「茅野ちゃん。 卒業式のあと、あいてる?」

 陽之木くんが遠くの空を見つめながら言って、心臓がわかりやすく跳ねた。

「……あいてる」
「じゃあそのままあけといて」

 最後の挨拶でもされるんだろうか。
 もしマリナちゃんが陽之木くんの彼女になったら、私との関係をはっきりさせとかないと角が立つだろうし。

 私はまた一粒お菓子をつまんだ。

 陽之木くんは気まぐれ。
 きっと私も、この美味しいお菓子と同じように躊躇なく譲られてしまうぐらい、彼にとって気まぐれな存在なんだろう。
 私は憂鬱な気持ちを飲み込むように、お菓子をまた一粒口にした。
 
 
 そしてその翌日。
 陽之木くんが事故で死んだ。