私は小説が好きだ。自分の見えない世界が見える。車や森、空に海。すべての描写が私の見えなくたった目に光を宿す。
目が見えない私が小説を読めている理由は単純だ。点字があるからだ。点字は私を救ってくれた。事故で見えなくなったあの日から、絶望する日々。今が何時なのか。晴れているのか。人の顔も自分の顔も、何もかもわからない。私は生きる屍だ。
事故の日は七夕の夜。きれいな天の川と自分の血。すべてが非現実で脳裏に焼き付いた。7月7日、私は視界を失った。7月7日は私の誕生日だ。私は誕生日が大嫌いだ。