私のことなんて1ミリも気にしてないと思ってた。
麻倉君の意識の中には私なんて存在しないって……そう思ってたのに。


「最後の1年、よろしくな」


だから、そんな顔しないでほしい。
優しく微笑むその顔に、今まで何度キュンとさせられただろう。


私は、遠くからその笑顔を見ていられるだけで良かったのに――


「あのさ……麻倉君、何も用が無いなら……」


「湊」


「えっ?」


「ずっと同級生なんだから、湊でいいって」


「そっ、そんなの急に無理だから」


「中学の時から周りはみんな湊って呼ぶのに、お前だけ『麻倉君』だったからな。もしかして俺、嫌われてるのか?」


美し過ぎるその瞳に吸い込まれそうで……
直視できずに思わず顔をそらせた。


「き、嫌いとかじゃない。でも……よくわからない」


嘘だよ。
わからないなんて。


「嫌いじゃないなら別にいいだろ? 湊でも」


この高揚する気持ち、もう耐えられない。