再生ボタンを押すと、ちょうど陽之木くんがボールを額の前に掲げたところで、それまでのゆるい空気が一変したのが伝わってきた。
 緊張感に包まれる中、陽之木くんがシュートを放つ。
 そのボールはきれいな放物線を描き、吸い込まれるようにしてバスケットゴールに入った。
 すると、ウオー!と盛り上がる声援と拍手喝采で、ブツブツと音割れがした。

「かっけー!」「いいぞ翔ー!」

 陽之木くんがボールを取りに行こうとすると、近くにいた部員が先に拾って陽之木くんにパスする。

「俺、こないだ試合でミスって交代させられた時にさぁ」

 近くでおもむろに誰かが話し始める。

「〝挽回してくるから次の出番用にからだあっためとけ〟って翔先輩に言われたの、正直惚れたわ。 それで本当に挽回してくれて、また出番まわしてくれたからね」
「あ、俺入ったばっかのとき、コーチにめちゃくちゃ叱られて泣きそうになって、翔先輩にタオルで頭わしゃわしゃーってされてどんまいどんまい!って励ましてもらったことある。 そんときは泣いたし惚れた」

 みんな惚れてんじゃん!って誰かが言って、またみんなで笑う。
 ……陽之木くんらしいな。

「茅野先輩。 ここだけの話」

 突然依田くんがカメラに向かって声をひそめた。