そっか。

「行けばいいんだ」

 私が、会いに。

「ふ……はは」

 なんでこんな簡単なことに気が付かなかったんだろう。
 爽やかな空に吸い込まれるようにして立ち上がれば、喉の奥にあった苦しいものが一気になくなって、呼吸がしやすくなった。
 空はもう赤い夕焼けを連れてきている。
 あぁ、急がないと。

 柵の方に近付いてみれば、気分が高揚して息が上がるのを感じた。
 柵の上に手をのせて、下を覗き込んでみる。
 かたそうなアスファルト。 桜の木にぶつからないように行けば、大丈夫そうだ。
 よかった。 これで会える。
 陽之木くんが、この柵の向こう側にいる。

 ――すげぇ会いたい

「……うん」

 私もだよ。 陽之木くん。

「いまそっち、行くから、ね」

 声が震えたのは嬉しくてか、緊張からか、恐怖からか。
 バクバクと高鳴る心臓の音を無視して、私は柵の上に片足を乗せて身を乗り出した。