私のターンが終わると、依田くんは特にコメントすることもなく立ち上がり、自分のボールを持ってファウルラインより手前でボールをかまえた。お手本のようにきれいなフォームで助走をつけて勢いよくボールをレーンの上に滑らせた。
 すると間もなくゴツン、ボールは左端の隙間に入りこんだ。
 ガーターだ。 スコアに0が表示される。

「……」

 依田くんは特にリアクションすることなく、次のボールを取りに行く。
 続けて同じようにキレイなフォームから放たれた依田くんのボールは、またしてもガーターに吸い込まれた。
 私は唖然とした。 バスケ部の人はよくここに来てるらしかったから、みんな上手なんだろうと勝手に思っていた。
 そしてなにより、どうして思い切りガーターを出したのにそんな堂々としていられるのかわからなかった。

「次、どうぞ」

 依田くんはさも当然かのようにしていて、恥ずかしがる様子もまったくない。

「え、あ、はい」

 拍子抜けした私は、緊張で強張っていた体の力が抜けるのを感じた。