「おおおおおぉぉぉぉぉ――――っ!」
黒曜の精霊剣・プリズマノワールによる、激烈なる不意の一撃を、
「精霊騎士ハルト・カミカゼ! 貴様どういうつもりだ!」
しかし勇者は、聖剣でもって強引にはじき返した。
「やるな!」
それを見て思わず俺の口からは称賛の言葉が漏れ出でる。
それでも今の渾身の一撃による衝撃はかなりのものだ。
「ちっ――!」
勇者は育ちが悪そうな舌打ちをすると、いったん俺との距離をとった。
手が軽く痺れたのだろう。
手の平を振って痺れを逃がそうとしている。
これでとりあえず、しばらくは攻撃してこないか。
「よ、ベル。まだ生きているよな? 後は俺が引き受けた。ベルは本陣まで下がって、魔王さまとミスティを守ってくれ」
「あ、ああ。分かった。助かったぜハルト」
勇者に対して黒曜の精霊剣・プリズマノワールの切っ先を向けながら、満身創痍で下がっていくベルを守っていると、
「ハルト様!」
ミスティの期待のこもった弾んだ声と、
「ハルト、なぜ来たのじゃ!?」
ミスティとは対照的に、責めるような幼女魔王さまの声が聞こえてきた。
「なぜって言われると、世話になっている魔王さまに助太刀したかったからだな」
単純明快な理由だ。
「助太刀じゃと? 妾はそんなことは頼んではおらぬのじゃ!」
「頼まれちゃいないが、最初に会った時に俺は言っただろ? 元・勇者パーティの俺にとって、人を助けるのに理由なんて要らないんだって」
「じゃが妾はハルトにスローライフをしておれと、そう言うておいたはずじゃ!」
「それなんだけどさ? ゲーゲンパレスに来てからこっち、ずっと2人に面倒見てもらっていただろ? だから俺1人で過ごしていても、どうにも味気ないんだよなぁ」
「なっ、味気ないなどと、そんな勝手な理由で」
「いいや、これはとても大事なことなんだ。一人で過ごすスローライフは、俺の求めるものとは違っていた。おかげで俺は気が付いたんだ。魔王さまとミスティがいて初めて、俺のスローライフは最高の輝きを放つんだってことにさ」
「ハルト……」
「だから2人を連れ戻しに来た。俺がスローライフを満喫するためには、魔王さまとミスティが欠かせないから。つまり俺は、魔王さまから要請された通りに、スローライフを完璧に満喫するための行動をしたまでだ」
「な、な、な――」
俺の言葉に幼女魔王さまが絶句した。
「ハルト様――」
その隣ではミスティが頬を紅潮させ、目を潤ませながら俺を見つめている。
戦場に立つ幼女魔王さまの側近として気丈に振る舞ってはいたが、劣勢な戦況が続き、涙が出そうになるくらいに怖かったんだろうな、きっと。
間に合って本当によかった。
「そういうわけで、だ。言いたいことは後で全部聞くからさ。だからこの場は黙って俺に預けてくれ」
「…………」
言いたいことだけ言った俺は、魔王さまの返事を待たずに勇者へと向き直った。
「よっ、久しぶりだな。俺が追放されてからだから、4か月ぶりくらいか?」
軽く手を上げて挨拶すると、
「精霊騎士ハルト・カミカゼ。風の噂で南部魔国にいるとは聞いていたが、まさか本当だったとはね」
勇者は眉間にしわを寄せて、苦り切った表情で言葉を返す。
「いろいろ縁があって、今は魔王さまのところでやっかいになっているんだ。俺は今、魔王さまとミスティと一緒にスローライフをしているからさ。2人に死なれるとすごく困るんだ」
「いけしゃあしゃあと……! そうやって君はいつも僕の神経を逆なでしてくるんだ!」
「昔も今も、俺にはそんなつもりは全くないんだけど」
「どの口が言う! いや――そうだな。ふふっ、よく考えたらいい機会じゃないか。今この場所でなら、追放などといったまどろっこしいことをしなくとも、合法的に君を亡き者にできるんだから」
「怖いこと言うなよな。なぁ勇者、昔のよしみで兵を引いてくれるとありがたいんだけど」
「なにを寝ぼけたことを言っている。これだけの兵を動員して、手柄も立てずにおめおめと帰れるものか。それに――」
勇者がニヤリと獰猛な笑みを浮かべた。
「ハルト、君とは一度白黒はっきりつけたかったんだ。ボクは君のことが前から気に入らなかったからね」
黒曜の精霊剣・プリズマノワールによる、激烈なる不意の一撃を、
「精霊騎士ハルト・カミカゼ! 貴様どういうつもりだ!」
しかし勇者は、聖剣でもって強引にはじき返した。
「やるな!」
それを見て思わず俺の口からは称賛の言葉が漏れ出でる。
それでも今の渾身の一撃による衝撃はかなりのものだ。
「ちっ――!」
勇者は育ちが悪そうな舌打ちをすると、いったん俺との距離をとった。
手が軽く痺れたのだろう。
手の平を振って痺れを逃がそうとしている。
これでとりあえず、しばらくは攻撃してこないか。
「よ、ベル。まだ生きているよな? 後は俺が引き受けた。ベルは本陣まで下がって、魔王さまとミスティを守ってくれ」
「あ、ああ。分かった。助かったぜハルト」
勇者に対して黒曜の精霊剣・プリズマノワールの切っ先を向けながら、満身創痍で下がっていくベルを守っていると、
「ハルト様!」
ミスティの期待のこもった弾んだ声と、
「ハルト、なぜ来たのじゃ!?」
ミスティとは対照的に、責めるような幼女魔王さまの声が聞こえてきた。
「なぜって言われると、世話になっている魔王さまに助太刀したかったからだな」
単純明快な理由だ。
「助太刀じゃと? 妾はそんなことは頼んではおらぬのじゃ!」
「頼まれちゃいないが、最初に会った時に俺は言っただろ? 元・勇者パーティの俺にとって、人を助けるのに理由なんて要らないんだって」
「じゃが妾はハルトにスローライフをしておれと、そう言うておいたはずじゃ!」
「それなんだけどさ? ゲーゲンパレスに来てからこっち、ずっと2人に面倒見てもらっていただろ? だから俺1人で過ごしていても、どうにも味気ないんだよなぁ」
「なっ、味気ないなどと、そんな勝手な理由で」
「いいや、これはとても大事なことなんだ。一人で過ごすスローライフは、俺の求めるものとは違っていた。おかげで俺は気が付いたんだ。魔王さまとミスティがいて初めて、俺のスローライフは最高の輝きを放つんだってことにさ」
「ハルト……」
「だから2人を連れ戻しに来た。俺がスローライフを満喫するためには、魔王さまとミスティが欠かせないから。つまり俺は、魔王さまから要請された通りに、スローライフを完璧に満喫するための行動をしたまでだ」
「な、な、な――」
俺の言葉に幼女魔王さまが絶句した。
「ハルト様――」
その隣ではミスティが頬を紅潮させ、目を潤ませながら俺を見つめている。
戦場に立つ幼女魔王さまの側近として気丈に振る舞ってはいたが、劣勢な戦況が続き、涙が出そうになるくらいに怖かったんだろうな、きっと。
間に合って本当によかった。
「そういうわけで、だ。言いたいことは後で全部聞くからさ。だからこの場は黙って俺に預けてくれ」
「…………」
言いたいことだけ言った俺は、魔王さまの返事を待たずに勇者へと向き直った。
「よっ、久しぶりだな。俺が追放されてからだから、4か月ぶりくらいか?」
軽く手を上げて挨拶すると、
「精霊騎士ハルト・カミカゼ。風の噂で南部魔国にいるとは聞いていたが、まさか本当だったとはね」
勇者は眉間にしわを寄せて、苦り切った表情で言葉を返す。
「いろいろ縁があって、今は魔王さまのところでやっかいになっているんだ。俺は今、魔王さまとミスティと一緒にスローライフをしているからさ。2人に死なれるとすごく困るんだ」
「いけしゃあしゃあと……! そうやって君はいつも僕の神経を逆なでしてくるんだ!」
「昔も今も、俺にはそんなつもりは全くないんだけど」
「どの口が言う! いや――そうだな。ふふっ、よく考えたらいい機会じゃないか。今この場所でなら、追放などといったまどろっこしいことをしなくとも、合法的に君を亡き者にできるんだから」
「怖いこと言うなよな。なぁ勇者、昔のよしみで兵を引いてくれるとありがたいんだけど」
「なにを寝ぼけたことを言っている。これだけの兵を動員して、手柄も立てずにおめおめと帰れるものか。それに――」
勇者がニヤリと獰猛な笑みを浮かべた。
「ハルト、君とは一度白黒はっきりつけたかったんだ。ボクは君のことが前から気に入らなかったからね」