「……どうしてくれるの」

 もうとっくにキャパオーバーだったそれが、一斉に外に出ようと押し寄せた。

「っ、会いたくなっちゃったじゃん……っ」

 理不尽な現実、戻れない過去、今更自覚した強い想い。
 その全てに苛立った私の、醜く掠れた声が穏やかな時間を切り裂いた。

「『会いたい』って……っ、ふざけんな……! 私の方が100倍会いたいよ!! でも無理じゃん、会えないじゃん、陽乃木くん死んじゃってるじゃん……っ」

 陽之木くんはもう、いない。

「っ、集合って言うから、行ったのに……っ」

 大好きでも、会いたくても、もういない。

 だからなくそうとしたのに。
 どうしようもないから、なくそうとしたのに。
 溢れ出してしまったこの気持ちは、もう閉じ込めておけない。

「どこにいるの……」

 もう嘘ついたりしないから。
 逃げたりしないから。
 卑屈になるのもやめる。
 素直になんでも言える人になる。
 だから、教えてよ。

「ねぇ、どこ……?」

 好き。 好き。 陽之木くんが好き。

 ……でも、すべてが今更で、もう遅い。

「ごめんなさい」

 陽之木くん。
 嘘つきなんて言ってごめんなさい。
 逃げてばかりでごめんなさい。
 信じてあげられなくて、ごめんなさい。

「ごめんなさい……ごめんなさいごめんなさい、ごめんなさい」

 神様。 ごめんなさい。 本当にごめんなさい。
 お願いです。
 もう一度彼に会わせてください。
 もうこんな世界、耐えられません。
 陽之木くんがいない世界なんて、耐えられません。
 会いたい。
 陽之木くんに、

「っ、会いたい」

 そして、ぐちゃぐちゃになった顔で縋るように見上げた柵の向こう。
 高くて青い三月の爽やかな空と、目があった。

「…………あ」

 そして私は、気づいてしまった。