「えっ……」


「リハビリすれば歩けるようになるんだよな、あいつの足」


少し黙ってから、桜はゆっくりとうなづいた。


「確かに、お医者さんはそう言ってくれた。でも……何度言っても夢はリハビリしてくれなくて」


「どうして?」


「仕方ないんだよ。だって……私のせいで夢の足は……」


桜は震えてる。
雨で気温が下がっているせいか?
いや、違う。
怯えてるんだ。
ずっとずっと、1人で何かに怯えてる。


「何があったかは知らない。でも、何かの事故で怪我をしてしまったとして、それをお前がずっと引きずる必要はないだろ?」


下を向いたまま、桜は顔をあげない。
スカートに乗せていた自分の両方のこぶしに、ギュッと力を込めた。


春野が言ってた「桜が押した」って、あれは何かの間違いだ。
わざと、桜が春野にそんなことするはずないから。


「とにかくさ、大事なのは、桜と春野、2人ともが笑顔になれることだ。ニセモノじゃなくて、ホンモノの笑顔を取り戻さないと……」