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椿ちゃんが提案してくれたお花見は、予想以上に盛り上がっていた。
辺りもすっかり薄暗くなり始め、満開の桜の木に連なって掛けられた提灯は、仄かに灯りが灯っている。
「うふふー、やっぱりお祭り事って、楽しいですねー。こういう雰囲気を味わうのが、良いって言うかぁ」
「……椿ちゃん、お酒、飲んでないよね?」
場の雰囲気に呑まれ、すっかり赤くなった椿ちゃんの姿に困惑しつつも、正直なところ、私も十分に楽しんでいた。
しかし、不思議なことに、私の隣は直江くんが陣取っている。
「直江くんは、いいの? 友達と飲まなくて」
すると、不機嫌そうに私を一瞥した。
「今日は、ここが良いんです。なんか悔しいので」
直江くんの赤く染まっている頬を見ると、先程のこともあり、少々気まずい。
苦笑いをして、視線を逸らす。
そんな不自然なやり取りを椿ちゃんは見逃さなかったようだ。
表情が若干、私たちをからかっている。
「清水先輩? もしかして、直江と何かありましたか?」
曖昧だからこそ、ある意味で的を射ている、その尋ね方に冷や汗が垂れた。
「えっ、いや、何にもな――」