確かに、私は服部くんが好きです。

誰でも良いわけじゃないみたいです。

仮に想い人を忘れるために、先程の直江くんの告白を受けていたら、直江くんでいいや、なんて思っていたら、何より直江くんに失礼だ。

今更になって、直江くんが苛立っている理由を理解した。

本当に今更。

報われないと知っていて、覚悟を決めて、気持ちを伝えることを選んでくれた直江くん。

辛いはずなのに、それでも私を叱ってくれている。



「ごめん……」



また、声が震える。

顔を上げても、直江くんの表情は見えない。

そして、少しの沈黙の後、直江くんは小さく短く息を吐いた。



「俺は、謝ってほしくて言ってる訳じゃないんですよ」



呟くように言うと、手元の缶を呷る。



「うん……」



それ以上、返せる台詞が浮かばない。

その上、椿ちゃんも服部くんすら、一言も発さないものだから、私たち4人を囲う空間だけが不思議なくらいに、静寂に包まれた気がした。

私も勇気を出して、砕けた方が良いのかな。

それで、気持ちを割り切れるようになるのかな。

考えてみても、先が見えなくて、怖じ気づいてしまう。

椿ちゃんの向こう側の服部くんの顔を、少しだけ覗き見てみる。

すると、ちょうど缶に口を付けようとしていた。

唇が缶に触れるか、触れないかというところで、彼の動きが止まる。

そして、ついに目が合った。

私の中で、ドキリと音がした。