コメント:おっ、お前等、蜘蛛尻パイセンだぞ!
 コメント:蜘蛛尻パイセン、チィース!
 コメント:蜘蛛尻パイセンァァァイイイイ
 コメント:蜘蛛尻パイセンだぁぁぁー!!
 コメント:もう、男子! 馬鹿にしないの!!
 コメント:そうだぞ! ルーメン泣いちゃうぞ!!
 コメント:ルーメンの尻、白かったなぁ。
 コメント:プリンとしてたわぁぁ
 コメント:よくBANにならなかったな。
 コメント:蜘蛛の尻でBANにはならんだろ。
 コメント:いやーMADがはかどる!!
 コメント:同時接続十万人いってたもんね。
 コメント:おもむろに尻を出すルーメン
 コメント:尻から吹き出す輝く糸
 コメント:こんな倒し方ある!?
 コメント:なんにせよ、無事でよかった。
 コメント:おかえりルーメン
 コメント:もう、カメラ奪われるなよ
 コメント:ニコちゃん元気なの?
 コメント:次、どこ行くのー?

 く、蜘蛛尻パイセン……。ひどい。ひどすぎる。配信者を始めてから最大の屈辱だ。一体、この怒りを何処にぶつければいいんだ……。

「ルーメン、蜘蛛尻パイセンってどういう意味!?」

「なっ、こらっ! 勝手にスマホを覗くんじゃない!」

 渋谷駅跡での騒動の後、俺達は一度代々木公園跡に戻ってから北に進んでいた。

 少々歩き疲れ、新宿御苑跡で座っている時のことだ。

 久しぶりにスマホのインカメラで配信していると、肩口からニコが顔を出してコメント欄を読んだ。読んでしまった。

「ねーねー! 教えてよ!! 蜘蛛尻パイセンてなーに?」

「……お、俺の学生の頃のあだ名だ」

 口から出まかせだが、真実を語るよりいい。

「がくせい?」

「そ、そうだ。過去の日本には学校ってところがあって、同じ歳の人間が集まってみんなで勉強してたんだ。そこに通っている人間のことを学生と呼ぶ」

「へえええ! 面白そう!! がっこ!!」

「集落によってはやっているところがあるかもしれないぞ。学校」

「本当!? ルーメン、がっこを探しに行こうよ!! わぁはがっこに行ってみたい!」

 当てもなく放浪するのもいいが、ちょっとした目的があってもいい。

「よし。じゃあ、学校を探しにいこう」

「やったー! ルーメン大好き!!」

 ニコはガッコ! ガッコ! と言いながら跳ねている。

 その姿を見ていると、なんとか学校を探してやりたい気分になる。

 さて、この辺りで人間が拠点にしそうな建物はあっただろうか? 国立競技場は酷く破壊されていて、人影はなかった。他に……。

「メシを食ったら、都庁方面に行ってみるか」

「とちょう? わかんないけど、行く!! じゃあ、なんか虫とってくるねー」

 そう言って、ニコは走って何処かへ行ってしまった。捕まえてくるのが女郎蜘蛛でなければいいのだが……。