「止めてよ! 聞きたくないよ。好きな人って、どうせ桜なんでしょ? この前の感じでわかった。私は『春野』なのに、桜のことは名前で呼んで」


「……気持ち、隠しても仕方ないよな。春野の言う通りだよ」


まさか、ここで自分の気持ちをさらけ出すなんて思ってもみなかった。


「みんなそうだよ。お父さんもお母さんも、いつだって優秀な桜を褒めてばかりで、普通の学力の私には適当な言葉しかくれない。私だって一生懸命頑張ったけど、到底、桜や湊君と同じ高校には行けなかった」


「そんなことないだろ? いつも参観や運動会とか、おじさんもおばさんも来てたし、お前ら2人のこと、ちゃんと応援してくれてただろ?」


「……知らない。別にどうでもいい。みんなみんな……湊君まで、私のこと見てくれない。可愛いのはいつも桜。お姉ちゃんだけ」


パジャマの胸の辺りを掴み、春野は泣いた。