それから私と依田くんは、なにか会話をすることもなく、淡々とボールを投げ合っていく。 ジグザグにぶつからせながらピンを倒す私と、ガーターに次ぐガーター、たまに免れて二、三ピンだけ倒す依田くん。 本来0点のはずの私の方にばかりスコアが重なっていって、なんだか申し訳なくなってくる。

「あの……そっちもガーターなしにしてもらう……?」
「いえ。 自分は翔先輩の代打なんで」

 そう言ってまた助走ラインに立った依田くんの背中が、急に陽之木くんの背中と重なった。
 陽之木くんは、ボウリングがとても上手だった。 きれいなフォームで投げられたボールはどれもまっすぐピンの方に吸い込まれていき、モニターにはストライクやスペアを祝うムービーが何度も流れた。
 情けない自分との圧倒的な差を感じた、その時のイガイガとした感情が蘇る。
 尖りそうになる唇をごまかすように水筒を取り出して口をつけた。

「俺、フォームだけは自信あるんスよ」

 ボールを持って構える依田くんが、こちらに背を向けたまま突然話し出したので、慌てて口の中のものを飲み込んだ。

「っ……あ、うん、とってもきれいだと思う」
「翔先輩が教えてくれました」