「白い髪も赤い目も変わりませんし、強いていえば……いえ、なんでもありません」
恥ずかしそうに口ごもった白花の顔を荒日佐彦は不思議そうに覗き込む。
「どうした? 『強いていえば』と言っておいて『なんでもありません』はないだろう? 言ってくれ。俺が気になる」
「……笑いません?」
うん、と荒日佐彦が真顔で頷いたのを確認した白花は、キュッと目を瞑り決心して口を開く。
「に、肉付きが……よくなって……その、太ったんです……!」
「……そ、そうか……い、いや、ここにくる前が痩せすぎだっただけだぞ……白花は……っ」
そう、言ってくれた荒日佐彦だが、白花から顔ごと逸らし、体を震わせている。
「明らかに笑いを堪えていますでしょう……?」
「いや……そんなことで憂いている白花が可愛くて……っぶっ」
「もう……っ、なら思い切りお笑いになってもらった方がいいです!」
ぷうと拗ねた白花だったが、すまんすまんと肩を抱き寄せられてあっという間に機嫌を直してしまう。
自分はなんて単純なんだろう、と思いながらも荒日佐彦の温もりに逃れられずそっと頭を彼の胸に付ける。
こんな風に相手に甘えたことも寄り添ったこともなかった白花は、荒日佐彦の愛情に最初、どうやって応えていいかわからなかった。
彼の手を握り返していいのだろうか?
自分を見つめる彼の瞳に、同じように見つめ返していいのだろうか?
白い髪を撫で、愛しいと囁く彼に自分はジッとしているだけでいいのだろうか?
自分と一緒に食事を摂って、嫌な気持ちにならないのだろうか?
……痩せた体を抱いてつまらないと思わないのだろうか?
荒日佐彦が誠実に自分と向き合ってくれていることは、初夜で十分に理解した。
だからこそ自分も、彼の誠実さに誠実で返そうと思った。
けれど――彼を愛せば愛するほど不安になっていく。
いつか自分は彼に飽きられて、捨てられてしまうのだろうか?
捨てなくても実家にいたときのように、虐げられ使用人のように扱われ、目の前にいるなと叩かれるのだろうか?
神様だからきっと自分の気持ちなどお見通しだろう。
こんな相手の好意を恐れる自分など、いずれ嫌われて捨てられる――いや、それが当たり前なのだ、という感情がグルグルと自分の胸を回っていた。
愛されることなど期待してはいけない。
自分が彼を愛せば、それで十分だ。
そう覚悟して一年。
荒日佐彦は変わらず、いや日に日に自分への愛の密度が、濃くなっていくように思う。
例えば、甘くて美味の砂糖菓子を与えられているようで白花は毎日幸せを感じていた。
そうして白花はここにきて自分の意見も言えるようになり、ちょっとした冗談も口にするようにまでなった。
毎日笑い、栄養のあるものを十分に食べて、実家にいたときはできなかった読書など自分のための時間も作れて。
傍には愛してくれる相手がいる。
自分の彼への愛もますます深まって、彼のために命をも捧げても構わないとさえ思うようになっていた。
恥ずかしそうに口ごもった白花の顔を荒日佐彦は不思議そうに覗き込む。
「どうした? 『強いていえば』と言っておいて『なんでもありません』はないだろう? 言ってくれ。俺が気になる」
「……笑いません?」
うん、と荒日佐彦が真顔で頷いたのを確認した白花は、キュッと目を瞑り決心して口を開く。
「に、肉付きが……よくなって……その、太ったんです……!」
「……そ、そうか……い、いや、ここにくる前が痩せすぎだっただけだぞ……白花は……っ」
そう、言ってくれた荒日佐彦だが、白花から顔ごと逸らし、体を震わせている。
「明らかに笑いを堪えていますでしょう……?」
「いや……そんなことで憂いている白花が可愛くて……っぶっ」
「もう……っ、なら思い切りお笑いになってもらった方がいいです!」
ぷうと拗ねた白花だったが、すまんすまんと肩を抱き寄せられてあっという間に機嫌を直してしまう。
自分はなんて単純なんだろう、と思いながらも荒日佐彦の温もりに逃れられずそっと頭を彼の胸に付ける。
こんな風に相手に甘えたことも寄り添ったこともなかった白花は、荒日佐彦の愛情に最初、どうやって応えていいかわからなかった。
彼の手を握り返していいのだろうか?
自分を見つめる彼の瞳に、同じように見つめ返していいのだろうか?
白い髪を撫で、愛しいと囁く彼に自分はジッとしているだけでいいのだろうか?
自分と一緒に食事を摂って、嫌な気持ちにならないのだろうか?
……痩せた体を抱いてつまらないと思わないのだろうか?
荒日佐彦が誠実に自分と向き合ってくれていることは、初夜で十分に理解した。
だからこそ自分も、彼の誠実さに誠実で返そうと思った。
けれど――彼を愛せば愛するほど不安になっていく。
いつか自分は彼に飽きられて、捨てられてしまうのだろうか?
捨てなくても実家にいたときのように、虐げられ使用人のように扱われ、目の前にいるなと叩かれるのだろうか?
神様だからきっと自分の気持ちなどお見通しだろう。
こんな相手の好意を恐れる自分など、いずれ嫌われて捨てられる――いや、それが当たり前なのだ、という感情がグルグルと自分の胸を回っていた。
愛されることなど期待してはいけない。
自分が彼を愛せば、それで十分だ。
そう覚悟して一年。
荒日佐彦は変わらず、いや日に日に自分への愛の密度が、濃くなっていくように思う。
例えば、甘くて美味の砂糖菓子を与えられているようで白花は毎日幸せを感じていた。
そうして白花はここにきて自分の意見も言えるようになり、ちょっとした冗談も口にするようにまでなった。
毎日笑い、栄養のあるものを十分に食べて、実家にいたときはできなかった読書など自分のための時間も作れて。
傍には愛してくれる相手がいる。
自分の彼への愛もますます深まって、彼のために命をも捧げても構わないとさえ思うようになっていた。