私の頬に、一筋の雫が伝う。
はじめ、雨が当たってきたのかと思ったが、違ったようだ。
手で触れてようやく分かる。
無意識だった。
私の強がりも、最後まで貫けなかった。
自分でも思わぬことに、挙動不審になり、慌てて袖で拭う。
「あ、あれ……?」
自分でも訳が分からなくなっていると、椿ちゃんがゆっくりと抱きしめてくれた。
「つ、椿ちゃん? あの、本当に何でもなくて……」
言葉と一緒に、涙がまた次から次へと零れる。
「清水先輩……」
彼女は眉をハの字にして、本当に心配してくれている。
何だか、変な感じだ。
彼の想い人に慰められている。
椿ちゃんの温もりに、ますます泣けてくる。
単純に優しさに甘えているのか、もしくは彼から好かれている、という事実を羨むところからくるものなのか。
頭の中で、ぐちゃぐちゃに掻き混ぜられていくのが見えた。
――私、今、ここに居たら、いけない気がする。
この雰囲気を作り出した話の種は「私」なんだ。
このままここに居ると、醜態をさらし続ける上に、みんなにもっと気を遣わせてしまう。
せっかくの楽しい場であるのに。
居たたまれない。
そう思って、慰めてくれた椿ちゃんにお礼を呟いて、努めて優しく突き放す。
これ以上、誰かを悩ませない為に。
「……失礼しました。ちょっと頭、冷やしてきます」
「あっ、先輩」
椿ちゃんは呼び止めてくれたが、本当に1人になりたくて、それを無視した。