『あ、ごめん。幼馴染のことなんだけど』

『そうなんだ。なんか凜ちゃんってもっと静かなイメージだったけど話してみると結構明るいんだね』


わたしは人見知りなこともあって、自分から何か行動するということが破滅的にできないので一人でひっそりと過ごしていることが多かった。

ただ、本来の自分の性格は明るい方ではあると思う。

本来の自分をさらけ出せるのが伊吹だけだったというわけだけれど。


『……変、だったかな?』


こんなわたしは嫌だろうか。

仲良くなれそうとちょっと期待してしまったのはわたしだけだったかなと不安になってドクドクと鼓動が脈を打つ。

そんなわたしの様子に気づいた彼女は、慌てて首が取れそうなくらいブンブンと左右に振って、


『変じゃない!仲良くなれそうだなって思っただけ!』


と、柔らかく微笑んでくれた。

同じことを思ってくれていたことにホッと胸を撫でおろした。


『あ、ありがとう!これからも話しかけていいかな……?』

『もちろん!わたしたちもう友達でしょ!』


そう言って、キラキラと眩しいくらいの笑顔を見せてくれたことに嬉しくなって思わず伊吹の方に視線を向けると、彼は“ほら、言っただろ”と言わんばかりに得意げに笑っていた。

その表情に少しムッとなるけど、今回は彼に感謝しなくてはいけない。

伊吹はすごいなあ。
こういうことをみんなにしていたんだもんね。

改めて、彼のすごさを目の当たりにして好きだという気持ちが増したけど、言えない想いの中に無理やり閉じ込めた。


『凜ちゃん、どうかした?』

『あ、いや、なんでもないよ』


何もないはずの場所を突然見つめ出したわたしを不思議に思ったのか彼女に声を掛けられてわたしは意識を彼女との会話に戻して誤魔化した。

伊吹のおかげでせっかく友達ができたのに、彼のわたしをみる視線、瞳に何故か目を背けたくなるほど悲しい影がよぎっていて、ぎゅうと胸が苦しくなるくらい締め付けられた。