やっと時間差で帰っていくふたりを見届け、ゆっくり彼女を解き放つと、腕の中からは真っ赤な顔が出てきた。

「赤……」

　思わず笑いが込み上げる。苦しそうに小刻みに息する彼女は鼻を大きく膨らませ、今にも噴火しそうな勢いだ。

「ひどい！　そりゃあ恥ずかしいでしょ。あんなずっと、もう！」

　怒っているのか照れているのか。

　よく分からない彼女がなんだか面白い。気づけば、熱を持った頬を両手で押さえながら急いで階段を降りていく姿に微笑んでいた。

　ひとりになった途端、スッと表情を消す。

　わずかに見えた星野の背中を横目に、胸の奥がモヤモヤとしていた。