一瞬気まずい空気になったものの、リモート飲み会はつつがなく幕を閉じた。
『樹、こっち戻ってくる日決まったら連絡しろよ』
『そうそう。仕事帰りとか土日とか飲みに行こうよ』
『おまえら飲んでばっかりじゃねーか!』
そんなくだらない話をしながら一つ、また一つと減っていく皆んなの顔を眺める。そうしていると、ふいに樹から声をかけられた。
『美月、ちょっといい?』
「えっ……?」
『いや、ちょっと話したいことがあってさ』
「でも……」
樹の口ぶりからして、あまり人に聞かれたい話ではないのだろう。しかし、ここには少ないながらまだ人の姿がある。一体どうしたものか、と考えていると、樹は『このあと電話するわ』と告げて画面からいなくなってしまった。
「えっ、ちょっ……!」
なんて自分勝手な、と思う。けれど、私は樹がしようとしている話に心当たりがあった。だから彼を無碍にすることもできず、慌ててルームから退室する。そして、パソコンをシャットダウンして床に放り投げてあったスマホを手に取った。
「樹のばか」
スマホに向かってそう呟いた途端、狙ったように着信音が響き出す。
『もしもし、美月?』
電話口から響く樹の落ち着いた声を聞きながら、私は高校生だったあの日のことを思い出していた。
『樹、こっち戻ってくる日決まったら連絡しろよ』
『そうそう。仕事帰りとか土日とか飲みに行こうよ』
『おまえら飲んでばっかりじゃねーか!』
そんなくだらない話をしながら一つ、また一つと減っていく皆んなの顔を眺める。そうしていると、ふいに樹から声をかけられた。
『美月、ちょっといい?』
「えっ……?」
『いや、ちょっと話したいことがあってさ』
「でも……」
樹の口ぶりからして、あまり人に聞かれたい話ではないのだろう。しかし、ここには少ないながらまだ人の姿がある。一体どうしたものか、と考えていると、樹は『このあと電話するわ』と告げて画面からいなくなってしまった。
「えっ、ちょっ……!」
なんて自分勝手な、と思う。けれど、私は樹がしようとしている話に心当たりがあった。だから彼を無碍にすることもできず、慌ててルームから退室する。そして、パソコンをシャットダウンして床に放り投げてあったスマホを手に取った。
「樹のばか」
スマホに向かってそう呟いた途端、狙ったように着信音が響き出す。
『もしもし、美月?』
電話口から響く樹の落ち着いた声を聞きながら、私は高校生だったあの日のことを思い出していた。