「未奈ちゃん行くにゃ」

 最後にそっと、未奈ちゃんの手に触れる。

「ありがとうにゃ」

 そして僕は空へと続く光の筋を歩いていった。長い坂道をゆっくりと上っていく。やっぱりまた白猫が迎えにきてくれた。頬を優しく擦りよせてくる。一緒に上っていく。振り向くと小さくなっていく世界が眼下に広がっている。小さく、小さくなっていく。

「未奈ちゃん……」

 全てが夢まぼろしのように消えるとしても。
 心に一つ、未奈ちゃんとの暖かい想いを持って。
 確かに消えぬ想いを持って。
 
 全てが夢の夢だとしても。
 確かに消えぬ想いを持って。
 僕は行くよ。
 だから心配しないで。

 未奈ちゃん、僕はちゃんと生きたよ。

 未奈ちゃんに助けられ生きたよ
 未奈ちゃんと一緒に生きたよ。
 うん。生きた。

 光が強くなって僕を包み込む。
 僕が僕で満たされて光の中に溶けていく。
 世界の中に溶けていく。
 全ては溶けて、夢の間に消えるとしてしても、確かに消えぬ想いだけは残る。

「ありがとう。あいしてるにゃ……未奈ちゃん」


Fin