一瞬、思考が停止する。
「待って。おかしいよ」
「何が、どうおかしい?」
「だって、私、年下じゃないし……」
「だから……! 俺、年下しか無理みたいなフェチ無いから」
「あんなに、年下追いかけてたのに?」
「追いかけた覚えは無い」
「中高生にたくさん賄賂、配ってたくせに?」
「ただの差し入れだって!」
真っ赤な顔で一生懸命、否定する服部くんには、いつもの余裕なんて微塵も無くて、可愛く見えた。
思わず、笑ってしまう。
しかし、吹き出した後で、この話題で笑うのは失礼かもしれないと、気付く。
フェチではないにせよ、自分の好きなことを笑われるのは、気分の良いものではないはずだ。
「ごめ……」
服部くんが静かになってしまったのは、怒らせてしまったからだと思い、顔を上げたとき。
視界が、真っ暗になった。
何が起きているか、考えている間にも、睫毛が触れて──。
顔が離れる。
「え……?」
数秒経ってから、ようやく状況を把握する。
柔らかい感触を思い出し、唇に残る甘い余韻が疼く。
それが導火線となり、顔がぼうっと音を鳴らして、一気に燃え上がった。
「え……え、今」
私が狼狽えてしまうと、服部くんも真っ赤なまま、口元を押さえた。