「俺たちが茅野先輩に近付こうとすると翔先輩、めっちゃくちゃ怖い顔するんすよ」
「あ! それ言っちゃいけないやつ」
「ボウリングのときなんか茅野先輩の前ではかっこつけてましたけど、俺たちずっと〝邪魔すんじゃねーぞ〟って睨まれてて。 別に邪魔するつもりなかったっすけどね」
「あはは、あの時翔先輩の必死さが伝わってきたよな」
「あと、茅野先輩の両手投げ! 翔先輩めっちゃ動画盗撮してた」
「はい、盗撮は犯罪でーす」
「はは!」
「まぁなにが言いたいかって言うと、俺たち茅野先輩からしたら感じ悪かったかもしんないですけど、全部あの先輩のせいですから!」
「あーあーお前ら全員あとで翔先輩にボコられるぞー」
 
 やべー!とか言いながら、やっぱりみんな楽しそうに笑っている。
 そこで陽之木くんがシュートモーションに入って、場が静まり返った。
 そして放たれたボールが先ほどと同じ軌道を描いてゴールに吸い込まれると、場内が沸き立った。
 盛り上がるバスケ部の仲間たちをよそに陽之木くんは真剣な表情を崩さず、集中力を高めようとふー、と息をつく。
 その空気につられてか、みんなの私語は減り、陽之木くんはシュートをひとつひとつ丁寧に決めていった。
 三本、四本……五本。
 そして陽之木くんは、見事に全てのシュートをゴールに入れた。