂好きらしく、住居用の土管とは別に風呂用の土管がある。
多摩湖から汲み上げた水を魔道具で濾過・加熱してお湯にし、木製の湯船にはる。そこに浸かるのが一番の楽しみらしい。
「それにしても、面白い」
ニコが俺のスマホを電源にしてドライヤーを動かし、風呂上がりのパンダモンドの髭を乾かしている。
「ドライヤーがか?」
「いや、そのスマホとやらだ」
「あぁ、そっちか」
「スマホは面白いぞ! コメント欄が見れるからな!」
そう言ってニコがスマホを手に取り、コメント欄をパンダモンドに見せる。
「だ、誰がロリコンドワーフだ! 本当に過去の日本人は失礼な奴しかおらん!」
コメント欄の煽りを見て怒っている。パンダモンドは日本語が読めるらしい。
「パンダモンドはこのスマホに何が起きているか分かるのか?」
「いーや。わからん。ただ……」
パンダモンドは髭をしごいて勿体ぶる。
「ただ?」
「……そのスマホと魔法を組み合わせたら、お前は元いた時代に戻れる可能性がある」
「どういうことだ?」
取り乱しそうになるのを抑え、なるべく冷静を装う。
「そのスマホはお前のいた時代と繋がっている。時間を飛び越える管のようなもので」
「この地球が異世界と繋がっているようにか?」
「まぁ、それとはちょっと違うんだが、似てはいる」
ニコが不安そうな表情で俺を見ている。しかし、ここで話を止めるわけにはいかない。
「で、魔法を組み合わせるっていうのは?」
「単純な話だ。魔法でその時間を飛び越える管を広げるんだ。そこにルーメン。お前を放り込んだらどうなると思う?」
「……元の時代に戻る」
ニコが俺の手を握った。
「そういうことだ」
「パンダモンドはその魔法を使えるのか?」
「俺に無理だよ。俺には……」
そう言うとパンダモンドは立ち上がり、ロッキングチェアのところへいった。揺られながら眠るのだ。
一方の俺も揺れている。いや、揺さぶられている。突然示された、帰還の可能性に。
「……ルーメン」
ニコがこちらを見ていた。
「もう今日は遅い。寝よう」
「……うん」
土管の奥。倉庫スペースに敷かれた布団に入るとニコはすぐに寝息を立て始めた。今日は多摩湖周辺に出る異世界の虫を採取して大はしゃぎだったからな。疲れていたのだろう。
「元の時代かぁ……」
俺はなかなか寝付けなかった。
魔道具の修理には何日もかかるらしく、その間は巨大土管に泊めてもらっている。おまけに俺は異世界の上着まで頂戴した。いつまで裸でいるわけにはいかなかったので、非常に助かった。パンダモンド様々である。
一日の終わり。
俺達は夕食を終え、順番に風呂に入っていた。パンダモンドは風呂好きらしく、住居用の土管とは別に風呂用の土管がある。
多摩湖から汲み上げた水を魔道具で濾過・加熱してお湯にし、木製の湯船にはる。そこに浸かるのが一番の楽しみらしい。
「それにしても、面白い」
ニコが俺のスマホを電源にしてドライヤーを動かし、風呂上がりのパンダモンドの髭を乾かしている。
「ドライヤーがか?」
「いや、そのスマホとやらだ」
「あぁ、そっちか」
「スマホは面白いぞ! コメント欄が見れるからな!」
そう言ってニコがスマホを手に取り、コメント欄をパンダモンドに見せる。
「だ、誰がロリコンドワーフだ! 本当に過去の日本人は失礼な奴しかおらん!」
コメント欄の煽りを見て怒っている。パンダモンドは日本語が読めるらしい。
「パンダモンドはこのスマホに何が起きているか分かるのか?」
「いーや。わからん。ただ……」
パンダモンドは髭をしごいて勿体ぶる。
「ただ?」
「……そのスマホと魔法を組み合わせたら、お前は元いた時代に戻れる可能性がある」
「どういうことだ?」
取り乱しそうになるのを抑え、なるべく冷静を装う。
「そのスマホはお前のいた時代と繋がっている。時間を飛び越える管のようなもので」
「この地球が異世界と繋がっているようにか?」
「まぁ、それとはちょっと違うんだが、似てはいる」
ニコが不安そうな表情で俺を見ている。しかし、ここで話を止めるわけにはいかない。
「で、魔法を組み合わせるっていうのは?」
「単純な話だ。魔法でその時間を飛び越える管を広げるんだ。そこにルーメン。お前を放り込んだらどうなると思う?」
「……元の時代に戻る」
ニコが俺の手を握った。
「そういうことだ」
「パンダモンドはその魔法を使えるのか?」
「俺に無理だよ。俺には……」
そう言うとパンダモンドは立ち上がり、ロッキングチェアのところへいった。揺られながら眠るのだ。
一方の俺も揺れている。いや、揺さぶられている。突然示された、帰還の可能性に。
「……ルーメン」
ニコがこちらを見ていた。
「もう今日は遅い。寝よう」
「……うん」
土管の奥。倉庫スペースに敷かれた布団に入るとニコはすぐに寝息を立て始めた。今日は多摩湖周辺に出る異世界の虫を採取して大はしゃぎだったからな。疲れていたのだろう。
「元の時代かぁ……」
俺はなかなか寝付けなかった。