私の声は完全に消え去り、遠くの方からお花見を楽しむ人たちの音が聞こえてくる。

空を仰ぐと、背後から物音がした。

恐る恐る振り返れば、そこには服部くんが立って居た。

みんなのところを抜け出して、また、1人の私のところへ来てくれた。

面倒見が良いからだ、と自分に言い聞かせる。

しかし、服部くんは、そこから動こうとしない。

それよりも、いつからそこに居たんだろう。

もしかしたら、私の独り言も聞かれてしまったかもしれない。

聞かれてしまったのなら、もう、それはそれで良い。



「あ、の……さっきはごめん。変な空気にしちゃって」

「いや? それより、落ち着いたか?」

「うん」

「そうか……なぁ、ちょっと隣行ってもいいか?」

「え、ああ、うん、どうぞ?」



いつもなら何のお構いも無しに、近くに来て、助けてくれるくせに。

服部くんは私の隣まで来て、私が思っていたよりも、かなり近い位置にしゃがむ。

その距離は近すぎて、肩を掠める程だ。

あまりにも恥ずかしくて、慌てて、顔を隠すように逸らした。

違う方向の景色だけが見える。

服部くんが、何かを言う気配は無い。

沈黙が怖くなり、彼の表情をチラッと窺う。

すると、伏し目がちな彼に、また胸が高鳴った。

見惚れていると、服部くんと口元が動く。



「なぁ」

「は、はい?」

「ずっと、聞きたかったんだけど……清水ってさ、俺のこと、もしかして苦手?」

「え」

「正直に」