新校舎と旧校舎をつなぐ二階の渡り廊下は、校舎のせいで陽も入らないから暗くて寒い。 それでも私たちは雨が降らない限り、いつもここにいた。 暑くても寒くても、ここにいた。 だから私たちはここを『いつもの場所』と称して、お昼休みになると暗黙の了解でここにいた。
 そんな私たちの関係性に、名前はない。

「あ。 おしくらまんじゅうしない?」
「しない」

 速攻で断った私に、陽之木くんがレシーブエース、とぼやくのが聞こえた。
 寒いからおしくらまんじゅうって。 やっぱりバスケ部の陽キャと帰宅部の陰キャでは考えることが180度違う。

「ちーのちゃん」

 バスケ部の陽キャが帰宅部の陰キャの隣に来て、その顔を覗きこませた。
 顔の造りがいいとよく話題になる陽之木くんの、いまこの瞬間を切り取ってSNSに投稿したらイイネがたくさんつきそう、なんてどうでもいいことを考える。

「好きだよ」

 陽之木くんは、いつもそうだ。
 唐突に、なんの前置きもなく、なんのとっかかりもなく告白をする。

 ――陽之木くんってマネージャーのマリナちゃんと両想いらしいよ

 これは、最近よく耳に入ってくる噂話。

「……嘘つきは嫌い」
「俺がいつ嘘ついた?」
「今」