「ごめん。つい」

「つい、って……」

「初めて清水が、俺と2人きりのときに笑ってくれた気がして。清水の笑顔に、なんか……こう、めちゃくちゃグッ、ってきて。我慢出来なかった。本当にごめん」



すると、服部くんが私を覗き込む。

堪らなく、不安げな表情で。



「怒った……?」



私は無言で、首を横に振った。

そんな私に服部くんは、緊張で顔を強張らせながら言った。



「俺が好きなのは、清水だよ。ずっと」



信じられなくて、でも嬉しくて、胸がぎゅうっと鷲掴まれる。

未だに声が出せそうもない私を見て、困ったように笑う。



「順番、間違えた。本当にごめん」



そして、大きな腕で、私をそっと包み込む。



「これも嫌だったら、突き放してくれないか」



彼にしては弱気なことばかり言うのが、意外で。

耳元で聞こえる声が、空気を揺らしているから、夢じゃないんだと知らせてくれる。

おさまっていた涙が、次は嬉しさで滲む。

嫌な訳ない。

私は彼の腕の中で、静かに、横に首を振った。



「良かった……」



その声に合わせて、彼の腕の力が強まる。



「なぁ」



呼び掛けに応える為に、少し見上げると、彼の優しい瞳が私を捕らえる。

たった今、彼は私だけを見つめてくれている。

同い年だし、可愛げも無いけど。



「そろそろ、清水の気持ちも聞かせて」





わかってるよ、どうせ
おわり。