「あっ、あのね。たまたま3年になって同じクラスになってね。うちのクラス、仲良くなるために、みんなを名前で呼び合ってるんだよ。それにしても、跡をつけてくるなんて、そういうの……止めてほしい」


それは、嘘だ。
クラスみんなが名前で呼び合ってるなんて、そんなことあるはずない。
俺が名前で呼んでるのは……


「勝手に着いてきたことはごめん。でも……」


その続きの言葉が出てこない。
ハッキリと「桜のことが心配で」って、なぜか言えなかった。


「別にいいじゃない。私は久しぶりに湊君に会えて嬉しいし。桜と湊君が同じクラスなんて知らなかったよ。言ってくれればいいのに」


「えっ、あっ、ごめん。でも、湊君とはあんまり話したこと無かったし、わざわざ言うこともないかなって」


「そうなの? ふ~ん。ねぇ、湊君。湊君って彼女いるの?」


その質問に少し驚いた。


「えっ、いや、いないけど」


「そうなんだ。久しぶりに会っても湊君はやっぱりイケメン王子様だよね。彼女いないなんてびっくりだよ。中学の時も特定の彼女いなかったし、どうして作らないの?」