兄は、あろうことかアンドレアと同じソファにエステルを置いた。

 エステルは素早く反応したが、兄はちょっと溜息を吐きたい顔をして先に口を挟む。

「エステル、これくらいは普通だ」
「で、でも……」
「俺も、過保護に育てたのは分かってる。けど、いいんだ。分かったな?」

 とにかく、隣同士で話し合うのだと兄は言い聞かせる。

「俺も、君が隣にいてくれた方が助かる」

 アンドレアが、不意にエステルの手をきゅっと優しく握ってきて、彼女は心臓がばっくんとはねた。

「そうでなければ、抱き上げて隣に置くと思う」
「だ、抱き……!?」
「本当だったら、あのあと一時でも離れたくない気持ちだった」

 彼は、いったいどうしてしまったのだろう。

 エステルは、自分の顔が真っ赤になっているのを自覚していた。

 兄の「はぁ。なんでこんなに初心に育ったのか」という独り言が聞こえてきた。思わず蹴りでもみまってしまおうかしらとらしくないことを考えたが、彼は早々にメイド達にバトンタッチし、出ていった。