『わかってるよ。でもこうしたら昔みたいに半分こしたみたいな気持ちになるでしょ?』


わたしと伊吹は昔からよくお菓子を半分こにして食べていた。

そうすれば、お互い二つのお菓子や味が楽しめるからという何とも子供らしい理由だったけれど、それが中学生になってからも癖づいていたのか当たり前のように半分こにしていて結局、中学の友達に驚かれてやめたんだっけ。


『ふふ、懐かしいなぁ。昔はこうやってよく食べてたもんな』


小さな笑いをこぼしながら、チョコレートを優しい眼差しで見つめている。


『わたしは二つ食べれるのも嬉しかったけど、それよりも伊吹と何でも半分こして同じものを食べて「美味しいね」って笑ってる時間がすごく好きだったんだよね』


小さな頃から当たり前に隣にいて、そんな君をいつの間にか好きになって、同じものを共有して、同じ時間を過ごして、そんな中で笑い合える日々がすごく好きでわたしにとっては特別だったんだ。


『……だからあんないつも幸せそうな顔して食べてたの』


目を伏せて、ふっと口角を斜めにゆっくり引き上げた彼のサラサラの前髪がゆらりと揺れる。

笑っているはずなのにどこか儚く、壊れてしまいそうなほど切なげなその表情からはどこかやるせなさが滲んでいた。

彼が今、何を考えているのかなんて幼馴染のわたしでもわからない。

好きな物や苦手な物、仕草や癖まではわかっても、考えていることなんてその人の頭の中までは覗くことができない限りわからないからもどかしい。


『わたし、伊吹と過ごす時間がしあ……』

『昔から凜は変わらないね』


わたしが言葉を遮って伊吹が言い、わたしの頭を優しくそっと撫でた。

先程とは違う、穏やかな笑顔にトクンと鼓動が甘く弾けた。

ぼっと顔が熱くなっていくのを隠すように下を向く。


『変わらないって成長してないって意味?』

『まさか。いい意味で昔から変わらず凜のままでいてくれるから安心するっていうか、俺が幽霊になっても何も変わらずにいてくれるのは嬉しいなって。俺、なんで先に死んだの!とか責められるかと思ってたし』


ふと、顔を上げるとシャーペンをくるくると回して遊んでいる伊吹の視線と絡み合う。

そりゃあ、確かになんで死んだのとは思ったよ。