突然の宣言に、胸の奥の方がギュッと締め付けられて熱くなる。

「一番は、めっちゃ頑張り屋なところ。 初めて茅野ちゃんに会ったときは、俺の周りにいないタイプだったから、なにこの子可愛い、おもしろー、くらいなノリで絡んでたんだけど……知れば知るほど何事にも一生懸命な子なんだなってわかってきた。 受験も、体の弱いお母さんを将来ラクさせてあげたいからいい大学に入ろうって、でもお金がないから塾とか行かずに一人で、一生懸命勉強してたよね。 すげぇなって思ったよ。 結果は茅野ちゃんの思うようにはいかなかったかもしんないけど……俺は、茅野ちゃんのその根っこの強さがあれば何があっても大丈夫なんじゃねぇかなって思う。 茅野ちゃんはなんていうか、うん……俺が今まで出会ってきた人の中でダントツ、一番かっこいい人なんだよ。 だから俺も茅野ちゃんに負けないかっこいい男になりたくて、将来のこと真面目に考えたいって思うようになった。 それでやっぱバスケしかないって思って熱入れて練習するようになって、おかげで大学推薦も貰えて……たぶん茅野ちゃんがいなかったら、こうはならなかった。 茅野ちゃんが俺の世界をひっくり返してくれたんだ」

 陽之木くんはずっとこちらに向けていた目を一度頭上に向けて、軽く白い息を吐いてから、また私と目を合わせる。

「茅野ちゃんがこれを見てる時にはもう卒業式も終わって、そっからはいつもの場所で会えなくなるけど……俺はこれからも当たり前に会える存在でいたいし、あわよくば特別な存在になりたい。 だからね」

 陽之木くんのまっすぐな目にからめとられて、心臓がドクンと大きく高鳴った。

「だからこの動画見て、もし茅野ちゃんが俺のこと信じられるって思ったら……付き合って欲しい。 陽之木くんと茅野ちゃんじゃなくて、翔とくるみになり、たい」

 陽之木くんは言ってる途中で恥ずかしくなったのか、右手の甲を左頬にあてて口元を隠すような仕草をする。 そして気を取りなおすように咳払いすると、もう一度私に向き直った。

「……えー、茅野くるみさん。 好きです。 めーっちゃ好きです。 疲れたなってときとか、幸せだなってときとか、あと泣きたくなるようなときも……茅野ちゃんに会いたいなって思うんだ。 いまも、すげぇ会いたい」

 〝会いたい〟

 私は、小さな画面越しに照れ笑いする陽之木くんに触れようと、手を伸ばした。

「伝わったかな。 伝わってるといいな。 ……うん。 ……あっ、改めて誕生日、と、卒業も! おめでとう! それじゃーそっちにいる俺に返します! バイバイ!」

 陽之木くんは最後に笑顔で手を振って、その手をこちらに寄せて画面を真っ暗にした。
 ほどなくして再生ボタンが現れ、動画が終わる。