画面をふさいでいたらしい誰かの手が映った。 陽之木くんの手ではない。 その手が離れるとそこは体育館のバスケットコートで、画面左端にボールを持つ陽之木くんが右端にあるゴールと向き合う形で立っていた。

「お前ら見てなくていいから! 帰れ帰れ」

 コートの外にいるらしいバスケ部の仲間に、陽之木くんが笑いながら文句を言っている。

「あはは! 応援してやるって!」「キャー頑張って陽之木くーん!」

 バスケ部の仲間たちが、裏声で女の子の声マネをしたり、楽しそうにヤジを飛ばす。

「あー最悪、やりづれー」

 陽之木くんは呆れつつ笑っている。
 そのやり取りの温度感で、陽之木くんがいかにバスケ部の人たちに愛されてるかが伝わってくる。
 陽之木くんがボールを床に何度かついて集中し始めると、一番近いところで声がした。

「どーもー。 後輩の依田でーす」

 依田くんは、例の抑揚のない声で話し始めた。

「えー、これから始まるスリーポイント五本勝負、翔先輩に撮影しろって押し付けられました。 ついでに陽之木翔のかっこいいところ百個言っとけって命令されましたー」

 依田くんの近くにいるらしい人たちの笑う声がした。

「なんかある?」
「百個は無理ゲー」
「顔がいいとか?」
「それはみんな知ってる」
「すげぇ先輩風ふかしてくる!」
「あはは、それ褒めてねー」
「マジレスすると、なんだかんだ優しいよな」
「なんだかんだ」

 またみんなが一斉に笑った。
 先輩に対してみんな容赦ないのは、陽之木くんの人柄だろうか。

「あ。 マリナ先輩ー! 翔先輩のかっこいいところってどこですかー」