「ええ! そんな! 清水先輩も一緒に、買い出し行きましょう!」
「あ、あんまり、ぞろぞろ行くのも良くないだろうし。ほら! それに良い場所は、他の人に取られちゃうかも」
――それに、私にお呼びは掛かってないし。
これが俗にいう、拗らせ女子と云うやつか。
自分自身を心底、面倒臭いと思った。
何度も湧き上がる醜い感情の翳りだけは、静かに押し込める。
みんなが楽しんでいる雰囲気を壊してはいけない。
とにかく笑わなきゃ。
「せっかくなら、一番良い場所で桜、見たいよね……!」
何かと勘の鋭い椿ちゃんは、前々から何かを察しているのか、また私を気遣ってくれている。
その証拠に、私の名前を口にしかけた。
しかし、それを服部くんが遮る。
「女子1人は、危なくないか?」
まさか服部くんが、そんなことを言ってくるとは思わなかった。
関心は無くても、私を女子だと心配してくれるらしい。
少し複雑な気分だ。
本当にそういうところが、狡い。
「気持ちは有り難いが、1人でわざわざ行かなくていい。みんなが揃ってからでもいいから」
やや強めの口調で言われ、ムッとする。
「平気。まだ明るいし。そんな心配される年でもないよ。知らない人にはついて行きませんので、ご心配なく」
「俺が言いたいのは、そういう事じゃなくて――」
「だったら……」
服部くんの声に被せて、誰かが言った。
私の隣には、椿ちゃん。
声が聞こえた、更にそのもう1つ向こうを覗き込むと、直江くんが控えめに手を挙げていた。