〝マリナ〟という名前に、嫌な意味で心臓が跳ねた。

「あ、おい! マリナ先輩はダメだって」
「え? なんで?」
「フフ、私こないだ翔にフラれたばっかりだからねー」
「え!?」
「おま、バカ! まじで!」
「すいません! マリナ先輩! すいません!」
「あはは、大丈夫だよ! 告白したのもダメもとだったし。 んー翔のかっこいいところか…… 強いて言うなら、〝一途なところ〟かな」


 私は、とっさに一時停止ボタンを押した。
 これ以上見たらいけない気がした。
 息の仕方がわからなくなって、ヒューヒューと喉が鳴った。
 怖い。 嫌だ。 聞きたくない。
 これ以上知りたくない。

 私は耳を塞いで、目をギュッと閉じた。


 ――逃げないでください

 
 依田くんの切羽詰まった表情を思い出して、目を開けた。
 画面の中、真剣な顔でゴールを見つめる陽乃木くんがいた。

 私は震える手でスマホを拾い、大きく息を吸って、吐いた。