「ずっと疑問だった。どうして湊君は私なんかに、こんなにも優しくするの?」


抱きしめたまま、俺はその答えを口にする勇気を必死に湧き上がらせた。


「桜のつらい顔、見たくないから。言っただろ? 俺は、お前の笑顔が好きだって」


「湊君……」


「俺、桜のことが……好きだ」


ずっとずっと長い間閉じ込めていた俺の想い。
勇気と共に胸の奥の方から溢れ出してきて、するりと口元からこぼれ落ちた。


「えっ……嘘だよ、そんなの」


「嘘じゃない。中学の時、決して側に寄ってこないお前のこと、俺はいつも離れた場所から見てたんだ」


「そんなの嘘だよ。湊君の周りにはいつだってたくさんの女の子がいたし、彼女だって……いっぱいいっぱいいたんでしょ?」


抱きしめる腕を緩め、桜の顔を見る。
涙の跡が頬に残って……
俺は、やっぱりこの顔が1番好きだと思った。
誰よりも可愛くて、優しいこの顔が。


目の前にいる桜のことが、俺はどうしようもないくらい愛おしかった。